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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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白うさぎ

大学救護室。


白いカーテンで区切られた室内には、消毒液の匂いが漂っていた。


ブキミ森から戻った四人は、それぞれ治療を受けている。


レンとネフィラは幸い大きな怪我はなかった。


ノンはベッドに腰掛け、捻挫した足を冷やしている。


そして――


「いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


救護室に響き渡る悲鳴。


モズだった。


「やめてやめてやめて!?!?」


「そこマジで痛いって!!」


頭の傷へ消毒液を塗られながら全力で抵抗している。


医療班の先生は慣れた様子だった。


「動かない」


「いや無理だってぇぇぇ!!」


「動かない」


容赦なく押さえつけてくる。


「ぐあぁぁぁぁぁ!!」


その様子を見てレンは思った。


(元気そうだな)


そんなモズの腕の中には――


白うさぎ。


ちょこん。


まるで自分の定位置であるかのように丸くなっている。


そこへ。


救護室の扉が開いた。


リゼリア教授とボイド先生だった。


二人は室内を見回し、


まずモズの腕の中のうさぎを見た。


沈黙。


リゼリア教授。


ボイド先生。


同時に同じ顔になる。


あちゃー。


という顔だった。


リゼリア教授が額を押さえる。


「……なぜ連れてきた」


モズ。


「あー……」


少し気まずそうに頭をかく。


「怪我してたんで」


そう言いながら。


うさぎの左前足をちょんっと触る。


そこには。


締め付けられたような赤い跡。


レンが補足した。


「一回あのでかい蛇に食われたんです」


「さすがに放って帰れなくて」


ボイド先生。


「えっ」


うさぎを見る。


「この子あの大蛇に食べられてたんですか!?」


うさぎ。


きょとん。


ボイド先生はまじまじと観察する。


左足以外。


無傷。


毛並みも綺麗。


元気いっぱい。


「よく助かりましたね……」


本気で感心していた。


リゼリア教授も小さくため息を吐く。


「怪我をしているなら仕方ない」


「だが手当が終わったら森へ返せ」


モズ。


「えーーー」


「返せ」


「はい」


即終了だった。


その時。


「……待て」


救護室入口から声がした。


全員が振り向く。


そこには。


グレイガルド学長。


年季の入った杖をつきながら立っていた。


学長は四人を見渡す。


そして。


ふぉっふぉっと笑った。


「また何かやらかしたようじゃの」


レン。


モズ。


ノン。


目が泳ぐ。


ネフィラだけ首を傾げていた。


学長は続ける。


「ブキミ森で大蛇と決闘したそうじゃな」


レン達。


「……」


何も言えない。


学長は少しだけ笑う。


「元気があることは結構」


「若いうちは多少無茶もするものじゃ」


怒られない。


その事実に。


レン達の肩から力が抜ける。


ほっ。


だが。


その直後。


リゼリア教授が静かに言った。


「後ほど改めて事情聴取と反省会を行いますので」


レン。モズ。ノン。


「ひっ」


三人同時に震え上がる。


ネフィラだけ。


「?」


何がそんなに怖いのか分かっていない。


学長はそんな様子を見て苦笑した。


そして。


視線をうさぎへ向ける。


白いうさぎも不思議そうに学長を見上げていた。


「さて」


学長が呟く。


「本題じゃ」


モズ。


「本題?」


学長はうさぎを見つめた。


目を細める。


「そいつは」


「ただのうさぎではないのぅ」


静かな声だった。


全員が固まる。


「「「えっ?」」」


ネフィラまで同時に声を上げた。


学長はゆっくり近づく。


そして。


白うさぎの額へ手をかざした。


ふわり。


黄色い光が溢れる。


暖かな光だった。


月明かりのような。


優しい光。


うさぎは嫌がる様子もなく。


じっとしている。


やがて。


額に模様が浮かび上がった。


三日月。


黄金色の小さな三日月。


全員が目を見開く。


ノン。


「わぁ〜……」


ネフィラ。


「綺麗……」


レン。


「なんだそれ」


モズは腕の中のうさぎを見下ろした。


うさぎ本人は。


相変わらずきょとんとしている。


学長は小さく頷いた。


「やはりの」


その表情はどこか納得していた。


「額に月の紋」


「間違いない」


学長はゆっくり言う。


「……月兎族じゃな」


救護室が静まり返る。


月兎族。


その言葉に。


リゼリア教授の目が僅かに細まった。


ボイド先生も驚いている。


レン達はもちろん知らない。


だからこそ。


全員が学長の次の言葉を待っていた。


腕の中のうさぎだけが相変わらずぽけーっとしていた。

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