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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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魂結びの媒介術

「離れていても魔力を渡せる方法ですわ」


その一言から数十分後。


四人は場所を移していた。


向かった先は大学図書館。


吹き抜けになった大きなホール。


柔らかな陽の光が差し込み、学生達が静かに本を読んでいる。


そのホールを抜け。


放射状に広がる本棚の間を進む。


受付からずっと奥。


さらに奥。


ようやく辿り着く。


大きな窓のある小さなスペース。


アンティーク調の白いソファ。


小さなテーブル。


周囲には観葉植物。


人通りも少ない。


ネフィラお気に入りの場所だった。


「ここですわ」


ネフィラはそう言うと席に腰掛ける。


そして。


どこから持ってきたのか。


一冊の古びた本をテーブルへ置いた。


ドサッ。


かなり古い。


革表紙は擦り切れている。


ページの端は茶色く変色。


所々破られた跡。


黒く塗り潰されたページも見える。


レンが眉をひそめた。


「変わった本だな」


ネフィラは頷く。


「私も最初はそう思いながら手に取りましたの」


そう言いながら。


ペラペラペラ。


凄まじい速さでページをめくる。


レン。


モズ。


ノン。


全員目で追えない。


そして。


ピタッ。


目的のページで止まった。


まるでしおりでも挟んでいたかのような正確さ。


「すげぇ……」


レンが思わず呟く。


モズも感心する。


「どうやったんだ今」


ネフィラは得意げだった。


「慣れですわ」


そして白く細い指をある文章へ向ける。


「ここですわ」


三人が覗き込む。


そこに書かれていた文字。


《魂結びの媒介術》


レン。


「おお」


モズ。


「なんかかっけぇ」


ノン。


「ほんとだぁ〜」


ネフィラは頷く。


「古い時代に使われていた魔法補助技術ですわ」


そして続きを読む。


『互いに信頼する者同士、


身体の一部、


または大切に思う品を一つ選び、


大蛇の革袋へ納めよ。』


『魔力を送る時、または受け取る時、


相手を思い浮かべながら革袋へ触れれば、


その袋は一時的な魔力核の役割を果たす。』


「なるほど」


レンは腕を組んだ。


「身体の一部……」


ノンも考える。


「ん〜」


首を傾げる。


「指?」


しーん。


レン・モズ・ネフィラ。


「え?」


ノン。


「?」


モズが真顔で言った。


「怖っ」


レンも頷く。


「その見た目で言ってるとは思えない回答なんだよな」


「そうかなぁ〜?」


ノンは不思議そうだった。


レンは再び本を見る。


「大切な物か……」


少し考える。


「手品グッズとかあるけど」


「まだ何があるか分かんねぇし」


「手元に置いておきたいんだよな」


ネフィラ。


「なるほど」


少し考える。


そして。


立ち上がった。


レンの方へ歩いてくる。


「?」


レンが首を傾げる。


ネフィラは少し顔を赤くした。


視線を逸らす。


そして小さく呟く。


「少し……失礼致しますわ」


手が伸びる。


レンの頭へ。


髪を一束掴む。


レン。


嫌な予感。


「おい」


ネフィラ。


にこっ。


ブチィィィィッ!!


「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


図書館に響く悲鳴。


レンが頭を押さえて飛び上がった。


ネフィラの手には。


十本ほどの髪の毛。


「なるほど」とモズ。


ネフィラは満足そうだった。


「これなら身体の一部ですわ」


「品のあるお嬢様とは思えない力だったぞ!?」


レンが八重歯をむき出しにしながら

半泣きで叫ぶ。


ネフィラ。


「失礼致しました」


全然反省していない顔だった。


むしろちょっと楽しくなってる。


「絶対反省してねぇだろ」


レンがジト目になる。


モズが笑いながら聞く。


「で」


「それどこに入れるんだ?」


ネフィラ。


「あ」


ノン。


「あれぇ?」


モズは本を指差した。


「大蛇の革袋って書いてあったよな」


「うん」


「今あるか?」


「……」


「……」


「……」


「……」


全員沈黙。


ない。


そもそも見たこともない。


ネフィラはゆっくり立ち上がった。


そして。


今抜いたレンの髪の毛を迷いなく……


ぱっぱっ。


と払った。


レン。


「おおおおおい俺の髪の毛がぁああ!?」


「裸で持ってると無くしそうなので」


ネフィラは微笑む。


「革袋を確保してから試しましょう」


「捨てた!?」


「捨てましたわ」


「即答!?」


ネフィラは優雅に微笑む。


「また抜けばよろしいでしょう?」


レン。


「え?」


ネフィラ。


「何本でも」


レン。


「え?」


ネフィラ。


「私が」


レン。


「え?」


ネフィラ。


にこっ。


レン。


「……」


「Sなの!?」


「Sっ子だったの!?」


モズ大爆笑。


ノンも吹き出す。


「ふふふっ」


その時。


少し離れた受付の方から声が飛んできた。


「騒ぐなー!」


図書館職員だった。


四人。


ビクッ。


レンが慌てて頭を下げる。


「すんません」


職員。


「静かに」


「はい……」


職員が去っていく。


静寂が戻る。


レンは不服そうに頭をさすった。


まだ少し痛い。


ネフィラはそんなレンを見て。


ふふっと小さく笑った。


「では」


本を閉じる。


パタン。


「次の目標は決まりましたわね」


モズ。


「大蛇の革袋探し」


ノン。


「探検だぁ〜」


レン。


「その前に俺の髪返せ」


ネフィラ。


「もうありませんわ」


レン。


「くそぉぉぉぉぉ」


図書館なので。


今度は小声で叫んだ。


その姿を見て。


ネフィラはまた少しだけ笑った。

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