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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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「ご注文のお料理でーす!」


ドン。


ノンは今、とても嬉しそうに両手を合わせている。


「おおぉ〜!」


以前見た時と同じ大食い向けの巨大肉料理。


レンはちらっとノンを見る。


「えへへ〜」


無茶苦茶嬉しそう。


一方ネフィラ。


「まぁ……!」


目を輝かせている。


巨大肉を見て。


純粋に感動している。


「初めて見ましたわ……」


「こんなの食い切れんのか?」


レンが聞く。


ノンは元気よく手を挙げた。


「余裕〜」


怖かった。


その後。


料理が次々と運ばれてくる。


レン達はいつも通り騒がしい。


だが。


一人だけ空気が違った。


ネフィラである。


背筋は真っ直ぐ。


ナイフとフォークの扱いも綺麗。


姿勢も綺麗。


言葉遣いも綺麗。


「ありがとうございます」


店員への一言まで上品だった。


レンは思う。


(ネフィラの周りだけ高級料理店か?)


モズも同じことを思ったらしい。


「なんかネフィラだけ別の店来てね?」


「失礼ですわね」


ネフィラはツンとする。


でも少し嬉しそうだった。



その時。


店員が飲み物を持ってきた。


モズが手を上げる。


「あっ、来た来た!」


グラスを受け取る。


「これな」


ニヒッ。


得意げな顔。


「マジでうまいんだよ」


そう言って。


レンへ渡した。


「飲んでみろ」


レンは何も考えず受け取る。


ゴクッ。


「お」


「うまいな」


「だろ?」


レンはそのまま返した。


モズも受け取る。


ゴクッ。


飲む。


ネフィラ。


停止。


(え)


(え?)


(え??)


今。


飲みましたわよね?


モズさん。


飲みましたわよね?


さっき。


レンさんが。


飲みましたわよね?


つまり。


つまり。


つまり。


(間接キスですわぁぁぁぁぁ!?!?!?)


脳内大爆発。


顔真っ赤。


耳真っ赤。


心拍数限界。


その横。


ノンが吹き出した。


「ぶふっ」


肉を頬張ったまま。


肩を震わせている。


レン。


「大丈夫か?」


「だいじょぶ〜」


全然大丈夫そうじゃなかった。


ネフィラ。


(落ち着きなさいネフィラ)


(これは普通)


(普通ですわ)


(普通……?)


(普通ですの!?)


全然落ち着かなかった。


レンは首を傾げる。


「なんか顔赤くないか?」


「なっ!?」


ネフィラ。


ビクゥッ。


「き、気のせいですわ!」


「そうか?」


「そうですわ!」


モズ。


「熱でもあんのか?」


さらに追撃。


ネフィラ。


(原因はあなた達ですわぁぁぁぁ!!)


言えない。


絶対言えない。


ノンはもう笑いを堪えるのに必死だった。


そして。



事件は起きた。


レン。


「……」


モズ。


「……」


ノン。


「……」


三人の視線。


ネフィラの皿に集まる。


とても綺麗に食べてある。


……端に寄せられたニンジンだけを除いて。


ネフィラ。


みんなの視線に気付く。


嫌な沈黙。


レン。


「ネフィラ」


「なんですの?」


「ニンジン」


ネフィラ。


停止。


モズ。


「ニンジン」


ノン。


「ニンジンだねぇ」


完全包囲。


逃げ場なし。


ネフィラは咳払いした。


「んっん!」


「これは」


「うん」


「食べる順番を考えていただけですわ」


レン。


「最後まで残ってるぞ」


図星。


ネフィラ。


沈黙。


モズ。


「嫌いなん?」


「嫌いではありませんわ!!」


即答。


レン。


「好きでもないだろ」


ネフィラ。


「…………」


耳が赤い。


分かりやすすぎた。


ノン。


「ふふっ」


ネフィラ。


観念する。


そして。


小声で呟いた。


「私の口には合わないんですもの……」


認めた。


レン。


「子供か」


「子供ではありませんわ!!」


モズ爆笑。ノンも笑っている。


ネフィラ。


真っ赤。


その時。


レンは自分の皿を見る。


まだハンバーグが残っていた。


そして。


ネフィラを見る。


ニンジンと睨めっこ中。


レン。


「ほら」


ハンバーグを少し持ち上げる。


ネフィラ。


視線が吸い寄せられる。


レン。


「ニンジン全部食ったらやる」


ネフィラ。


固まる。


ハンバーグ。


見る。


ニンジン。


見る。


ハンバーグ。


見る。


葛藤。


モズ。


「頑張れ」


ノン。


「頑張れぇ〜」


ネフィラ。


「ぐぬぬ……」


そして。


ぱく。


一個。


ぱく。


二個。


ぱく。


三個。


全部食べた。


モズ。


「おおおおお!!」


ノン。


拍手。


レン。


「偉い偉い」


ネフィラ。


「な、なんですのその反応は!!」


顔真っ赤。


でも。


ちゃんとハンバーグは受け取る。


そして。


少し嬉しそうだった。


レンはそんな様子を見て笑う。


最初は。


ただの変わり者だと思っていた。


でも実際は。


本が好きで。


変なところで慌てて。


ニンジンが苦手で。


案外分かりやすい。


そして。


優しい。


気付けば。


一緒にいるのが楽しかった。


ネフィラもまた。


三人と一緒に笑っていた。


少し前まで。


遠くから見ているだけだった輪の中で。


「ふふっ……」


思わず笑みがこぼれる。


それを見たモズが言う。


「お、笑った」


「なっ!?」


「今笑ったよな?」


「笑ってませんわ!」


「いや笑ってた」


「笑ってたねぇ〜」


ネフィラ。


真っ赤。


レンとモズは吹き出す。


店の中に四人の笑い声が響いた。


ネフィラはまだ気付いていない。


今日という日が自分にとって特別な思い出になることを。


そしてレンもまたこの時間を大切だと思い始めていた。

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