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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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昨日の男

「はぁーーーーーー……」


朝。


レンの特大ため息が、

廊下に響いていた。


原因。


昨日の夜間侵入。


そして。


壁破壊。


結果。


現在。


「ほら、止まるな」


リゼリア教授の冷たい声。


三人は絶賛ペナルティ中だった。


大量の書類運び。


しかも。


リゼリア教授本人は、

手ぶら。


白衣の裾を揺らしながら、

先頭をスタスタ歩いている。


その後ろを。


ノン、

レン、

モズの順でついていく。


ノンは余裕そうだった。


大量の書類が、

ふわふわ空中に浮いている。


しかも。


本人は。


マグカップ片手に、

優雅に紅茶飲んでる。


「ふぅ〜」


「なんでそんな余裕なんだよ……」


レン、

大量の本抱えてフラフラ。


ノンは首を傾げる。


「ん〜?」


「軽いよぉ?」


「その感覚で言うな!」


一方。


モズ。


「だっっっる……」


死んだ目。


だが。


同時に。


高位詠唱魔法を展開していた。


「《掃け》《拭け》《端までやれ》」


すると。


箒と雑巾が、

勝手に動き出す。


床掃除開始。


しかも妙に手際いい。


レン:

「すげぇ……」


「こういう同時操作が詠唱型の強み〜」


モズ、

ドヤ顔。


その直後。


箒が雑巾へぶつかった。


ピタッ。


沈黙。


そして。


ギギギ……。


互いに向き直る。


「…………」


「…………」


箒と雑巾がメンチ切り始めた。


レン:

「なんで???」


次の瞬間。


バシィン!!


雑巾が箒叩いた。


喧嘩始まった。


「いや自我あるんかぁい!!」


レン、

ツッコミながら、

埃まみれのでっかい書物を抱える。


重い。


死ぬ。


モズ、

ダルそうに片手上げる。


「おーい喧嘩やめろー」


箒:

バシッ!!


雑巾:

ベシッ!!


全然聞かない。


その時。


リゼリア教授が、

スッと視線だけ向けた。


「真面目にやれ」


氷みたいに冷たい声。


瞬間。


箒と雑巾、

ビシィッ!!と静止。


そのまま超高速で掃除再開。


レン:

「いやなんで魔法使ってる本人の言うこと聞かんのにリゼリア教授の言うこと聞くんだよ」


モズ:

「俺も知らん」


完全に上下関係できてた。


そんな中。


レンはふと思い出す。


「……そういやさ」


「んー?」


「昨日の夜の男、

なんだったんだろうな」


その瞬間。


リゼリア教授の足が止まった。


ピクッ。


空気が少し変わる。


「……どんな男だった」


声の温度が低い。


レンとモズ、

顔を見合わせる。


モズが口を開いた。


「暗くてよく見えなかったけど……」


「白衣着てて」


「黒縁メガネ」


「なんか……」


モズ、

少し眉を寄せる。


「めちゃくちゃ嫌な感じした」


ノンも珍しく静かだった。


「目が怖かったなぁ」


リゼリア教授の表情が、

わずかに歪む。


本当に一瞬だけ。


「……何かされたか?」


「いや」


モズが首を振る。


「すぐ逃げたんで」


「……そうか」


短く返す。


でも。


いつもより少しだけ、

声が重かった。


その後。


指定された部屋へ、

大量の荷物を運び終える。


レン、

腕プルプル。


「お、終わった……」


ノン、

紅茶おかわりしてる。


モズ、

床へ転がった。


リゼリア教授は、

静かに振り返る。


「ペナルティはこれで終わりだ」


「解散」


相変わらず無表情。


三人は、

やっと終わったぁ……という顔で歩き出す。


だが。


「待て」


リゼリア教授の声。


三人、

ピタッと止まる。


リゼリア教授は数秒沈黙し。


それから静かに言った。


「……これ以降」


「くれぐれも、夜に昨日の場所には行かないように」


声のトーン。


ガチだった。


レン:

「は、はい……!」


モズ:

「す、すんません……」


ノン:

「ごめんなさ〜い」


三人、

妙に素直。


その後ろで。


箒と雑巾が、

抱き合いながら震えていた。


レン:

「お前らも怖がるんかい」


リゼリア教授、

深いため息。


三人が去っていく。


静かになる部屋。


リゼリア教授は、

懐から一枚の名刺を取り出した。


そこには。


白髪。


黒縁メガネ。


目の下に濃いクマを作った男の顔写真。


リゼリア教授は、

静かにその名刺を見つめた。


「……厄介な事が起こらなければいいのだが」

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