狼男
神殿の内部は、灯りが少なく、暗かった。
立ち止まり、「おかしいな……」と漏らしたゼノが前方を見て「これは……」と呟く。
「どうする? 引き返す?」
ゼノが嘉一に聞いたので、嘉一は「え? なんで?」と返した。
嘉一が、ゼノの後ろで歩みを止める。
「攻略した奴は全員、新月の夜に帰って来てる。何一つ手にせずに。戦利品すら無いなんて変だと思わないか?」
「ゲームのダンジョンって宝物くらい有るよね……」
「何も無いんだと思ってた。そうではなく、奥まで誰も辿り着けていないのかもしれない」
「どうして、そう思うの」
今いる空間の奥を見ながら、ゼノは返事をした。
「その奥の部屋から気配がする。予想通りなら満月の夜の今日は分が悪い。狼男だ」
「え? マジで? 見てみたい」
嘉一が、扉の無い奥の部屋に近づく。
その直後、嘉一は、すごい勢いで戻って来た。
ゼノが嘉一に「この馬鹿……」と、呆れた視線を向ける。
奥の部屋から狼男が出て来て、ゼノと嘉一を見た。
狼男は「帰れ」とだけ、二人に言う。
「狼男って満月の時、強いんだっけ!?」
ゼノを振り返って嘉一が尋ねたので、「おそらく、新月の晩でも、誰もこいつに敵わなかったんだ。あー、はいはい。帰りますよ」とゼノは踵を返す。
「帰るの!? 俺の願い事は!?」
「一人で敵うなら止めないけど?」
「……やってみる」
嘉一が、授華呪で作った炎を右手に宿し、狼男に向かって行く。
狼男は「馬鹿だな。返り討ちにしてくれる」と、嘉一に応戦した。




