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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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くっつき虫の真相…?

放課後。


大学練習場。


ずらりと並ぶ的。


その前で、レンは腕を伸ばしたまま固まっていた。


モズは腕を組みながら真剣な顔をしている。


「違う」


「何がだよ」


「全部」


「全部!?」


モズはレンの横に立つ。


そして。


「腕は90度」


レンの腕を少し上げる。


「手は真っ直ぐ的」


ぐいっと向きを調整。


「肩の力抜け」


ぽんぽんと肩を叩く。


「体は時計で言うと10時方向」


「ん?」


「足は肩幅より少し広め」


「おう」


「膝は固めるな」


「おう」


「顎引いて」


「おう」


「目線は的の中心」


「おう」


「呼吸は整えろ」


「おう」


「左肩は下げろ」


「おう」


「腰は少しだけ捻れ」


「おう」


レンは数秒黙った。


「……」


モズは満足そうに頷く。


「よし」


レンは真顔で言った。


「細かすぎて逆にわからん」


「なんでだよ!?」


モズが叫ぶ。


「めちゃくちゃ分かりやすいだろ!」


「時計10時の方向で既に迷子だわ」


「そこから!?」


ノンはレンの背中にぴとっとくっつきながら笑う。


「モズくん先生みたぁい」


モズは少し得意げだった。


「だろ?」


「狙う系なら任せろって」


レンは渋い顔で構え直す。


「腕90度……」


「手は的……」


「体は10時……」


「足は……」


「お、いいぞ」


「待て」


レンが振り返る。


「俺今何時向いてる?」


モズは即答した。


「8時半」


「時計やめろ!!」


ノンが吹き出した。


「ふふっ」


そのままレンの背中にぴったり張り付く。


「ノン」


「ん〜?」


「近い」


「魔力渡してるもん」


「それは分かる」


「じゃあいいじゃん〜」


良くなかった。


暑い。普通に暑い。


ノンの手から淡い魔力が流れ込む。


レンの瞳が桃色へ変わる。


「よし」


レンは的を見据える。


「いくぞ」


「おう!」


「頑張れぇ〜」


バシュッ!!


光線発射。


一直線。


レンは思わず声を上げた。


「おっ!?」


珍しく真っ直ぐ飛んだ。


光線はそのまま的へ向かい、


ドン!!


中心から少し外れた場所へ命中する。


「当たったぁ〜!」


ノンが飛び跳ねた。


レンも目を見開く。


「当たった!」


モズはドヤ顔だった。


「誰の指導だと思ってる」


「調子乗んな」


「褒めろよ!」


「調子乗るから嫌だ」


「ひでぇ!」


そんな三人の様子を、少し離れた場所から見つめる影があった。


ネフィラだった。


「あら?」


本を抱えながら練習場を歩いていた途中、見慣れた三人を発見したのだ。


少し嬉しくなり、声をかけようと駆け寄る。


そしてピタッととまる。


気付く。


モズ。


真剣な顔。


レンの腕を持っている。


「違う違う!」


「手首が少し右!」


「こうか?」


「違う!」


「じゃあどうだよ!」


「だから右!」


「右ってどっちだよ!」


「お前の右だよ!!」


真剣だった。


そして。


レン。


真剣な表情。


的を見据えている。


さらに。


その背中。


ぴったり張り付いているノン。


離れない。


とにかく離れない。


ネフィラは立ち止まった。


(練習中にも関わらず……)


ぴとっ。


(全く離れませんわね……)


ぴとっ。


(そんなにくっつく必要ありますの……?)


ネフィラの脳内が回転し始める。


そして閃いた。


(はっ!!)


目を見開く。


(ノンさん……)


(もしかして……)


(レンさんのことがお好きなんですの!?)


脳内ネフィラ。


ドーーーン!!!


(だからモズさんに嫉妬を!?)


(レンさんを奪われたくないんですの!?)


(そういうことでしたのねぇぇぇぇぇ!?)


顔が一気に赤くなる。


(恋愛小説でよく見る青春ですわぁぁぁぁ!!!)


その時だった。


「あ、ネフィラちゃぁん!」


ノンが最初に気付いた。


笑顔で手を振る。


当然。


レンから手が離れる。


レン。


「よし!」


魔法発動。


しない。


シーン。


「……あれ?」


もう一回。


「えい」


出ない。


「あ」


ノン。


「あ、ごめんごめん〜」


レンが振り返る。


「おい」


ノン。


「えへ」


「離れんなよ!!」


ネフィラ。


「!!!!!!」


脳内爆発。


(きゃああああああああ!!!)


(そっちでしたの!?!?!?)


(レンさんの独占欲でしたの!?)


(ノンさんに離れて欲しくないんですの!?)


(積極的ですわぁぁぁぁ!!!)


ノン。


「ごめんってばぁ〜」


再び。


ぴとっ。


レンの背中に手を当てる。


魔力供給再開。


ネフィラは両手で口を押さえた。


(戻りましたわぁぁぁぁ!!!)


(離れた瞬間怒られたから戻りましたわぁぁぁ!!!)


(情報量が多いですわぁぁぁ!!!)


完全に一人で大混乱だった。


レンが声を掛ける。


「……何してんだ?」


モズも首を傾げる。


「顔赤くね?」


ネフィラはビクッと肩を震わせた。


「なっ!?」


「何でもありませんわ!!」


レン。


「絶対なんか考えてた」


モズ。


「顔に書いてある」


ネフィラ。


「書いてませんわ!!!」


ノンだけが平和だった。


「ネフィラちゃんもやるぅ?」


ネフィラ。


「やりませんわ!!!」


即答だった。


レンは思った。


(まともな奴だと思ったのに……)


ネフィラ。


「失礼ですわ!!!」


「また心読まれた!?」


その日。


一番疲れたのは。


間違いなくネフィラだった。

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