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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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扉の向こう側

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カチ。


カチ。


最後の金具がはまる音。


「よし」


モズは修理されたドアを軽く押す。


ギィ。


問題なく開く。


「お、完璧じゃん」


先ほどまで半壊していたとは思えないほど綺麗に戻った扉。


モズはしゃがむ。


床に並んだ工具達を見る。


「ありがとな、助かった」


そう言って。


一つ一つ拾い上げる。


魔法解除。


動きを止めた工具を丁寧に箱へ戻していく。


カチャ。


カチャ。


部屋には。


工具が触れる小さな音だけが響いていた。


レンはまだ。


正座したまま。


俯いていた。


モズは何も言わない。


聞かない。


ただ待っている。


ノンも同じ。


レンの隣。


ちょこんと正座したまま。


いつものように。


ただ傍にいる。


急かさない。


責めない。


待っている。


そして。


少しして。


「……」


レンが小さく息を吐いた。


観念したように。


ゆっくり口を開く。


「……ごめん」


小さな声。


いつものレンからは想像できないくらい。


弱々しい声だった。


モズとノンにしか聞こえないくらい。


細い声。


そして。


レンは。


深く頭を下げた。


正座したまま。


床に額がつきそうなくらい。


「……」


モズの目が少し見開く。


レンは顔を上げない。


そのまま続ける。


「ノンにも……」


「まだちゃんと言えてなかった」


ノンは静かに聞いていた。


「俺さ」


少し間。


「人間なんだ」


「……」


「神狼族でもなんでもない」


「魔力が少ないとかでもない」


「ただの……」


「普通の人」


言葉を探す。


不器用に。


一つずつ。


「バレたら」


「大学追い出されると思った」


「やっと入れた場所だったから」


「やっと……」


「楽しいって思えたから」


声が少し震える。


「それに」


「お前らに知られたら」


「もう一緒にいられないんじゃないかって」


「……怖かった」


モズは黙って聞いていた。


ノンも。


優しく目を細めているだけ。


「だから」


「言えなかった」


「ずっと」


「……騙してごめん」


もう一度。


深く頭を下げる。


沈黙。


数秒。


長く感じる時間。


その時、モズが動いた。


ゆっくり近づく。


レンの前。


しゃがみ込む。


そして。


「……」


口を開いた。


「なんだ」


「……」


「そんなことか」


「……え?」


レンの頭が。


少しだけ上がる。


モズを見る。


モズはいつものように。


そこにいた。


「いや」


「俺もっとヤバいこと想像したわ」


「実は世界滅ぼす魔王でしたー、とか」


レン。


「……」


「なんでだよ」


小さく返す。


いつものツッコミ。


モズは少し笑った。


そして。


表情を柔らかくする。


「俺さ」


「レン達に会ってから楽しいんだよ」


レンは顔を上げる。


「大学」


「去年までと違う」


「毎日バカやって」


「飯食って」


「怒られて」


「笑って」


少し照れくさそうに笑う。


「こう見えて」


「お前らのこと」


「大事に思ってんの」


「ほんとに」


レンは何も言えなかった。


モズがまっすぐ見る。


「だからさ」


「もっと俺らのこと頼れよ」


その一言。


ずっと。


一人で抱えていたもの。


隠して。


誤魔化して。


必死に守っていたもの。


それが。


少しずつ。


溶けていく気がした。


「……」


レンの目が少し潤む。


その横。


「レンくん」


ノンの声。


顔を上げる。


ふわっと。


薄桃色の髪が揺れる。


ノンがレンの顔を覗き込む。


優しい笑顔。


「私達」


「ワン公くんの親友だよ」


「……」


その瞬間。


壊れた気がした。


ずっと閉じていた。


心の扉が。


完全に。


肩に乗っていた重いものが。


消える。


「……」


レンは二人を見る。


そして。


小さく笑った。


八重歯が少し覗く。


「ありがとう」


心から。


そう思った。


それを見て。


モズも安心したように息を吐く。


そして。


いつもの顔に戻る。


ニヒッ。


人懐っこい笑顔。


「これからもよろしくな!」


レン。


少し笑う。


「……おう」


親友。


その言葉が。


胸に残る。


今まで以上に。


大切にしたいと思った。


この場所を。


この二人を。


その時。


ノンがぽつり。


「あ、でもねぇ」


二人が見る。


「ん?」


「私」


「なんとなく気づいてたよぉ?」


「……」


「……」


レン。


モズ。


同時に固まる。


「は?」


「マジ?」


ノンはいつもの顔。


「うん〜」


「だってぇ」


少し首を傾げる。


「レンくんの魔力」


「普通じゃなかったもん」


レン。


「いや言えよ!!」


完全復活。


ツッコミ。


ノンはクスクス笑う。


そして。


何気ない声で。


言った。


「それにねぇ」


「私のおじいちゃん」


間。


「人間だから」


「……」


「……」


今度は。


レンとモズ。


二人とも。


完全停止。


「「…………え?」」

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