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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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閑話 もしも話ができるなら(前編)

昼休み。


いつものように学食へ集まった四人。


ノンは相変わらず大量の料理を前に幸せそうな顔をしている。


モズはそんな様子を見ながら、どこからか仕入れてきた噂話を始めた。


「そういや知ってるか?」


「何を?」


レンが聞き返す。


モズはニヒッと笑った。


「どこにでも繋がる公衆電話」


レン。


「なんだそれ」


ネフィラが反応する。


「ああ」


「校内を移動するという噂の電話ですわね」


「有名だよぉ〜」


ノンも頷く。


レンだけ置いてけぼりだった。


「いやいや」


「意味分かんねぇだろ」


モズは肩をすくめる。


「俺もそう思う」


「でもさ」


少しだけ真面目な顔になる。


「もし本当にあったら」


「話してみたい相手いる?」


レンは一瞬だけ固まった。


脳裏に浮かぶ。


狭いアパート。


朝早くから働いていた母親。


受験に落ちた日。


無理に笑っていた顔。


大学に来てから。


まともに連絡を取れていない。


スマホは圏外。


元気だろうか。


心配していないだろうか。


「……いる」


自然と口から出ていた。


少しだけ静かな声。


モズも。


ノンも。


ネフィラも。


気付く。


冗談じゃない。


本気の声だ。


モズはニッと笑った。


「じゃあ探そうぜ」


レン。


「は?」


ノン。


「探すぅ〜!」


ネフィラ。


「協力いたしますわ」


話が早い。


「いや待て」


「本当にあるかも分からねぇんだぞ?」


モズ。


「だから探すんだろ?」


ノン。


「見つかるかもよぉ〜」


ネフィラ。


「目撃情報もありますし」


電話探索について作戦会議を始める三人。


電話を必要としている張本人より楽しそうだった。


レンはそんな三人を見た。


そして少し笑う。


「……変な奴ら」


こうして。


四人による公衆電話捜索隊が結成された。



数日後。


講義の空きコマ。


公衆電話探索が開始された。


レンはノンと行動していた。


「……あれ?」


しかし途中からノンの姿が見当たらない。


「ノーン!」


レンの声が響く。


返事がない。


嫌な予感がする。


電話探索から。


なぜかノン探索に切り替わった。


しばらくして。


少し離れた場所。


掃除用具入れ。


そこから見覚えのある足だけが見えていた。


レン。


「何してんだ」


ノン。


「電話探してるぅ」


上半身だけ中へ突っ込んでいる。


「そこにあるわけねぇだろ!?」


ノンがひょこっと顔を出した。


淡いピンクの髪はところどころ埃を被り、灰色になっている。


挿絵(By みてみん)


「でも隠れてるかもしれないよぉ?」


「公衆電話が?」


「うん〜」


「なんで?」


「恥ずかしがり屋さんかも」


レン。


「会話が成立しねぇ」


呆れながらも、ふっと笑った。



翌日。


ノンは今度。


寮の机の引き出しを開けていた。


ガラッ。


ガラッ。


ガラッ。


次々開ける。


レン。


「何してんだ」


ノン。


「電話探してるぅ」


「そこも!?」


「だって入るかもしれないじゃん」


レン。


「猫型ロボットか」


ノン。


「?」


きょとん。


「なんて?」


レン。


「お気になさらず」


伝わるわけがなかった。



また別日。


今度はモズが先陣を切って探索。


「こっちだろ!」


探す場所ごとに自信満々だった。


レンを連れて行く。


向かった先。


巨大な花壇。


モズが真剣な顔で花をかき分け始めた。


レン。


「何してんの」


「電話探してる」


「花壇の中に?」


「擬態してるかもしれん」


「電話が?」


「電話が」


「なんで?」


「知らん」


「知らんのかよ!」


完全に根拠のない自信だった。


レンに首根っこを掴まれながら巨大な花壇をあとにするモズ。


挿絵(By みてみん)



「ちぇーー、ありそうだったのに」


頭の後ろで手を組み、不貞腐れながら歩くモズ。


そんなモズを横目に、


「はいはい」


と呆れ気味に答えるレン。


その時。


モズが突然立ち止まった。


……池の前だった。


レン。


嫌な予感。


モズ。


真剣な顔。


腕を組む。


そして。


「ありそうじゃね?」


レン。


「ねぇよ」


即答。


それでもモズは池を指差す。


「でもロマンあるじゃん」


「ロマンで探すな」


数秒。


池を見つめるモズ。


そして。


「よし」


服を脱ぎ始めた。


レン。


「待て待て待て待て」


モズ。


「ん?」


「何してんの」


「潜る」


「なんで!?」


「電話探す」


「池の中にあるわけねぇだろ!!」


「仮にあったとしてもだ!」


「水中でどうやって電話すんだよ!?」


「あばばばばばってなるだけだろ!!」


だがモズは真顔だった。


「でももしあったら熱くね?」


「熱くねぇよ!」


「むしろ水寒い!!」


レンは慌てて腕を掴む。


モズ。


「離せワン公!」


ジタバタジタバタ。


レン。


「離さねぇよ!」


引っ張り合いになる二人。


完全にアホだった。


その様子を少し後ろから見ていたネフィラ。


「ひぇぇぇ……」


顔真っ赤。


レン。


「?」


ネフィラ。


ビクゥッ。


慌てて本で顔を隠す。


「な、何でもありませんわ!」


何でもなくなかった。


モズが急に服を脱ぎ始めたせいで。


また脳内が大変なことになっていた。


ノンだけは平和だった。


「モズくん風邪ひくよぉ〜」


その一言で。


モズはようやく止まった。


レンは深いため息を吐く。


「助かった……」


ネフィラは本で顔を隠したまま思う。


(この方達、本当に大丈夫なんですの……?)


レンとモズはまだ言い合っている。


ノンはのんびり眺めている。


騒がしい。


本当に騒がしい。


(……ですが)


少しだけ口元が緩む。


(退屈はしませんわね)



ネフィラはそんな二人を見ながらため息をつく。


「お二人とも」


「ん?」


「そんな場所にある訳ありませんわ」


レン。


「ほら」


モズ。


「ですよねー」


ネフィラは本を閉じた。


「図書館裏の旧校舎付近が有力です」


「なんで分かるんだよ」


「目撃情報ですわ」


レン。


「根拠あるの助かる……」


思わず呟く。


ネフィラは胸を張った。


「当然ですわ」


レンは思った。


(初めてまともな人間が出てきた)


レンとノン


「失礼な!」


レン。


「心読んだ?!」

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