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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第1章 ワン公、入学

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コインを消しただけなのに!?

薄暗い部屋。


大神レンは、鏡の前で死にそうな顔をしていた。


「……むりだろこれ」


机の上には、昨日拾った謎の大学の願書。


『月詠魔法大学』


どう考えても怪しい。


だが、背に腹は代えられない。


レンは昨夜、勢いで願書を書いて送ってしまっていた。


そして今日。


なぜか本当に面接日が来た。


「いや早すぎるだろ……」


普通、もっとこう……説明会とかあるだろ。


だが指定された住所へ向かうと、そこには古びた洋館があった。


大学……というより、

完全にホラー映画の館。


「帰りてぇ……」


レンは肩を落としながら重たい扉を開けた。


ギィィ……。


中は静かだった。


やけに広い廊下。

青白い照明。

見たことのない紋章。


受付には、異様に顔色の悪い男が座っている。


「受験番号13番。大神レン様ですね」


「は、はい」


「面接会場へどうぞ」


声ちっっっさ。


レンは案内されるまま、奥の部屋へ通された。


重厚な扉が閉まる。


――バタン。


「ひっ」


思わず肩が跳ねる。


部屋の中央には椅子が一つ。


その向こう。


長机に、三人。


白髭の老人。

無表情な銀髪の女。

……半透明の男。


「えっ」


レンは目を擦って二度見した。


半透明。


「……」


いやいやいや。


緊張で幻覚見えてる?


レンは必死に自分へ言い聞かせた。


そうだ。

寝不足だ。

そうに違いない。


老人が低い声で言う。


「座れ」


「は、はい!」


レンはガチガチになりながら腰を下ろした。


沈黙。


怖い。


怖すぎる。


普通もっと、

「志望理由は?」

とか聞かない?


だが面接官たちは、ただレンを見ている。


じっ……。


なんなの。


怖い。


すると銀髪の女が口を開いた。


「……大神レン」


「は、はい!」


「お前の力を見せてみよ」


「……へ?」


レンは固まった。


ち…力?


筋トレとか?


老人が頷く。


「どのような形でも構わぬ」


半透明の男も頷く。


「己を示せ」


いやわからんわ。


レンの脳内は大混乱だった。


なんだこの大学。


変な宗教か?


オーディション?


一発芸面接?


だが沈黙が怖い。


何かしないと。


何か。


何か……!


レンは震える手でポケットを探った。


出てきたのは、十円玉。


「……あ」


高校時代、友達に無理やりやらされ滑った手品。


コインマジック。


もうこれしかない。


「えっと……コイン、消せます」


面接官たちの眉がわずかに動く。


レンは半泣きになりながら十円玉を指に挟んだ。


(終わった……)


スッ。


指を返す。


コインが消える。


実際は、ただ指の間に隠しただけ。


沈黙。


…………。


やばい。

滑った。


レンが死にたくなった、その時。


ガタン!!


老人が勢いよく立ち上がった。


「なっ――!!」


「!?」


銀髪の女が目を見開く。


「無詠唱……?」


半透明の男が震え始める。


「魔力反応……ゼロ……?」


レン「え?」


老人:

「ば、馬鹿な……触媒も無しに空間位相を……!?」


女:

「ありえない……人界式でも古代魔術でもない……」


男:

「手を一切見失わなかった……なのに消えた……」


レン:

「えっ」


なんかざわついてる。


怖い。


老人がレンへ身を乗り出す。


「もう一度だ!!」


「えっ!?あっはい!?」


レンはテンパりながら再びコインを動かした。


スッ。


消える。


面接官たち、騒然。


「……瞬間転移」


「いや、認識阻害系か……?」


「待て、魔力波長が一切発生しておらん!」


「そんなことが可能なのか……!?」


レン:

(なんか知らんけどウケてる!?)


銀髪の女が鋭く尋ねる。


「大神レン。貴様、その技術をどこで学んだ」


「えっ、いや……ネット動画で……」


「独学だと……?」


「天才か……!?」


レン:

「???」


話が噛み合わない。


老人は険しい顔で腕を組む。


「……危険だ」


「ええ……あまりにも異質」


「だが――」


半透明の男が、不気味に笑った。


「面白い」


レン:

(怖い怖い怖い怖い)

猫のように跳ねた癖っ毛の先まで震える。混乱。


その後も、


「他の術式は?」

「得意属性は?」

「どの系統に属する?」


など謎の質問をされ続けたが、レンはほぼ何も答えられなかった。


だが面接官たちは逆に深読みした。


「……隠しているのか」

「迂闊に開示できぬ力ということか」

「神狼系統の秘匿術……?」


どんどん話が大きくなっていく。


レンは完全に置いてけぼりだった。


そして面接終了。


館を出たレンは、ぐったりしながら空を見上げる。


「……なんだったんだあれ」


絶対落ちた。


そう思った。


だが数日後。


自宅ポストに、一通の黒い封筒が届く。


月の紋章。


震える手で開封する。


『合格通知』


レン:

「………………は?」


固まる。


数秒後。


「うおおおおおおおおおおお!!!!」


アパート中に絶叫が響いた。

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