落ち着く場所
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40個入り120円です。
月詠魔法大学図書館。
吹き抜けになった大きなホール。
高い窓から差し込む陽の光が、白い床を優しく照らしていた。
ホールを中心に。
放射状に並ぶ巨大な本棚。
魔法書。
歴史書。
研究書。
小説。
数え切れないほどの本が並んでいる。
その奥。
受付から真っ直ぐ進んだ先。
大きな窓のある小さなスペース。
アンティーク調の白いソファ。
丸いテーブル。
観葉植物。
人通りも少ない。
静かな場所。
そこに。
ネフィラはいた。
白いソファに腰掛け。
片手で本を持つ。
もう片方の手で淡い水色の髪を耳にかける。
窓から差し込む光が髪を照らす。
まるで絵画。
人形のように美しい少女。
……なのだが。
ペラ。
ペラペラ。
ペラペラペラペラペラ。
ページをめくる速度が異常だった。
速い。
とにかく速い。
普通の人なら文字を追うだけで精一杯。
しかしネフィラは違う。
目が恐ろしい速度で動いている。
数分後。
パタン。
本を閉じた。
静かに瞳を閉じる。
そして机の上へ置いた。
積み上がった大量の本。
ネフィラはその表紙へそっと触れる。
古い紙の匂い。
少し埃っぽい独特の香り。
落ち着く。
昔から。
人付き合いが苦手だった。
だから。
本は好きだった。
本の中では誰かと話さなくていい。
気を遣わなくていい。
ここは。
ネフィラにとって一番落ち着く場所だった。
……だった。
最近までは。
「……」
脳裏に浮かぶ。
立ち幅跳びの日。
モズ。
『おーい!手上げろ!』
レン。
『えっ!?』
グイッ。
空中一回転。
そして。
お姫様抱っこ。
ネフィラ。
「~~~~っ」
思い出して顔が赤くなる。
慌てて周囲を見る。
誰もいない。
よし。
ネフィラはそぉーーっと。
本の山の隙間へ手を伸ばした。
そして。
手のひらサイズの小説を取り出す。
表紙。
男の子二人。
熱い友情物語。
普通の小説。
本当に普通。
なのに。
ネフィラ。
チラッ。
ページを開く。
「ひゃっ……」
閉じる。
チラッ。
開く。
「ひえぇ……」
閉じる。
また開く。
「ふぇぇ……」
閉じる。
忙しい。
ただの友情物語である。
本当に。
普通の。
友情物語である。
しかし。
想像力が豊かすぎるネフィラには刺激が強いらしい。
本人だけが大騒ぎしていた。
その時。
「……フィラちゃん」
「……」
聞こえていない。
「……ネフィラちゃん」
「……」
聞こえていない。
「ネフィラちゃん!!」
「ふぇいっ!?!?」
飛び上がる。
本を胸に抱えたまま変なポーズで固まる。
顔を上げる。
そこには。
ふわっと笑うノン。
顔の横で小さく手を振っている。
「やっほぉ〜」
「ノ、ノンさん……」
ネフィラは胸を押さえる。
「ネフィラちゃん本好きだしここにいるかなって」
「お、驚かさないでくださいまし……」
そして。
ふと。
ノンの後ろを見る。
レン。
モズ。
「…………」
ネフィラ。
停止。
数秒後。
「あばばばばばばば!?」
変な声を上げながらソファへ倒れ込んだ。
バサッ。
その拍子に。
先ほどの友情小説が床へ落ちる。
さらに。
なぜか。
クルクルクルクル。
回転しながら。
レンとモズの足元へ。
「ん?」
モズがしゃがむ。
拾おうとする。
その瞬間。
「うわっしょぉぉおおおおい!?!?」
ネフィラ。
スライディング。
猛烈な速度。
本を回収。
完全セーフ。
モズ。
「速っ」
レン。
「お祭り男?」
モズ。
「なんだそれ」
レン。
「いや、なんでもない」
ネフィラは本を抱き締めたまま。
立ち上がる。
「んっん!」
咳払い。
優雅に。
とても優雅に。
スカートの埃を払う。
キョロキョロ。
周囲確認。
大丈夫。
幸い。
他の学生はいない。
ネフィラは何事もなかったようにソファへ戻った。
そして。
本を抱えたまま座る。
モズ。
「あ、その本知ってる!」
ネフィラ。
ビクゥゥゥッ!!
完全停止。
固まる。
モズは気付かない。
「スンゲェ激アツだよな!」
「最後のとこめちゃくちゃ感動した!」
普通。
実に普通の感想。
ネフィラ。
心の中で安堵する。
(よ、よかったですわ……)
(変な妄想していたことはバレてませんのね……)
ギリギリ助かった。
「こ、ここの本を知っているなんて」
ネフィラ。
ぎこちなく笑う。
「お、お目が高いですのね」
声が裏返る。
顔も赤い。
目も泳いでいる。
全然隠せていない。
レンはその様子を見ていた。
そして。
思った。
(……ほんとに大丈夫なのかこいつ?)
心の底から。
そう思った。
ノンは。
そんな二人を見て。
楽しそうに笑っていた。
「ふふっ」
今日も。
ネフィラは平常運転だった。
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