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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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ブキミ森の大蛇

休日。


天気は快晴。


四人は大学の正門前に集まっていた。


「ん〜遠足日和だねぇ〜」


ノンがグンッと手を空へ伸ばしながら穏やかに言う。


魔力測定の時とおなじ、

黄緑色のジャージに薄ピンクの短パンを履いている。


いつものフワフワとした淡い桃色の髪が、


後頭部で結われている。


発言はのほほんとしているが、気合いは入っている様だ。


「遠足ちゃうな」


呆れ顔のレン。


レンもまた、魔力測定テスト同様、


高校時代のジャージに、

お守り用手品グッズ入れのウエストポーチ。


本日の目的は一つ。


大蛇の革袋。


《魂結びの媒介術》に必要なアイテムだ。


「というわけで!」


モズがポケットから出した地図を広げ、

オレンジ色のジャージを腕まくりしながら言う。


「今回は大学敷地の外!」


レン。


「外出るの初めてだな」


ノン。


「探検だぁ〜」(ワクワク)


ネフィラ。


「革袋のためですわ」


淡い水色のボブ。ネモフィラの髪飾り。


そして。


大きな白いベレー帽。


白いブレザー。


淡い水色のチェック柄スカート。


肩には革の鞄。


胸には本。


ネフィラの姿だけ、完全にお嬢様だった。


しかも。


めちゃくちゃ可愛い。


だが問題はそこではない。


今日の目的地。


ブキミ森。


なのにどう見てもピクニックに来た人だった。


レン。


「……」


モズ。


「……」


ノン。


「かわいぃ〜!」


ネフィラは優雅に会釈した。


沈黙。


レン。


「森な?」


ネフィラ。


「はい」


レン。


「大蛇倒しに行くんだよな?」


ネフィラ。


「そうですわ」


レン。


「その格好で?」


ネフィラ。


きょとん。


「何か問題が?」


レン。


「全部だよ」


即答だった。


モズも頷く。


「俺も聞きたい」


「なんでその服なんだ?」


ネフィラは不思議そうだった。


「動きやすいように選びましたの」


レン。


「嘘つけ」


ネフィラは帽子のつばを整える。


「淑女ですもの」


レン。


「そこは譲らねぇんだな」


モズ。


「森に淑女関係ある?」


ネフィラ。


「ありますわ」


即答。


レン。


「どこに」


ネフィラ。


「心構えに」


モズ。


「強ぇ」


そんなこんなで…。


四人は門を抜ける。


大学から少し離れた場所。


そこにあるのが――


ブキミ森。


名前からして嫌だった。


森の入口に立ったレンは顔をしかめる。


「ブキミ森って」


「もう少しマシな名前なかったのかよ」


モズ。


「知らん」


ノン。


「確かに不気味〜」


ネフィラも頷く。


森の中は薄暗い。


木々は異様にねじ曲がり。


地面には苔。


場所によってはヌメヌメしている。


普通に気持ち悪い。


レンは周囲を見回した。


「で」


「作戦は?」


モズが答える。


「簡単」


「俺とノンが戦う」


レン。


「うん」


「お前とネフィラは見学」


「うん?」


「うん?」


レンとネフィラが同時に声を上げた。


モズは真面目な顔だった。


「だってノンが魔力流しながら戦うの無理だろ」


ノン。


「無理ぃ〜」


レン。


「まあそうだけど」


ネフィラ。


「私も前衛向きではありませんし」


「お前もともと戦う気なかっただろ」


レンがネフィラの服装を見ながらため息を着く。


結論。


戦闘担当。


モズ・ノン。


応援担当。


レン・ネフィラ。


なんとも言えない。



森の奥へ進む。


ぐちょ。


ぐちょ。


地面が嫌だった。


「うわ」


レン。


「なんだこれ」


モズ。


「沼地だな」


ノン。


「滑りそう〜」


その瞬間。


ズルッ。ーーーー


「あっ」


ノンの足が滑った。


体が傾く。


レン。


「危なっ!?」


反射だった。


咄嗟に手を伸ばす。


ノンの腕を掴もうとする。


その光景を。


ネフィラが見た。


目が見開く。


(きゃあああああ!!)


(王道ロマンス展開ですわぁぁぁぁ!?)


(転びそうになる女の子!)


(それを助ける男の子!!)


(青春ですわぁぁぁぁ!!!)


脳内大盛り上がり。


しかし。


次の瞬間。


ノン。


ふわっ。


浮いた。


「おっとぉ〜」


空中へ。


魔法で飛んだ。


レン。


「え?」


掴もうとしていた腕が消えた。


勢い余る。


前のめり。


「うわぁっ!?」


転ぶ。


しかし。


咄嗟に何かを掴んだ。


モズの足だった。


モズ。


「は?」


ズルッ。


「うおっ!?」


共倒れ。


ドシャァッ!!


二人まとめて地面へ。


レン。


「痛ぇ!!」


モズ。


「なんで俺ぇ!?」


ノン。


「あ〜。なんかごめぇ〜ん!」


空から謝罪する。


ネフィラ完全停止。


(予想外の展開ですわぁぁぁぁ!?)


(何故そうなりますの!?)


(王道どこ行きましたの!?)


脳内脚本家が混乱していた。



その時だった。


カサッ。


森の奥。


茂みが揺れる。


四人の動きが止まる。


モズの顔つきが変わった。


ノンも同じ。


戦闘モード。


「下がれ」


モズが短く言う。


空から降りてきたノンがモズの隣に出る。


レンとネフィラは後ろへ下がった。


カサカサ。


音が近付く。


森は静かだった。


風もない。


聞こえるのは。


その音だけ。


レンが息を呑む。


ネフィラも本を抱き締める。


そして。


茂みから姿を現した。


ぴょこん。


白い耳。


小さな体。


丸い目。


「……」


「……」


「……」


兎だった。


可愛い。


めちゃくちゃ可愛い。


沈黙。


モズ。


「なんだよ」


ノン。


「びっくりしたぁ〜」


レン。


「普通の兎じゃねぇか」


ネフィラ。


「脅かさないでくださいまし……」


四人同時に胸を撫で下ろす。


ほっとした。


その瞬間だった。


兎の後ろ。


茂みの奥。


しゅるるるる……


何かが動く。


長い。


細い。


鱗。


レン。


「ん?」


モズ。


「……」


ノン。


「……」


ネフィラ。


「……」


全員の表情が固まる。


しゅるるるる……


出てきたのは。


巨大な蛇の尻尾だった。


兎は気付いていない。


一瞬。


尻尾が動く。


バシッ!!


兎の足を絡め取った。


「ぴっ!?」


兎が鳴く。


逃げようとする。


だが遅い。


次の瞬間。


森が揺れた。


ズズズズズ……


巨大な頭部。


黄色い瞳。


大木ほどの太さを持つ胴体。


大蛇。


現れる。


レン。


「でっか!?」


ネフィラ。


「ひぇっ」


兎は必死にもがく。


だが。


大蛇は構わない。


大きく口を開く。


そして。


ぱくっ。


兎が消えた。


ごくり。


飲み込まれる。


沈黙。


レン。


「ぐろい!!!!!」


思わず叫ぶ。


モズ。


「今度こそ下がれ!!」


叫びながら前へ出る。


ノンも杖を構えた。


大蛇の黄色い瞳が。


四人を見つめる。


完全に。


見つかった。


戦闘開始まで。


あと少しだった。

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