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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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己を示せ

入学して、

しばらく経った。


「ここはこう繋げる」


「おー……」


「で、この場合は術式崩壊防ぐために補助詠唱入れる」


「なるほど……?」


レンはノートを取りながら頷く。


最近。


座学に関しては、

かなり安定してきていた。


もちろん理由は。


モズ。


同室であり、

毎日のように叩き込まれる基礎知識。


最初は呪文みたいだった内容も、

少しずつ理解できるようになってきた。


講義中も。


「あ、そこ前やったやつだ」


となる瞬間が増えた。


レン、

ちょっと嬉しい。


問題は。


「……実技なんだよなぁ」


昼休み。


机へ突っ伏しながら、

レンは死んだ声を出す。


魔法が使えない。


いや。


正確には。


“自分の魔力”がない。


普通の人間。


だから実技になると、

本当に終わる。


しかも。


困ったことに。


今。


新入生たちの間では、

ある話題で持ちきりだった。


『魔力測定テスト』


人間界で言う、

体力測定みたいなもの。


だが。


月詠版。


つまり。


“魔法でどこまでできるか”

を測定する日。


レン:

「終わった」


完全に終わった。


その日の講義中。


ボイド先生が、

教壇へ立っていた。


「えー、それじゃあ今日は」


「来週行われる魔力測定テストについて説明します」


ザワッ。


教室が少し盛り上がる。


ボイド先生は、

黒いメモ帳を開き。


パラッとページをめくる。


すると。


資料が、

ひらひらと空中へ浮かんだ。


魔法。


紙束が意思を持つみたいに、

学生一人一人の机へ飛んでいく。


レンの元にも、

一枚スッと落ちてきた。


「お、おぉ……」


何回見ても不思議。


レンは恐る恐る資料を見る。


《測定項目》


・ボール投げ

・50m走

・立ち幅跳び

・上体起こし

・反復横跳び


「…………」


レン、

固まる。


「え」


普通。


めちゃくちゃ普通。


人間界と変わらん。


「……なんだ、ちょっと安心――」


そこで気づく。


いや待て。


絶対おかしい。


普通なわけがない。


レンが顔を上げると。


ボイド先生が、

ちょうど説明を始めていた。


「今回の測定は、

グレイガルド学長が展開した特殊結界内で行います」


教室ざわつく。


「そのため、

各々安心して測定に臨みなさい」


ボイド先生は続ける。


「もちろん」


「魔法はどれだけ使っても構いません」


レン:

「やっぱりなぁ!?」


周囲の学生たちは、

むしろ楽しそうだった。


「今年は本気出すか〜」


「ボール投げで校舎超え狙う?」


「結界あるならいけるだろ」


怖い会話しか聞こえない。


その時。


ボイド先生が、

チラッとレンを見る。


「……じ……事件にはならない範囲でだ」


少し半透明になりながら補足。


完全にビビってる。


レン:

「俺限定みたいになってんじゃねぇか……」


ボイド先生、

咳払い。


そして。


急にキリッとした顔になる。


無駄に風が吹いた。


「――己を示せ」


決まった。


教室。


「うおぉぉぉ!!!」


「燃えてきた!!」


「今年こそ記録更新!!」


めちゃくちゃ盛り上がる。


レンだけ冷静。


(……これ面接の時も言ってたな)


(絶対言いたいだけだろ)


ボイド先生、

ちょっとドヤ顔だった。


レンは横を見る。


モズ。


めちゃくちゃニヤニヤしてる。


ノンも楽しそう。


「……なんでそんなテンション高いんだよ」


レンが聞くと。


ノンはふわっと笑った。


「だってぇ」


「学長の結界あるから、

何しても事故起きないって安心感あるし〜」


「全力で魔力出し切れるじゃん?」


レン:

「何をやる気なんだ」


怖い。


モズも笑う。


「久々に本気出せるかもな〜」


「やめろ怖ぇよ」


教壇の上では。


ボイド先生が、

メモ帳を閉じていた。


だが。


その視線は。


やはり時々、

レンへ向いている。


警戒してる。


モズもノンも危険。


でも。


教師陣最大の警戒対象は。


やっぱり。


大神レン。


ボイド先生は、

最後に付け加えた。


「なお当日は」


「グレイガルド学長自ら、

測定へ立ち会います」


レン:

「終わった」


レンは天井を仰ぐ。

完全終了のお知らせ。


魔力測定テスト。


果たして。


レンは無事、

乗り切れるのか――。

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