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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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止まって見えるタイプのやつです

ボール投げを終えたレンは、

測定結果用紙を見つめていた。


大神レン


50m走:2.42秒


立ち幅跳び:2.84m


ボール投げ:測定不能


その横でモズは腕を組みながら唸っていた。


「いやぁ……」


「マジでどうやったんだ?」


「何が」


「ボール投げ」


「知らん」


「嘘つけ」


レンは目を逸らした。



そして。


次の種目。


上体起こし。



レン:

(助かった……)


これなら普通に出来るだろう。


そう思った。



「なお上体起こしは魔法使用可」


ボイド先生が言う。



レン:

「余計なこと言うなぁぁぁ!!」



周囲がびくっとする。


レン。


「いや待て」


「でも魔力測定だもんな!」


「普通魔力使うわな!」


「うん!!」


一人で納得。自己完結。


モズ。


「何言ってんのお前……」


ちょっと引いてる。


レン:

「なんでもないです」



学生たちは次々。


「《筋力強化》!」


「《肉体加速》!」


「《連続動作補助》!」


怖い。


なんか始まった。



そして。


モズの番。


モズは寝転がる。

頭の上で結われた身近な髪がぴょこっと揺れる。


両手を頭の後ろで組む。


ニヒッ。


「《風よ支えろ》」


「《時を刻め》」


「《鼓動に合わせろ》」


橙色の魔法陣が浮かぶ。


すると。


モズの体が。


ガバッ


ピタッ


ガバッ


ピタッ


ガバッ


ピタッ


一定のリズム。


一定の角度。一定の速度。


まるで精密機械。


頭の髪まで何故か時計の針のように規則的に動き出す。


レン、それをみて。


「なんか不気味!!!!!!」


学生たち。


「速ぇ……」


「無駄が無い……」


「美しい……」


レン。

「いやいやいや怖いだろこれ!」


モズ。


動きながら答える。


「何がだよ」


ガバッ


ピタッ


「めちゃくちゃ効率良いだろ」


ガバッ


ピタッ



「そういう問題じゃねぇ!!!」



「83回!!」



歓声。


モズは勢いよく起き上がる。



「どーよ!」


ニヒッ!

いつものいたずらっぽい子犬みたいな笑顔。


レン。


「急に戻るな!!」


そして。


「大神レン」


……来た。


レン。


仰向けになる。


(どうする)


(どうする俺)


(終わった)


周囲。


期待の目。


「もう次何起こるかワクワクしちゃってる俺がいる」

「俺も」

ザワザワ


……と、騒ぐ学生。


やめろ。


ボイド先生。


「始め!」


ピーーーッ!!


レン、上体を1度だけ起こし、綺麗に固まる。


動かない。


シーン……


学生:

「……?」


モズ:

「ワン公?」


沈黙の時間。

周囲は何が起こっているのか理解出来てない。


レン。


冷や汗ダラダラ。


そして。


真顔で一言。


「もう始めてます、上体起こし」


静寂。


学生:

「「「…………」」」


モズ:

「は???」


レン。


「……速すぎて見えないだけです」


シーン……


レン:

(無理ある!!!!)


学生たち。


ざわっ。


「見えなかった……」


「残像すら無い……」


「認識阻害……?」


レン。


「もう何しても許される感!」


自分でやっといて、

周囲の反応にコソッとツッコミを入れる。


深読みされるの、もう慣れてきた。


ボイド先生。唖然。そして感動。


「な、なんという制御力……」


レン。


「ありがとうございます」


頭下げる。


ボイド先生

「ひえぇ……」


レン:

(なんでだよ)



リゼリア教授。腕を組む。


真顔。


……さすがに騙せないか??


「なるほど」


顎に手を当て、感心している。


「うん、通用しちゃった」


モズ。


レンの顔を覗き込む。


「なぁ」


「なんだよ」


「本当にやってる?」


「やってるやってる、あー疲れてきた」


モズ。


「すげぇ……」


また騙せた。



遠く。


女子会場。


ノン。


芝生の上で肩を震わせている。


「ふふっ……」


「だめぇ……」


「お腹いたい〜……」


完全にバレていた。



結果。


上体起こし。


測定不能。



レン


「ですよねー」


でも乗り切れたようなので、ほっとする。


そして。


最後の種目。反復横跳び。


学生たちは次々。


シュババババ!!


「132回!」


「145回!」


レン

「なんかもう変な記録見ても

驚かなくなってる自分がいる。」


そして。モズの番。



「よっしゃ!」

軽く肩を回す。


「《風よ導け》」


「《空間を刻め》」


「《一歩を最短へ》」


スタート。ピーーーッ!!


シュッ!!


その瞬間。


モズが横へ消えた。


左右。


左右。


左右。


靴裏。


橙色の小さな魔法陣。


パキッ


パキッ


パキッ


空中を踏みながら。


最短距離で移動していく。



シュババババ!!


あまりの速度に。


上半身はほとんど動いていない。


レン

「…………」



目を細める。



「……なんか」



「ん?」



「もはや腰から下しか動いてなく見える……」

と感心。



学生たち。



「おぉぉ……!」


「綺麗な制御だ……!」



レン。

「というか」


さらに目を凝らす。


「足が何本もあるように見える」


モズ。


「は?」


シュババババ!!


レン。


「…………」


間。


「イカ???」


学生:

「「「ブフッ!!!」」」


モズ。


「誰がイカだ!!」



シュババババ!!


「測定中に笑わせんな!!」



ノン。


遠くの女子会場から。


「ふふっ」


「イカさんだ〜」

手を叩きながらなんか喜んでる。


モズ。

「お前まで言うな!!」



だが。


速度は落ちない。


「168回!!」


歓声。


モズ。


ニヒッ。記録を聞いてドヤ顔。



「どーよ」

めっちゃ得意げ。


レン。



「イカだった」



「まだ言うかお前!!」



そして。


「大神レン」


呼ばれる。


レン測定ラインへ。


(どうする)


(終わった)


しかし。


レンはそっとショルダーバッグへ手を入れる。


取り出したのは。


小さなハンディファン。


今日念の為に用意した手品用小道具の一つ。


せっかく持ってきたのにどれも使わんの

勿体ないしな。


誰にも見えないように。


体の陰へ隠す。


(頼むぞ……!)


ボイド先生。


「始め!」


ピーーーッ!!


レン。


動かない。


だが。


ハンディファンだけが静かに回る。


ブゥゥゥ……


ジャージの裾。


髪。


猫耳みたいな癖毛。


ふわふわ揺れる。


シーン……


学生:

「…………今度はなに、なに」



モズ:

「ワン公?」



レン。


真顔。


「速すぎて」


間。


「止まって見えるタイプのやつです」


静寂。


レン:

(さすがに終わった?)


学生:

「…………」


モズ:

「…………」


レン:

(あ、これダメだ)


学生。


「見えない……」


「残像すら無い……」


「無風なのに風吹いてるぞ。

やっぱ動いてるのか…」


レン

無言の笑顔。

(これも違和感持たれないんか)


ボイド先生。拍手。


「す、素晴らしい……!」



モズ。


固まっている。



「……」



「……」



そして。


ぽつり。



「お……俺を超えてきた……」



悔しそう。静かにその場へ崩れ落ちる。



レン。

「超えてねぇよ!!」



モズ。

「だって止まって見えるんだぞ!?」

「俺より動き早いってことじゃんかぁあ」


しっかり騙されてる友人。



しかし、遠く。


ノン。


芝生の上で笑い転げている。


「ふふふっ……!」


「だめぇ……!」


「もう無理ぃ〜!!」



結果。



反復横跳び。


測定不能。



そして。


測定終了。



遠くで様子を見ていたグレイガルド学長。

「やっぱやばいの入学してきおったわ。」


その横でクロード・ヴェインは一枚の記録用紙を見つめていた。



大神レン


50m走:2.42秒


立ち幅跳び:2.84m


ボール投げ:測定不能


上体起こし:測定不能


反復横跳び:測定不能


無言。



深いクマのある灰色の瞳だけが。


その紙を見つめている。



50m走。


異常な記録。



立ち幅跳び。


平凡な記録。



ボール投げ。


観測不能。


上体起こし。


観測不能。


反復横跳び。


観測不能。


一貫性がない。


クロードは右手の中指で、

静かにメガネの位置を整えた。


「……不可解ですね」



魔力核が見当たらず魔力反応もない。


その視線が。


ゆっくりとレンへ向く。


その頃レンは。



「だからなんで全部測定不能なんだよ!!」



モズと騒いでいた。



クロードは静かに目を細める。



「…観測できないのか」


「……隠しているのか」


風が吹く。


白衣の裾が揺れる。


そして。


誰にも聞こえない声で。


「……興味深い」


そう呟き、踵を返した。

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