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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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そして始まる言い訳大会


職員室前。


ついに来てしまった。


レンは目の前の扉を見つめる。


ゆっくり手を伸ばす。


ドアノブに触れる。


そして――


ピタッ。


止まった。


数秒の沈黙。


「…どしたんだよ?」

モズがレンの顔を覗き込む。


その瞬間


レンは静かに振り返る。


「モズが先入れ」


モズ。


「はぁ!?」

「なんでだよ!」


レン。


「なんとなく」


「絶対なんとなくじゃねぇだろ!」


モズは即座にレンを押し返す。


「ノン開けろ!」


ノン。


「えぇ〜〜〜」


「私が先頭とか恐れ多いよぉ〜」


レン。


「どういう言い訳だよそれ!」


モズ。


「ほら!開けろ!」


レン。


「開けろ!」


二人がかりでノンの手を掴む。


ずるずる。


ノン。


「やだよぉぉぉ!」


助けを求めるように振り返る。


「ネフィラちゃぁん〜」


ネフィラ。


「申し訳ありません」

「只今両手が塞がっておりますの」


いつの間にか分厚い本を抱えていた。


しかもかなり大きい。


レン。


「どこから出してきた」


モズ。


「今まで持ってたっけ?」


ノン。


「重そう〜」


ネフィラ。


「気付いていなかったんですの?」


全員。


「気付くわけねぇだろ!!」


職員室前は大騒ぎだった。



その頃。


職員室。


ボイド先生が顔を上げる。


「……何してるんでしょう?」


扉の向こう。


めちゃくちゃ騒がしい。


リゼリア教授は無言だった。


椅子から立つ。


そのまま入口へ向かう。


スタスタ。


スタスタ。


ガララッ。


扉が開いた。


「「「「あっ」」」」


固まる四人。


そこには何故か。


白いうさぎの前足をドアノブへ乗せ。


開けさせようとしているレンとモズの姿があった。


リゼリア教授。


無言。


冷たい視線。


降り注ぐ。


全員。


硬直。


メデューサか何かだろうか。


石化魔法でも使われたのだろうか。


そう思うほど動けない。


リゼリア教授の後ろから顔を覗かせたボイド先生。


「……ほんとに何してるんですか」


呆れ顔だった。


リゼリア教授が微笑む。


怖い。


全く目が笑っていない。


「お前達」


全員。


ビクッ。


「ちょっと来い」


「「「「はいただいま」」」」


とても良い返事だった。



案内されたのは小会議室。


リゼリア教授が鍵を開ける。


部屋の中は落ち着いた雰囲気だった。


艶のある木製の机。


深い赤茶色の革張りソファ。


壁際には本棚。


歴代学長の肖像画が静かに見守っている。


教師達が打ち合わせに使うのであろう。


少し格式のある空間だった。


リゼリア教授。


ボイド先生。


先に入室。


その後ろから。


そろ〜っと。


レン。


モズ。


ノン。


そして優雅にネフィラ。


最後に。


ぴょこん。


ウサ丸。


堂々としていた。


入口付近で固まる学生達を無視し。


部屋の奥へ。


窓際。


小さな丸テーブル。


暖かな陽射しが差し込んでいる。


ウサ丸はぴょんっと飛び乗った。


前足を身体の下へしまい込み。


香箱座り。


完全にくつろいでいる。


レン。


「……呑気なもんだな」


げんなりした声だった。



「おい」


リゼリア教授が呼ぶ。


「ふぁい」


レン。


反射だった。


「入って座れ」


ソファを指差す。


「はいよろこんで」


レン。


モズ。


ノン。


ぴゅんっ!


すごい勢いで着席。


シュタッ。


ネフィラだけが優雅に腰を下ろす。


モズ。


「……ネフィラだけ異空間に居ねぇ?」



全員が席に着いたところで。


ボイド先生が首を傾げた。


「あれ?」


「モズ君とノンさん」


「怪我どうしたの?」


「治癒早くない??」


確かに。


先程まで負傷者だったとは思えない。


モズ。


「ああ」


窓際を指差す。


「アイツが治してくれました」


全員の視線。


ウサ丸。


すやぁ。


気持ちよさそう。


何もしてませんが?


そんな顔で寝転がっていた。


ノン。


「いい子だよねぇ〜」


空気が少し和らぐ。


ボイド先生。


「あんな小さいのに治癒魔法……」


「しかも完璧……」


「やっぱり凄いな月兎族……」


若干引いていた。


そしてふと。


リゼリア教授を見る。


いつも冷たく凍った表情の彼女は


ウサ丸を見ていた。


目を細めている。


ほんの少しだけ優しく微笑んでいる。


沈黙。


全員。


(((完全にウサ丸の可愛さにやられてる)))


ハッ。


リゼリア教授が我に返る。


わざとらしく眼鏡を押し上げた。


「……さて」


「本題に入ろうか」


全員。


(((誤魔化した)))



「何故あの森へ行った」


来た。


レン。


心の中でガッツポーズ。


用意していた。


今こそ。


ノン考案作戦。


発動。


レンは説明する。


図書館で資料を見つけたこと。


興味を持ったこと。


様子を見に行ったこと。


襲われたこと。


戦ったこと。


ボイド先生。


「なるほどぉ〜」


普通に納得していた。


チョロい。


言い方は悪いが。


チョロい。


だがリゼリア教授は違った。


小さく頷く。


「ほう」


そして。


続ける。


「では」


「何故教師に報告しなかった?」


「「「「え」」」」


終わった。


誰も考えていなかった。


沈黙。


怪しまれる。


何か言わないと。


レンが口を開く。


「それは……」


俯く。


顔へ手を当てる。


指の隙間から教師陣を見る。


完全に厨二病である。


そして。


低い声。


「……己を試していました」


沈黙。


全員。


(((なんだそれは!!!!)))


もっとマシな嘘をついて欲しいものだ。


モズが震える。


だが…ここで否定したら怪しまれる。


乗るしかない。


どこかで見たことあるポーズ。


「ぼく、最強だか――」


レン。


「なんかそれ以上危なそう」


即座に口を塞ぐ。


モズ。


「むぐっ!?」


ネフィラ。


すっと立ち上がる。


「わたくし」


「失敗いたしませんの」


レン。


「うんまぁセーフ」


ノン。


両手を広げる。


謎ポーズ。


「怪盗ノンです」


レン。


「うんそれ夜の大学回った時のやつね」


「懐かしいね」


「でも大半の人に伝わらないね」


「言いたいだけだね」


怒涛のツッコミラッシュをキメて息を切らすレン。


疲れた。


だが自分が悪い。



沈黙。


教師陣の反応を待つ。


ボイド先生。


腕を組む。


真面目な顔。


「己を示そうとするのは良い心がけです」


納得してる。


しかも声少し低くして格好付けている。


レン達。


(あっ)


思い出した。


面接や魔力測定テスト前、

「己を示せ」とか言っていた。


…この先生。


割とそっち側だった。


助かった。


問題は。


リゼリア教授。


全員が固唾を呑む。


そして。


リゼリア教授。


深いため息。


「……自分達の力を過信しすぎだ」


全員。


「はい……」


俯く。


だが。


続きがあった。


「だが」


顔を上げる。


「その向上心は認めてやろう」


沈黙。


レン。


「えっ」


許された。


ほっとする。


だが。


「ただし」


全員。


ビクッ。


リゼリア教授。


にっこり。


「今後、無断での危険な野外活動は禁止」


「そして」


「ペナルティもしっかり受けること」


恐怖だった。



窓際。


暖かな陽射し。


ウサ丸はそんなことお構いなしに

大きな欠伸をひとつ。


ふぁぁ〜……


実に平和だった。

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