その美しい館内検索機は歩く
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ネフィラは大事そうに本を抱えたまま。
優雅にソファへ腰掛けた。
そして。
先程までの騒動がまるでなかったかのように。
スッと足を組む。
「それで?」
ツン。
完全にお嬢様モード。
「わざわざこんなところまで来るなんて」
「私に何か御用ですの?」
レン。
「切り替え早ぇな……」
さっきまで。
うわっしょぉおおおい!?!?
とか叫びながらスライディングしていた人物とは思えない。
ノンはその様子を見て。
くすくす笑っていた。
「な、何ですの」
「なんでもないよぉ〜」
そんな中。
モズがニカッと笑う。
「一緒に飯行かね?」
ネフィラ。
停止。
「……へ?」
予想外。
完全に予想外。
(ご、ご飯……?)
(この方達と……?)
(わ、私が……?)
心臓がうるさい。
でも。
顔には出さない。
出してないつもり。
「んっん!」
咳払い。
「ま、まぁ……」
「あなた達がそうおっしゃるのでしたら」
「ご一緒しなくもありませんわよ」
耳が真っ赤だった。
モズ。
「よし!」
パチン。
指を鳴らす。
「決まり!」
ノン。
「やったぁ〜」
そして。
四人は図書館の中を歩き始めた。
⸻
「でっけぇなぁ」
モズが見上げる。
高い天井。
どこまでも続く本棚。
レンも周囲を見回した。
「迷ったら二度と帰ってこれなさそう」
「大袈裟ですわ」
ネフィラが即答する。
「第三書架は古代史」
「第五書架は魔法理論」
「第八書架は禁書指定区域」
「第二書架左側は伝記ですわ」
レン。
「なんで覚えてんだよ」
「読んだからですわ」
「館内の本の場所、大抵把握しておりますわ」
「…館内検索機の擬人化みたいだな」
レン若干引く。
その時だった。
少し離れた場所。
一人の学生が本棚の前でオロオロしていた。
「あれ……?」
「おかしいな……」
何度も紙と本棚を見比べている。
探し物らしい。
レンも気付く。
「あの人困ってるな」
モズ。
「だな」
ネフィラも気付いていた。
「……」
少しだけその学生を見る。
普段なら。
人見知りなネフィラは近付かない。
知らない人なら尚更。
でも。
今回は違った。
トコトコ。
ネフィラが歩き出す。
レン。
「お?」
モズ。
「珍しくね?」
ネフィラは学生の前で立ち止まった。
少し緊張したように視線を逸らしながら。
それでも。
ちゃんと声を掛ける。
「あの……」
学生。
「え?」
「何をお探しですの?」
学生は手元の紙を見る。
「あっ」
「えっと……」
本の題名を伝える。
すると。
ネフィラ。
即答。
「第三書架ですわ」
「え?」
「左側の通路を進んで二列目」
「下から三段目です」
「青い背表紙ですわ」
学生。
完全停止。
「……え?」
学生は半信半疑で向かう。
そして数十秒後。
遠くから声。
「あったーー!!」
ネフィラ。
ふん。
当然ですわ。
みたいな顔。
レン。
「すげぇ……」
モズ。
「店員か?」
「失礼ですわね」
ネフィラはツンとする。
だが。
少しだけ嬉しそうだった。
その後も。
「あの、魔法薬学の本を……」
「第五書架ですわ」
「回復魔法の参考書は……」
「右から三列目ですわ」
「歴代学長について調べたくて……」
「伝記コーナーですわ」
即答。
迷いなし。
次々と学生達を案内していく。
レンはその様子を見ていた。
知らない人と話すのは苦手なはずなのに。
本のことになると。
自分から声を掛ける。
助ける。
しかも。
見返りなんて求めていない。
純粋に。
困っている人を助けているだけ。
(……)
レンは少し驚いていた。
最初は。
変な人だと思っていた。
急に挙動不審になったり。
図書館で変な声を出したり。
正直。
「ほんとに大丈夫かこいつ」
と思っていた。
でも。
違った。
この人。
ちゃんと良い奴だ。
その時。
また一人の学生がネフィラにお礼を言って去っていく。
「ありがとうございました!」
ネフィラは少しだけ微笑んだ。
「お気になさらず」
そして。
並ぶ本棚を見上げる。
優しい青い瞳が細くなる。
「本は」
静かな声。
三人が振り向く。
ネフィラは本棚へ視線を向けたまま続けた。
「迷子になってはいけませんもの」
その言葉は。
本に向けたものなのか。
本を探している人に向けたものなのか。
レンには分からなかった。
でも。
ネフィラらしいなと思った。
ノンも嬉しそうに笑う。
「ネフィラちゃん優しいねぇ」
「そ、そういう話ではありませんわ」
照れたように視線を逸らす。
耳が少し赤い。
モズはニヤニヤしていた。
「いやでもすげぇよ」
「本当に全部覚えてんだな」
ネフィラは胸を張る。
「当然ですわ」
「この図書館の本はほぼ読みましたもの」
「ほぼ?」
レン。
「ほぼ?」
モズ。
「ほぼ?」
ノン。
ネフィラ。
「ほぼですわ」
当たり前のように言う。
三人。
引いた。
「こわ」
「こわいな」
「すごいねぇ」
反応はバラバラ。
ネフィラは不満そうに頬を膨らませた。
そんなやり取りをしながら。
四人は図書館を後にするのだった。
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