コインを消しただけなのに!?
薄暗い部屋。
大神レンは、鏡の前で死にそうな顔をしていた。
「……むりだろこれ」
机の上には、昨日拾った謎の大学の願書。
『月詠魔法大学』
どう考えても怪しい。
だが、背に腹は代えられない。
レンは昨夜、勢いで願書を書いて送ってしまっていた。
そして今日。
なぜか本当に面接日が来た。
「いや早すぎるだろ……」
普通、もっとこう……説明会とかあるだろ。
だが指定された住所へ向かうと、そこには古びた洋館があった。
大学……というより、
完全にホラー映画の館。
「帰りてぇ……」
レンは肩を落としながら重たい扉を開けた。
ギィィ……。
中は静かだった。
やけに広い廊下。
青白い照明。
見たことのない紋章。
受付には、異様に顔色の悪い男が座っている。
「受験番号13番。大神レン様ですね」
「は、はい」
「面接会場へどうぞ」
声ちっっっさ。
レンは案内されるまま、奥の部屋へ通された。
重厚な扉が閉まる。
――バタン。
「ひっ」
思わず肩が跳ねる。
部屋の中央には椅子が一つ。
その向こう。
長机に、三人。
白髭の老人。
無表情な銀髪の女。
……半透明の男。
「えっ」
レンは目を擦って二度見した。
半透明。
「……」
いやいやいや。
緊張で幻覚見えてる?
レンは必死に自分へ言い聞かせた。
そうだ。
寝不足だ。
そうに違いない。
老人が低い声で言う。
「座れ」
「は、はい!」
レンはガチガチになりながら腰を下ろした。
沈黙。
怖い。
怖すぎる。
普通もっと、
「志望理由は?」
とか聞かない?
だが面接官たちは、ただレンを見ている。
じっ……。
なんなの。
怖い。
すると銀髪の女が口を開いた。
「……大神レン」
「は、はい!」
「お前の力を見せてみよ」
「……へ?」
レンは固まった。
ち…力?
筋トレとか?
老人が頷く。
「どのような形でも構わぬ」
半透明の男も頷く。
「己を示せ」
いやわからんわ。
レンの脳内は大混乱だった。
なんだこの大学。
変な宗教か?
オーディション?
一発芸面接?
だが沈黙が怖い。
何かしないと。
何か。
何か……!
レンは震える手でポケットを探った。
出てきたのは、十円玉。
「……あ」
高校時代、友達に無理やりやらされ滑った手品。
コインマジック。
もうこれしかない。
「えっと……コイン、消せます」
面接官たちの眉がわずかに動く。
レンは半泣きになりながら十円玉を指に挟んだ。
(終わった……)
スッ。
指を返す。
コインが消える。
実際は、ただ指の間に隠しただけ。
沈黙。
…………。
やばい。
滑った。
レンが死にたくなった、その時。
ガタン!!
老人が勢いよく立ち上がった。
「なっ――!!」
「!?」
銀髪の女が目を見開く。
「無詠唱……?」
半透明の男が震え始める。
「魔力反応……ゼロ……?」
レン「え?」
老人:
「ば、馬鹿な……触媒も無しに空間位相を……!?」
女:
「ありえない……人界式でも古代魔術でもない……」
男:
「手を一切見失わなかった……なのに消えた……」
レン:
「えっ」
なんかざわついてる。
怖い。
老人がレンへ身を乗り出す。
「もう一度だ!!」
「えっ!?あっはい!?」
レンはテンパりながら再びコインを動かした。
スッ。
消える。
面接官たち、騒然。
「……瞬間転移」
「いや、認識阻害系か……?」
「待て、魔力波長が一切発生しておらん!」
「そんなことが可能なのか……!?」
レン:
(なんか知らんけどウケてる!?)
銀髪の女が鋭く尋ねる。
「大神レン。貴様、その技術をどこで学んだ」
「えっ、いや……ネット動画で……」
「独学だと……?」
「天才か……!?」
レン:
「???」
話が噛み合わない。
老人は険しい顔で腕を組む。
「……危険だ」
「ええ……あまりにも異質」
「だが――」
半透明の男が、不気味に笑った。
「面白い」
レン:
(怖い怖い怖い怖い)
猫のように跳ねた癖っ毛の先まで震える。混乱。
その後も、
「他の術式は?」
「得意属性は?」
「どの系統に属する?」
など謎の質問をされ続けたが、レンはほぼ何も答えられなかった。
だが面接官たちは逆に深読みした。
「……隠しているのか」
「迂闊に開示できぬ力ということか」
「神狼系統の秘匿術……?」
どんどん話が大きくなっていく。
レンは完全に置いてけぼりだった。
そして面接終了。
館を出たレンは、ぐったりしながら空を見上げる。
「……なんだったんだあれ」
絶対落ちた。
そう思った。
だが数日後。
自宅ポストに、一通の黒い封筒が届く。
月の紋章。
震える手で開封する。
『合格通知』
レン:
「………………は?」
固まる。
数秒後。
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
アパート中に絶叫が響いた。
ご覧頂きありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の励みになります!
ブックマーク登録して最新話をお待ちいただけるととても嬉しいです!




