気づけばワープしてました
「月詠魔法大学……合格……」
大神レンは、黒い封筒を持ったまま固まっていた。
何回見ても、書いてある。
《合格通知》
夢じゃない。
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
レンはアパートの廊下に飛び出した。
「大学!大学受かった!!」
隣人のドアがガチャッと開く。
「うるせぇ!!」
「すみません!!!」
即謝罪。
でも嬉しい。
めちゃくちゃ嬉しい。
レンはそのまま部屋へ駆け戻った。
「母さん!!受かった!!」
キッチンにいた母親が振り返る。
「えっ、ほんと!?」
「うん!!」
レンは勢いよく合格通知を突き出した。
母親は目を丸くする。
「えぇー!よかったじゃん!」
ぱっと笑う顔を見て、レンは少し安心した。
落ち続けて、暗い顔ばかり見せていたから。
だが次の瞬間。
「……月詠魔法大学?」
母親の眉がぴくっと動く。
「うん!」
「聞いたことないけど……」
「えっ」
「その大学……大丈夫?」
めちゃくちゃ怪訝そうな顔だった。
レンの笑顔が若干引きつる。
確かに名前は怪しい。
“魔法大学”だし。
だが、ここで不安がらせるわけにはいかなかった。
「だ、大丈夫だって!」
「ほんとに?」
「ほら!ちゃんと合格通知あるし!」
「いやそうだけど……」
母親はまだ不安そうだった。
レンは慌てて続ける。
「寮もあるらしいし!設備ちゃんとしてそうだった!」
実際はほぼ覚えてない。
なんか怖い館だった。
だが母親は小さく息を吐いた。
「……なら、まあ」
そして優しく笑う。
「おめでとう、レン」
その一言で、レンの胸がじんわり熱くなった。
「……うん」
大学生。
本当に。
自分が。
その夜。
レンは浮かれながら荷造りしていた。
黒いリュック。
着替え。
ノートPC。
充電器。
歯ブラシ。
「寮生活かぁ……」
めちゃくちゃ青春っぽい。
ルームメイトとかいるのかな。
怖いやつだったらどうしよう。
でも友達できたらいいな。
そんなことを考えながら、レンは財布を開いた。
中には、高校時代のバイト代。
二十万円。
コンビニ。
居酒屋。
引っ越し補助。
頑張って貯めた金だった。
「まあ奨学金使えばなんとかなるだろ……」
わりと軽い。
未来設計が雑。
レンは札束を財布へ押し込み、そのままリュックへ突っ込んだ。
まさかこの金が、
後に月詠魔法大学で“国家予算級”の価値を持つことになるとは、この時まだ知らない。
そして入学当日。
合格通知に書かれていた住所へ辿り着いたレンは、首を傾げていた。
「……ここ?」
そこは、古い駅の地下通路だった。
人気はない。
薄暗い。
壁には古びた時計。
そして突き当たりに、妙な扉がある。
「えー……」
大学ってここ?
レンは通知を見直した。
間違ってない。
その時。
前を歩いていたローブ姿の女が、扉へ触れ――消えた。
「!?」
レンは固まった。
え?
今。
消えた?
「……いやいやいや」
マジックだろ。
そうに違いない。
レンは恐る恐る扉へ近づく。
すると通知が、淡く光った。
「うわっ!?」
びっくりして後ろへ下がる。
だが次の瞬間。
ズルッ。
「うおっ」
レンは足を滑らせ、そのまま扉へ突っ込んだ。
世界が歪む。
視界がねじれる。
浮遊感。
「え、え、え、えっ――!?」
ドンッ!!
レンは石畳へ転がり落ちた。
「いっっったぁ……」
顔を上げる。
そして。
「…………は?」
絶句した。
空が近い。
巨大な塔。
宙に浮かぶ光。
空を飛ぶ生物。
月の形をした街灯。
魔法陣。
そして――。
山のように巨大な校舎。
まるで城だった。
いや、城よりデカい。
黒と銀を基調にした幻想的な建築。
何本もの塔が空へ伸びている。
橋が空中に浮かんでいた。
学生らしき人影が行き交う。
だが。
角がある。
羽がある。
尻尾がある。
浮いてるやつもいる。
「…………」
レンの肩から荷物がずるりと落ちた。
ぽかんと口が開く。
「……なにここ」
完全に異世界だった。
その時。
背後から声。
「おい」
レンが振り向く。
銀色の鎧を着た受付係らしき男が立っていた。
「新入生か?」
「あっ、え、はい」
「通知を見せろ」
レンは慌てて合格通知を差し出した。
男は確認し――表情を変えた。
「……大神レン?」
「は、はい」
男の目が鋭くなる。
周囲の空気も変わった。
「……特別入学生か!」
「えっ」
「話には聞いている」
いや何を?
レンが困惑していると、男は急に姿勢を正した。
「失礼した」
「?」
「まさか貴方ほどの方が、本当に入学なさるとは」
「は?」
“ほどの方”?
レンは嫌な予感がした。
だが男は真顔だった。
「入学手続きを行う。こちらへ」
レンは連れて行かれる。
途中、周囲の学生たちがざわついていた。
「あれが……?」
「噂の……」
「魔力反応ゼロらしいぞ」
「嘘だろ……」
レン:
(終わったかもしれん)
俺の大学生活、
どぉなっちゃうのーーー?☆
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本日投稿予定残り3話
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