お残しは許しまへん
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40個入り120円です。
「ご注文のお料理でーす!」
ドン。
ノンは今、とても嬉しそうに両手を合わせている。
「おおぉ〜!」
以前見た時と同じ大食い向けの巨大肉料理。
レンはちらっとノンを見る。
「えへへ〜」
無茶苦茶嬉しそう。
一方ネフィラ。
「まぁ……!」
目を輝かせている。
巨大肉を見て。
純粋に感動している。
「初めて見ましたわ……」
「こんなの食い切れんのか?」
レンが聞く。
ノンは元気よく手を挙げた。
「余裕〜」
怖かった。
その後。
料理が次々と運ばれてくる。
レン達はいつも通り騒がしい。
だが。
一人だけ空気が違った。
ネフィラである。
背筋は真っ直ぐ。
ナイフとフォークの扱いも綺麗。
姿勢も綺麗。
言葉遣いも綺麗。
「ありがとうございます」
店員への一言まで上品だった。
レンは思う。
(ネフィラの周りだけ高級料理店か?)
モズも同じことを思ったらしい。
「なんかネフィラだけ別の店来てね?」
「失礼ですわね」
ネフィラはツンとする。
でも少し嬉しそうだった。
その時。
店員が飲み物を持ってきた。
モズが手を上げる。
「あっ、来た来た!」
グラスを受け取る。
「これな」
ニヒッ。
得意げな顔。
「マジでうまいんだよ」
そう言って。
レンへ渡した。
「飲んでみろ」
レンは何も考えず受け取る。
ゴクッ。
「お」
「うまいな」
「だろ?」
レンはそのまま返した。
モズも受け取る。
ゴクッ。
飲む。
ネフィラ。
停止。
(え)
(え?)
(え??)
今。
飲みましたわよね?
モズさん。
飲みましたわよね?
さっき。
レンさんが。
飲みましたわよね?
つまり。
つまり。
つまり。
(間接キスですわぁぁぁぁぁ!?!?!?)
脳内大爆発。
顔真っ赤。
耳真っ赤。
心拍数限界。
その横。
ノンが吹き出した。
「ぶふっ」
肉を頬張ったまま。
肩を震わせている。
レン。
「大丈夫か?」
「だいじょぶ〜」
全然大丈夫そうじゃなかった。
ネフィラ。
(落ち着きなさいネフィラ)
(これは普通)
(普通ですわ)
(普通……?)
(普通ですの!?)
全然落ち着かなかった。
レンは首を傾げる。
「なんか顔赤くないか?」
「なっ!?」
ネフィラ。
ビクゥッ。
「き、気のせいですわ!」
「そうか?」
「そうですわ!」
モズ。
「熱でもあんのか?」
さらに追撃。
ネフィラ。
(原因はあなた達ですわぁぁぁぁ!!)
言えない。
絶対言えない。
ノンはもう笑いを堪えるのに必死だった。
そして。
事件は起きた。
レン。
「……」
モズ。
「……」
ノン。
「……」
三人の視線。
ネフィラの皿に集まる。
とても綺麗に食べてある。
……端に寄せられたニンジンだけを除いて。
ネフィラ。
みんなの視線に気付く。
嫌な沈黙。
レン。
「ネフィラ」
「なんですの?」
「ニンジン」
ネフィラ。
停止。
モズ。
「ニンジン」
ノン。
「ニンジンだねぇ」
完全包囲。
逃げ場なし。
ネフィラは咳払いした。
「んっん!」
「これは」
「うん」
「食べる順番を考えていただけですわ」
レン。
「最後まで残ってるぞ」
図星。
ネフィラ。
沈黙。
モズ。
「嫌いなん?」
「嫌いではありませんわ!!」
即答。
レン。
「好きでもないだろ」
ネフィラ。
「…………」
耳が赤い。
分かりやすすぎた。
ノン。
「ふふっ」
ネフィラ。
観念する。
そして。
小声で呟いた。
「私の口には合わないんですもの……」
認めた。
レン。
「子供か」
「子供ではありませんわ!!」
モズ爆笑。ノンも笑っている。
ネフィラ。
真っ赤。
その時。
レンは自分の皿を見る。
まだハンバーグが残っていた。
そして。
ネフィラを見る。
ニンジンと睨めっこ中。
レン。
「ほら」
ハンバーグを少し持ち上げる。
ネフィラ。
視線が吸い寄せられる。
レン。
「ニンジン全部食ったらやる」
ネフィラ。
固まる。
ハンバーグ。
見る。
ニンジン。
見る。
ハンバーグ。
見る。
葛藤。
モズ。
「頑張れ」
ノン。
「頑張れぇ〜」
ネフィラ。
「ぐぬぬ……」
そして。
ぱく。
一個。
ぱく。
二個。
ぱく。
三個。
全部食べた。
モズ。
「おおおおお!!」
ノン。
拍手。
レン。
「偉い偉い」
ネフィラ。
「な、なんですのその反応は!!」
顔真っ赤。
でも。
ちゃんとハンバーグは受け取る。
そして。
少し嬉しそうだった。
レンはそんな様子を見て笑う。
最初は。
ただの変わり者だと思っていた。
でも実際は。
本が好きで。
変なところで慌てて。
ニンジンが苦手で。
案外分かりやすい。
そして。
優しい。
気付けば。
一緒にいるのが楽しかった。
ネフィラもまた。
三人と一緒に笑っていた。
少し前まで。
遠くから見ているだけだった輪の中で。
「ふふっ……」
思わず笑みがこぼれる。
それを見たモズが言う。
「お、笑った」
「なっ!?」
「今笑ったよな?」
「笑ってませんわ!」
「いや笑ってた」
「笑ってたねぇ〜」
ネフィラ。
真っ赤。
レンとモズは吹き出す。
店の中に四人の笑い声が響いた。
ネフィラはまだ気付いていない。
今日という日が自分にとって特別な思い出になることを。
そしてレンもまたこの時間を大切だと思い始めていた。
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