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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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図書館裏。


旧校舎。


ネフィラの情報通り。


四人はそこへやって来ていた。


「確かに雰囲気あるな」


レンが辺りを見回す。


古い石造りの建物。


蔦が絡まった壁。


誰もいない。


どこにでも繋がる公衆電話がいてもおかしくない。


……気がする。


モズは辺りを見回した。


「いたか?」


ノン。


「いないねぇ〜」


レンも探す。


だが。


見当たらない。


十分。


二十分。


三十分。


結果。


いなかった。


沈黙。


ネフィラが視線を落とす。


「……申し訳ありませんわ」


レン達が振り向く。


ネフィラは本を胸元で抱き締めていた。


「目撃情報があったので」


「ここだと思ったのですが……」


「私の勘違いでしたわね」


少しだけ肩が落ちている。


珍しくしょんぼりしていた。


レンは少し目を丸くした。


そして。


笑う。


「なんで謝るんだよ」


ネフィラ。


「え?」


「目撃情報あったんだろ?」


「ですが……」


「だったら来る価値あったじゃん」


レンは肩をすくめる。


「少なくとも池よりは可能性高かった」


モズ「おい」


「花壇よりも高い」


ノン。


「うんうん〜」


「傷つくんだが???」


モズ、珍しく頬を膨らませて不満そう。


そんな様子を見て。


ネフィラ。


「……」


少しだけ沈黙。


そして。


小さく吹き出した。


「それは比較対象が酷すぎますわ」


モズ。


「失礼だな!?」


レン。


「池に潜ろうとした奴が言うな」


モズ。


「ロマンだろ!」


ネフィラはまた少し笑う。


さっきより表情が柔らかい。


レンはそれを見て頷いた。


「ほら」


「元気出せよ」


「まだ探すんだろ?」


ネフィラは少しだけ目を見開く。


そして。


ふっと微笑んだ。


「……ええ」


「もちろんですわ」




それから数日。


講義終わり。


夕暮れ時。


いつもの4人。


楽しく会話するモズ、ノン、ネフィラ。


しかしレンは違った。


3人の少し後ろを1人で歩く。


ひょんなことから始まった謎の電話探索。


みんな自分のために探してくれている。


何日も。


このまま3人に迷惑をかけていてもいいのか?

不安になっていた。


そろそろ、探索をやめないか?

そう言おうと思っていた。


その時。


レン。ふと足を止める。


「……ん?」


視界の先。


校舎裏。


大きな木の下。


夕陽に照らされながら。


古びた公衆電話が立っていた。


錆びている。


蔦が絡まっている。


本当に使えるのか怪しい。


「……」


レンは目を細める。


「いた」


思わず呟いた。


本当にいた。


その声に反応したモズ。ノン。ネフィラ。


「マジであった!」


「本当にありましたわ……」


「すごぉい」


三人も驚いている。


レンは電話を見上げた。


少しだけ手が震える。


モズが笑う。


「行ってこい」


ノンも頷く。


「大丈夫だよぉ」


ネフィラも微笑んだ。


「応援しておりますわ」


レンは小さく頷く。


そして。


受話器を取った。



トゥルルルル。


トゥルルルル。


本当に繋がるのか。


そんな不安を抱いた瞬間。


ガチャ。


『はい』


聞き慣れた声。


レンの肩から力が抜けた。


「……母さん」


『レン!?』


『レンなの!?』


声が一気に明るくなる。


『元気なの!?』


『ちゃんと食べてる!?』


『怪我してない!?』


「一気に聞くなよ」


思わず笑う。


久しぶりだった。


こんな風に笑うのは。



近況を話す。


友達ができたこと。


大学生活に慣れたこと。


毎日騒がしいこと。


『へぇ』


『レンに友達ねぇ』


「失礼だな」


『だって昔から人付き合い苦手だったじゃない』


「うるさい」


遠くで。


モズ達が見守っている。



しばらく話した後。


母親の声が少し静かになった。


『レン』


「ん?」


『ごめんね』


レンは目を瞬かせる。


『浪人だけはダメって』


『あの時言ったこと』


『ずっと後悔してた』


『あんたの将来だったのに』


『私が勝手に決めちゃった気がして』


『ごめん』


夕陽が揺れる。


レンは少し空を見上げた。


そして笑う。


「気にしてないよ」


『でも……』


「本当に」


少しだけ振り返る。


モズ。


ノン。


ネフィラ。


待ってくれている。


「結果的に」


「ここ来れたし」


「友達もできたし」


「今」


少し照れくさい。


でも本音だった。


「結構楽しい」


電話の向こうが静かになる。


そして。


『そっか』


『良かった』


少しだけ涙声だった。



「母さん」


『ん?』


「ありがとう」


『……』


「送り出してくれて」


「今ならそう思う」


『……』


しばらく返事がない。


そして。


『あんた本当に大人になったねぇ』


「なってねぇよ」


『なったよ』


少しだけ笑い合う。



「俺のことは心配しなくていいから」


レンは言う。


「ちゃんとやってる」


「ちゃんと楽しんでる」


『うん』


『レンも元気で頑張るんだよ』


「母さんもな」


『うん』


「じゃあまた」


『またね』


ガチャ。


電話が切れた。



レンは受話器を置く。


胸の奥が少し温かかった。


振り返る。


そこには。


何も聞かず待っていてくれた三人。


モズがニヒッと笑う。


「話せたか?」


レンも笑った。


「ああ」


ノンがふわっと微笑む。


「よかったねぇ」


ネフィラも頷く。


「安心いたしましたわ」


夕陽に照らされた三人を見て。


レンは思う。


ここに来て良かった。


この大学に来て良かった。


そして。


この三人に出会えて良かった。


「ありがとう。」


レンの心の底から出た言葉だった。


三人は目を細めてレンを見つめていた。



四人は並んで歩き出す。


寮へ向かう帰り道。


いつもより少しだけ。


レンの足取りは軽かった。


後日、レンが母親と言葉を交わした木の下。

なんとなくレンはまた、1人で向かってみる。


数日前に年季の入った公衆電話があったとは思えないほど跡形もなく綺麗になくなっていた。


ふっと笑うレン。


「…ほんとに動くんだな」


また話せる日まで。元気で。


レンは心の中で呟き、澄んだ空を見上げた。

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