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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第二章

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独白と朝と

 その日の深夜、ゼノの家のリビングで、嘉一は眠れずにいた。

 客間を使うかとゼノに聞かれた嘉一は、結局、リビングのソファに横になり、布団を被っている。

 起き上がって、嘉一は、ゼノの自室の前まで歩いた。

 ドアの窓から見ると、ゼノはベッドで寝ている。

 思わずというように「おれの事、ゼノは嫌いなんだよな」と嘉一が小さく漏らした。


「家に泊めてくれたのは、ゆっくり寝たいからなんだろうな」


 嘉一が、ドアに背をつける。

 涙が流れて、今、自分は悲しいのだと嘉一は知った。


「他に、頼れる人なんか居ない……」


 振り子時計が、深夜二時を知らせる音を鳴らした事で、嘉一は涙を拭って、息を吐いた。


「……寝ないとな……」


 嘉一はソファに戻り、腰掛けて「殺すのも、殺されるのも嫌だ……」と呟く。




◇◇◇




 朝が来て、ソファで寝ていた嘉一は、頭を軽くゼノから叩かれ、「そろそろ起きな」と声を掛けられた。

 目を覚ますが、寝ぼけたまま、嘉一は「寝れた……?」とゼノに聞く。


「お前よりは寝れたんじゃない? 目くらましの魔法使うの面倒だから変装してくれる?」


 ゼノから、変装道具の入った袋を渡され、嘉一は「どっか行くの?」と、袋を抱えた。

 興味が無さそうな表情で「女の子が居る所」とゼノは返す。


「……そうなの?」

「そうだけど、その見た目じゃ嫌われるかもなぁ」


 段々、目が覚めてきた嘉一は、この体がユィンのものだと思い出したように、布団の上で、自身の手のひらを思わず見た。


「この外見、嫌う女なんか居るの」

 嘉一の問いに「中身も嫌われるかもね」とゼノは嘉一から離れた。

 ゼノの返答に困惑して、「どういう意味?」と嘉一は、身を起こして、ソファに座った。

 その質問には答えず、ゼノが台所の方へ行く。


「歯、みがくとか、顔洗うとかしてくれば?」


 じっとゼノを見ている嘉一に、ゼノは、そう言い、「なんか作っとくから」と続ける。

 嘉一は「なんかって?」と聞き、ゼノが「朝飯。食えるでしょ?」と、冷蔵庫のドアに手を触れた。


「それとも、お前が作る?」

「あ……。それでもいいよ」

「聞いただけだよ。冗談抜かすな」


 嘉一は困ったように「冗談じゃないよ」と口にする。

 ゼノは「いいって。俺が作る」と表情を固くした。


「……もしかして、おれが作ったものは食べたくない?」

「は? なんで、そう思う訳?」

「……ゼノは、おれの事、嫌いなんだろ? 嫌いな奴が作った食事なんて、食べたくないのかなって」

「まぁそれも有るかな。っていうか、お前、料理作れるの? 家じゃ、姉貴とか母親が作ってたろ」

「簡単なものなら作れるよ。グラタンは作った事、無いけど」

「……なんでグラタン?」


 眉根を寄せたゼノに、嘉一は「ユィンが見せてくれた記憶の中で、ゼノが食べたいって言ってたから」と布団を脇に除けた。


「……ユィンは、いつの記憶を、お前に見せたの?」

「いくつか有ったから……いつって言われても……」

「まぁどうでもいいけど。米、食えそう? パンの方がいい?」

「……どっちでもいいけど、パンの方がいいかな……。なんか、米、食べれなさそう……。手間掛けさせて、ごめんね。ありがとう」


 ゼノは、妙なものでも見るように、嘉一を見た。

 嘉一が「どうしたの?」と尋ね、ゼノが「本当ぬるいな」と言う。


「ありがとう、か。お前、礼言うような事、俺にされたっけ?」

「え……。食事、作ってくれるって言うから……」

「そうだな……礼くらい言うか。悪い。なんでもない」


 ゼノが冷蔵庫の方へ向き直って、その中身に目を向けたので、嘉一は、洗面台に向かう事にした。

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