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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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ボイド先生ビビり克服大作戦(前編)

月詠魔法大学・職員室。


昼休み。


ボイド先生は今日も震えていた。


「…………」


ぷるぷる。


書類持つ手が震えてる。


理由。


さっき廊下で、

大神レンとすれ違ったから。


しかも。


「ボイド先生、こんにちは」


って普通に挨拶された。


怖かった。


普通に。


怖かった。


「なんであんな自然に話しかけてくるんだあの子……」


ボソッと呟く。


すると。


近くで書類を整理していたリゼリア教授が、

冷めた目を向けてきた。


「教師だろお前」


「いやだってぇ!!」


ボイド先生、

机をバンッと叩く。


「入学式で大講堂吹き飛ばした子ですよ?!?」


「一部だ」


「一部じゃないよ!!」


半壊してた。


ボイド先生は頭抱える。


「この前なんて廊下で目合っただけで心臓止まるかと思った……」


「死んでるだろお前」


「そういう話じゃないです!!」


職員室の隅で、

グレイガルド学長が肩を震わせていた。


明らかに笑っている。


だが。


ふと誰かの気配を感じた瞬間。


スンッ。


真顔。


背筋ピシッ。


完璧な威厳。


廊下を通りかかった学生たちが、

職員室をチラッと見る。


学長、

静かに頷く。


「励みたまえ」


めちゃくちゃ偉そう。


学生たち:

「はい!!」


去る。


扉閉まる。


数秒沈黙。


学長:

「ブッッ……ふぉっふぉっふぉっ!!」


耐えきれなかった。


「学長ぉ!!!」


ボイド先生悲鳴。


学長、

涙浮かべながら笑ってる。


「いやすまんすまん!!お前がおもしろすぎてのぉ!!」


「笑い事じゃないですってぇ!!」


しかし。


学長は咳払いすると、

またスッと真顔へ戻った。


切り替えが異常。


「……まあしかし」


威厳モード。


「担任として、多少は慣れねばなるまい」


さっきまで笑ってた人と同一人物と思えない。


ボイド先生、

ちょっとムカつく。


すると。


リゼリア教授がふと口を開いた。


「なら克服すればいい」


ボイド:

「……へ?」


数分後。


なぜか職員室の中央に、

ボイド先生が立たされていた。


「よし」


リゼリア教授、

腕組み。


「ビビり克服訓練を始める」


「なんで???」


「今後において必要だからだ。」


グレイガルド学長の前で、ポットとティーカップがカタカタと動く。


紅茶を注ぎ始めるティーポット。


まるで誰かが注いでいるかのようだ。


実際はグレイガルド学長の魔法である。


既に茶菓子まで準備済み。


完全に観戦モードである。


そんな学長の様子を見て、


「他人事だと思って完全に面白がってる…」


と呆れ顔のボイド先生。


「だって実際他人事じゃし〜〜」

「ほれ、励みたまえ励みたまえ〜」


魔法で注いだ紅茶を美味しそうに啜りながら、


もう片方の手をひらひらと動かす学長。


「学生に向けた励みたまえの百倍軽いんですが?」


ボイド先生が即ツッコミを入れる。


そんな様子を全く気にする事もなく

リゼリア教授が、

スッと魔法陣を展開した。


ボイド:

「えっ」


突然始まる訓練に反応が遅れるボイド先生。


空中に、

レンの幻影が現れる。


しかも妙にリアル。


「こんにちは、ボイド先生」


「ひぇっ!!」


ボイド先生、

椅子ごと後退。


ガシャーン!!


学長、

紅茶を吹きかける。


でも。


職員室の外から足音。


スンッ。


学長、

瞬時に真顔。


学生が扉を開ける。


「失礼します」


「……どうした」


重厚。


威厳の塊。


さっきまで笑い転げてたとは思えない。


学生、

ちょっと震えてる。


「書類提出に……」


「置いていけ」


「はい!!」


学生退室。


扉閉まる。


学長:

「カッッッカッカッカ!!!」


「器用すぎません!?!?」


ボイド先生、

ツッコミが追いつかない。


リゼリア教授は淡々と続ける。


「第二段階だ」


「まだやるんですか!?」


今度は。


幻影レンが、

じっとこちらを見るだけ。


何もしない。


ただ。


目が合う。


ボイド:

「…………」


ぷるぷる。


「…………」


ぷるぷるぷる。


「…………」


「なんで見てくるのぉ!?」


限界だった。


両手で顔を覆う。


その時。


ガチャ。


職員室の扉が開く。


「失礼しまーす」


本物のレンだった。


ボイド:

「ひぇっ!!!!また?!」


職員室中に響く悲鳴。


レン、

ビクッ。


「えっ!?…今日初めて職員室きましたけど…」


ボイド先生、

反射的にリゼリア教授の後ろへ隠れる。


完全に小動物。


レン困惑。

「え、俺なんかした……?」


リゼリア教授、

ため息。


「お前のクラスの学生だぞ」


「知ってるけど怖いもんは怖い!!」


「子供か」


学長、

肩震わせてる。


でも。


レンが学長に視線向けた瞬間。


スンッ。


「大神レン」


低く威厳ある声。


「学校生活には慣れたか?」


さっきまで笑ってたのに。


レン、

ちょっと背筋伸びる。


「あ、はい!」


「うむ。励め」


「はい!」


レンがプリントを置き、

去っていく。


扉閉まる。


沈黙。


三秒後。


学長:

「おぬし本当に怖がりすぎじゃ!!!」


「だから笑わないでくださいってぇ!!!」


ボイド先生がレンを怖がらなくなる日は来るのだろうか。

続くーーー

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