投げたボールの行方
立ち幅跳びを終えたレンは、
まだ若干砂まみれだった。
「最悪だ……」
ジャージをパンパン叩きながら、
ため息をつく。
その横では。
モズがまだ笑ってる。
「いやぁ〜綺麗に埋まってたなぁ!」
「掘れば住めそうだった」真顔で言うレン。
「住まねぇよ!!」
ノンまで。
「ワン公くん巣穴つくるの上手〜」
「だから犬扱いやめろ!!」
そんなこんなで。
次の種目。
ボール投げ。
グラウンド中央へ、
巨大な測定ラインが引かれている。
だが。
普通のボール投げではない。
学生たちは次々。
「《加速》!!」
「《貫け》!!」
「《旋風》!!」
魔法を込めながら投げていく。
ドォン!!
ゴォォォッ!!
もはや砲撃。
「128m!!」
「154m!!」
「おぉぉぉ!!」
歓声。
数値バグってる。
その横で。
モズ、
ボールをクルクル回していた。
「次ワン公じゃーん」
「軽く言うなぁ……」
レン、
嫌な汗が止まらない。
その時。
女子測定会場側から。
「ノン投手投げまぁーす!」
ゆるい声。
男子側もつられて声のする方を見る。
すると。
ノンが、
両手でボールを持っていた。
「えぇ〜〜い」
めちゃくちゃゆるい。
ふわっとしたフォーム。
なのに。
次の瞬間。
ボォォォォォォッ!!!!
ボールだけ、
とんでもない速度で真上へ吹き飛んだ。
「あっ」
空高く、
一瞬で小さな点になる。
そして。
ゴンッ!!!!!!
学長の結界へ直撃。
空中に巨大な魔法陣が浮かび、
ビリビリと光る。
数秒後。
ヒュゥゥゥゥ……
ボール、
普通に落ちてきた。
ドスン。
地面へ刺さる。
静寂。
ノン、
こてんと首を傾げる。
「戻ってきちゃったぁ」
女子:
「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」
測定係の先生、
震えながら記録を書く。
「……測定不可」
レン:
「測定不可ってあるんだ」
モズ、
腹抱えて笑ってる。
「ワッハハハ!!」
「ノンお前どこまで飛ばす気だったんだよ!!」
ノン、
嬉しそう。
「いっぱい飛んだ〜」
その頃。
男子側。
レンの番が近づいていた。
「大神レン」
呼ばれる。
来た。
レン、
ボール持ちながら固まる。
(終わった)
(どうしろってんだよ)
レン、
冷や汗。
だが。
周囲の期待がやばい。
学生たち。
「今度はどんな魔法を……」
ザワザワヒソヒソ
勝手に盛り上がってる。
やめろ。
レンは静かに深呼吸した。
そしてボールを構える。
(落ち着け……)
(こういう時は……)
(手品だ)
レンは、
投げるフリをした。
シュッ!!
その瞬間。
ボールを、
袖の中へ隠す。
完全手品。
そして。
レンは空を見上げながら。
棒読みで言った。
「ああーーーー」
「目で追えないスピードで飛んでいってしまったァー」
シーン……
静寂。
レン:
(終わった)
その時。
学生:
「……まじかよ、見えなかった」
「今、空間歪まなかったか……?」気のせい。
「無詠唱……?」
ヒソヒソ
レン:
「えっ」
ボイド先生、
半透明になりながら震える。
「な、なんという投擲速度……」
リゼリア教授も、
目を細める。
モズ。
「…………え?」
普通に固まってた。
「いや待て待て待て」
「今どうやった??」
レン:
「えっ」
モズ、
本気で混乱してる。
地面見る。
空見る。
レン見る。
「え、マジで見えんかったんだけど」
レン:
(騙せてる!?!?)
学長、
髭を撫でながら。
「ほぉ〜……」
クロードだけ。
静かだった。
黒縁メガネの奥。
灰色の瞳が、
レンを観察している。
そして。
小さく目を細めた。
ノンは遠くから、
クスクス笑っていた。
「あ、隠した〜」
でも。
誰にも言わない。
結果。
「大神レン」
「……測定不能」
レン:
「なんでだよ!!」




