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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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38/54

落ち着く場所

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「そのワン公、魔力ゼロにつき。」

で是非検索してみてください☆

40個入り120円です。

月詠魔法大学図書館。


吹き抜けになった大きなホール。


高い窓から差し込む陽の光が、白い床を優しく照らしていた。


ホールを中心に。


放射状に並ぶ巨大な本棚。


魔法書。


歴史書。


研究書。


小説。


数え切れないほどの本が並んでいる。


その奥。


受付から真っ直ぐ進んだ先。


大きな窓のある小さなスペース。


アンティーク調の白いソファ。


丸いテーブル。


観葉植物。


人通りも少ない。


静かな場所。


そこに。


ネフィラはいた。


白いソファに腰掛け。


片手で本を持つ。


もう片方の手で淡い水色の髪を耳にかける。


窓から差し込む光が髪を照らす。


まるで絵画。


人形のように美しい少女。

挿絵(By みてみん)

……なのだが。


ペラ。


ペラペラ。


ペラペラペラペラペラ。


ページをめくる速度が異常だった。


速い。


とにかく速い。


普通の人なら文字を追うだけで精一杯。


しかしネフィラは違う。


目が恐ろしい速度で動いている。


数分後。


パタン。


本を閉じた。


静かに瞳を閉じる。


そして机の上へ置いた。


積み上がった大量の本。


ネフィラはその表紙へそっと触れる。


古い紙の匂い。


少し埃っぽい独特の香り。


落ち着く。


昔から。


人付き合いが苦手だった。


だから。


本は好きだった。


本の中では誰かと話さなくていい。


気を遣わなくていい。


ここは。


ネフィラにとって一番落ち着く場所だった。


……だった。


最近までは。


「……」


脳裏に浮かぶ。


立ち幅跳びの日。


モズ。


『おーい!手上げろ!』


レン。


『えっ!?』


グイッ。


空中一回転。


そして。


お姫様抱っこ。


ネフィラ。


「~~~~っ」


思い出して顔が赤くなる。


慌てて周囲を見る。


誰もいない。


よし。


ネフィラはそぉーーっと。


本の山の隙間へ手を伸ばした。


そして。


手のひらサイズの小説を取り出す。


表紙。


男の子二人。


熱い友情物語。


普通の小説。


本当に普通。


なのに。


ネフィラ。


チラッ。


ページを開く。


「ひゃっ……」


閉じる。


チラッ。


開く。


「ひえぇ……」


閉じる。


また開く。


「ふぇぇ……」


閉じる。


忙しい。


ただの友情物語である。


本当に。


普通の。


友情物語である。


しかし。


想像力が豊かすぎるネフィラには刺激が強いらしい。


本人だけが大騒ぎしていた。


その時。


「……フィラちゃん」


「……」


聞こえていない。


「……ネフィラちゃん」


「……」


聞こえていない。


「ネフィラちゃん!!」


「ふぇいっ!?!?」


飛び上がる。


本を胸に抱えたまま変なポーズで固まる。


顔を上げる。


そこには。


ふわっと笑うノン。


顔の横で小さく手を振っている。


「やっほぉ〜」


「ノ、ノンさん……」


ネフィラは胸を押さえる。


「ネフィラちゃん本好きだしここにいるかなって」


「お、驚かさないでくださいまし……」


そして。


ふと。


ノンの後ろを見る。


レン。


モズ。


「…………」


ネフィラ。


停止。


数秒後。


「あばばばばばばば!?」


変な声を上げながらソファへ倒れ込んだ。


バサッ。


その拍子に。


先ほどの友情小説が床へ落ちる。


さらに。


なぜか。


クルクルクルクル。


回転しながら。


レンとモズの足元へ。


「ん?」


モズがしゃがむ。


拾おうとする。


その瞬間。


「うわっしょぉぉおおおおい!?!?」


ネフィラ。


スライディング。


猛烈な速度。


本を回収。


完全セーフ。


モズ。


「速っ」


レン。


「お祭り男?」


モズ。


「なんだそれ」


レン。


「いや、なんでもない」


ネフィラは本を抱き締めたまま。


立ち上がる。


「んっん!」


咳払い。


優雅に。


とても優雅に。


スカートの埃を払う。


キョロキョロ。


周囲確認。


大丈夫。


幸い。


他の学生はいない。


ネフィラは何事もなかったようにソファへ戻った。


そして。


本を抱えたまま座る。


モズ。


「あ、その本知ってる!」


ネフィラ。


ビクゥゥゥッ!!


完全停止。


固まる。


モズは気付かない。


「スンゲェ激アツだよな!」


「最後のとこめちゃくちゃ感動した!」


普通。


実に普通の感想。


ネフィラ。


心の中で安堵する。


(よ、よかったですわ……)


(変な妄想していたことはバレてませんのね……)


ギリギリ助かった。


「こ、ここの本を知っているなんて」


ネフィラ。


ぎこちなく笑う。


「お、お目が高いですのね」


声が裏返る。


顔も赤い。


目も泳いでいる。


全然隠せていない。


レンはその様子を見ていた。


そして。


思った。


(……ほんとに大丈夫なのかこいつ?)


心の底から。


そう思った。


ノンは。


そんな二人を見て。


楽しそうに笑っていた。


「ふふっ」


今日も。


ネフィラは平常運転だった。

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