その理由が気になりますの
放課後。
学内のカフェスペース。
窓から柔らかな夕陽が差し込み、学生達が思い思いに談笑している。
レン、モズ、ノン、ネフィラの四人もいつものようにテーブルを囲んでいた。
ネフィラは紅茶のカップを持ちながら、ちらちらと三人を見る。
特に。
レンとノン。
ちらっ。
ちらっ。
ちらっ。
気になる。
非常に気になる。
あの日。
練習場で見た光景。
レンにぴったりくっつくノン。
しかも本人達は全く気にしていない。
ネフィラの脳内会議はずっと続いていた。
そして。
遂に我慢できなくなった。
ガタンッ!!
勢いよく立ち上がる。
三人が驚いて顔を上げた。
「どうした?」
レンが聞く。
ネフィラは顔を真っ赤にしながら両手で顔を隠した。
「き、聞きたいことがありますわ!!」
モズ。
「お、おう」
ノン。
「なぁに〜?」
ネフィラ。
深呼吸。
そして。
覚悟を決めた。
「す、すすすす好きだからって!!」
三人。
「?」
「昼間からそんなにくっついていてはハレンチではありませんことぉおおお!?!」
しーん。
数秒の沈黙。
そして。
レン。
「ブフッ!?」
モズ。
「ぶはっ!!」
盛大に吹き出した。
ネフィラ。
「な、何がおかしいんですの!?」
レン。
「いや待て待て待て」
モズ。
「そう見えてたのか!?」
二人とも腹を抱えている。
一方ノンだけ。
ぽわぁ〜。
頭から植物でも生えていそうな顔。首を傾げる。
「はれんち……?」
意味を理解していなかった。
ネフィラは真っ赤なまま叫ぶ。
「だ、だって!」
「練習中もずっとくっついてましたでしょう!?」
「離れませんでしたでしょう!?」
レンとモズは顔を見合わせる。
そして。
「あー……」
何とも言えない顔になった。
ノンはきょとんとしている。
「魔力渡してるだけだよぉ?」
ネフィラ。
「……へ?」
レンは周囲をちらりと見た。
カフェには学生が多い。
話すなら慎重にしなければならない。
「ちょっと声落とせ」
モズも小さく頷く。
ネフィラは首を傾げた。
「?」
レンは小さく息を吐く。
「実はさ」
声を潜める。
モズも身を乗り出した。
ノンも同じように近付く。
ネフィラもつられてテーブルへ身を寄せた。
そして。
レンが言う。
「俺」
「人間なんだ」
ネフィラ。
「……」
沈黙。
数秒。
そして。
「なーんだ」
あっさり言った。
レン。
「え?」
「そんなことでしたの」
優雅に紅茶を飲む。
レン達が固まる。
ネフィラは続ける。
「てっきりお付き合いしているのかと」
レン
「そっちの方が重大なの?」
ネフィラはカップを置く。
そして。
動きが止まった。
「……」
「……」
「……ん?」
ゆっくり顔を上げる。
レンを見る。
もう一度見る。
「にんげん?」
レン。
「うん」
ネフィラ。
「……」
「にんげん???」(2回目)
レン。
「うん」
ネフィラ。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
思わず立ち上がる。
周囲の学生達が一斉にこちらを見る。
レン。
「うわっ!」
モズ。
「でかいでかい!」
ノン。
「あわわ」
ネフィラ。
「あっ」
ようやく気付く。
周囲の視線。
慌てて座り直す。
咳払い。
コホン。
コホン。
そして。
小声。
「……にんげん?」
レン。
「今更小さく言うな」
モズが吹き出した。
ネフィラは顔を真っ赤にしながらさらに身を乗り出す。
「ほ、本当に?」
「人間ですの?」
「うん」
「でも魔法使ってましたわよね?」
「それなんだよ」
レンは小声で説明を始めた。
魔力が無く魔法を使えないこと。
ノンから魔力を借りていること。
だから練習の時はくっついていること。
ネフィラは真剣な顔で聞いていた。
やがて説明が終わる。
数秒。
考える。
そして。
ネフィラはゆっくり頷いた。
「あーーー」
左手を出す。
右手の拳をぽんっ。
綺麗な納得ポーズ。
「あーーーそういうことでしたのね」
レン。
「理解早いな」
モズ。
「さすが本の虫」
ノンはおおぉ〜と拍手している。
ネフィラは少し得意げに胸を張った。
「なるほど」
「それなら全て納得ですわ」
そしてふと思い出したように言う。
「それなら」
ネフィラは微笑んだ。
お人形さんのように整った顔を少しあげ、
誇らしげにふんっと鼻を鳴らす。
「離れた場所からでも魔力を渡せる方法を知っていますわよ」
しーん。
三人。
「…………は?」
ネフィラ。
「本で読みましたの」
レン。
「え?」
モズ。
「え?」
ノン。
「えぇ?」
ネフィラは紅茶を一口飲む。
そして優雅に言った。
「まあ」
「少々条件はありますけれど」
レンが机に身を乗り出した。
「ちょっと待て」
モズも立ち上がりかける。
「今なんつった?」
ネフィラはふふんと胸を張る。
「離れていても魔力を渡せる方法ですわ」
三人。
「なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
カフェ中に響き渡る。
周囲の学生達がまた一斉に振り向いた。
ネフィラ。
「だから声が大きいですわ!!」
レン。
「お前もさっきやっただろ!」
モズ。
「これは大声出るだろ!」
ノン。
「すごぉい〜!」
ネフィラは額に手を当てた。
この人達。
本当に騒がしい。
でも。
少しだけ楽しそうだった。
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