味方じゃない
空き家の中で、嘉一は壁を背に立っている。
「ゼノが来てくれるまで、ここで、じっとしてよう……」
窓から外の様子を窺いながら、嘉一が、その場に崩れ落ちた。
「怖かった……」と呟いて、彼が地面に手をつく。
その腕は、わずかに震えている。
「異世界って、もっと楽しいもんじゃないの? こんな物騒な世界なら、元居た世界に帰りたい……」
涙が出そうになるのを実感しながら、嘉一は視線を部屋の中に向ける。
すると、「お前、ヤバかったみたいだな」という声が、嘉一の耳に聞こえた。
背後からのゼノの声の方を嘉一が振り返ると、ゼノが居る。
「ゼノ……どうして……」
「俺には、死に掛けた奴が分かるんだよ。だからユィンにも会えたんだけどな」
ゼノが来てくれた事に少しだけ安堵しながら、嘉一は疑問をぶつけた。
「おれとユィンを入れ替える魔法を掛けたのはゼノなんだろ? どうして、そんな事をしたの?」
「ユィンが、あんまり可哀想でね。入れ替えても問題なさそうな奴を探して、入れ替える事にしたの」
「もう一度、入れ替える事は出来ないの? ユィンは、どうすれば、こっちの世界に戻る気になるの?」
「一族が死んだのは自分のせいだって責めてたから、一族が全員生き返りでもすれば、戻って来る気になる事も有るかもねぇ」
「なんで、おれと入れ替える事にしたの」
「家族や友人、環境に恵まれてて、本人が馬鹿な奴を探したの。入れ替わったユィンが幸せになれそうで、ユィンと入れ替わった事で、どんな目に遭おうが、ざまぁみろと思える奴」
「――……」
ゼノの返答に何も言えなくなった嘉一に、「ちょっと苦しんでみる?」とゼノが意地の悪い笑い方をする。
建物の外に繋がるドアに向かって、ゼノは「そろそろ、いいんじゃない?」と声を掛けた。
ドアを蹴破るようにして、先ほど、海杜族の生き残りと名乗った三人が入って来たのを見て、嘉一は部屋の奥に走る。
「俺を味方だと思ったかもだけど違うんだよねぇ」
嘉一に軽蔑の眼差しを向けたまま、ゼノが嫌いなものに向けるような表情で笑った。
その表情にショックを受けながら、「ここに隠れてるって教えたの?」と嘉一は聞く。
「ちっとも寝れなくてムカついてるからね」
部屋の角に行ったゼノが「隅で見学させて貰うよ」と欠伸をする。
「お互い丸腰じゃ殺しづらいよねぇ。剣でいい?」
ゼノが、嘉一と、一番、体の大きい男、それぞれの前に、剣を呼び出す。
男が剣に手を伸ばしても、嘉一は、どうしていいか分からなかった。
「ユィンなら武器なんて要らなかったけどね。お前は要るでしょ?」
そのゼノの問いに、嘉一は、手元に落ちて来た剣の柄を握り、三人の中で一番体の大きな男を見る。
何が起きているのか分からず、嘉一は怖いと感じていた。




