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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第1章 ワン公、入学

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なんか変なの入ってきた

入学式終了後。


月詠魔法大学・職員棟。


その最奥にある職員室では――。


「おぉぉぉぉぉバケモノ入学してきおったぁぁぁ!!!」


学長グレイガルドが頭を抱えていた。


さっきまでの威厳どこ行った。


職員室のソファへ崩れ落ち、

白髭をわしゃわしゃしている。


「ワシちゃんと平静保って挨拶できてた!?」

「途中声裏返ってなかった!?」

「大講堂爆発したぞ!?」


リゼリア教授は静かに紅茶を飲んでいた。


「概ね大丈夫でした」


「概ね!?」


「“誠に”のあたりで若干震えていましたね」


「やっぱり!!」


学長、机に突っ伏す。


その横で、

ボイド先生もぐったりしていた。


「……胃が痛い……」


「お主担任じゃろうが!」


「嫌です……」


「今さら!?」


リゼリア教授は、

机上に置かれた魔力記録水晶を見る。


そこには未だ、

淡い桜色の残光。


「……しかし」


リゼリア教授が小さく目を細めた。


「面接での私達の目に狂いはなかったようですね」


ボイド先生:

「……怖いこと言わないでください……」


少し透ける。


学長も真顔へ戻った。


「まさか入学式で大講堂半壊とはのう……」


「新入生ですからね」


「新入生なんじゃよなぁ……?」


学長、遠い目。


リゼリア教授は淡々と分析を続ける。


「魔力制御が極端に不安定」


「基礎も未熟」


「ですが出力だけなら、既に上級生を超えています」


「怖いのう」


「怖いですね」


ボイド先生:

「怖い……」


全員怖がってる。


その時。


パチッ。


水晶から桜色の火花。


「ひぃっ!!」


ボイド先生が椅子ごと飛び上がった。


透ける。


学長:

「驚きすぎじゃ!」


「だ、だってまた爆発するかと……!」


リゼリア教授は小さくため息をついた。


「落ち着いてください」


「リゼリア教授は怖くないんですか……!?」


「怖いですよ」


真顔。


「だからこそ興味深い」


ボイド先生:

「怖ぁ……」


学長は腕を組み直した。


「……まあ、何にせよじゃ」


「これだけの力を放置するわけにもいかん」


リゼリア教授も頷く。


「ええ」


「制御を学ばせる必要があります」


「月詠魔法大学で管理し、指導する以外に方法はないでしょう」


「外で暴走されたらたまったもんじゃないからのう……」


ボイド先生、

嫌そうな顔。


「……私が教えるんですか……」


「担任ですので」


「…………」


「顔に出ています」


「嫌です……」


「聞こえています」


学長はそんなボイド先生を見て、

ふっと笑った。


「まあよい」


「今年も賑やかになりそうじゃ」


リゼリア教授の視線が、

名簿へ落ちる。


大神レン

モズ・スターリング

白羽ノン


沈黙。


「……濃いですね」


「濃いのう」


「胃が痛い……」


ボイド先生がまた机に突っ伏した。


――――――


その頃。


放課後の中庭。


夕暮れ。


空が薄紫色に染まっている。


レンは噴水前で落ち着かない様子で立っていた。


「……来るよな?」


逃げたくなってきた。


完全に。


だが。


「レンく〜ん」


ふわり、と柔らかい声。


振り向く。


ノン。


白っぽい桜色の髪が、

夕陽を受けて淡く光っている。


ノンはいつものように、

のんびり歩いてきた。


「待ったぁ?」


「いや、今来た」


嘘。


めちゃくちゃ待ってた。


ノンはレンの前で立ち止まる。


そして、

じーっとレンを見る。


レン、居心地悪い。


「……なんだよ」


「ん〜」


ノンは少し考えるように首を傾げた。


「やっぱり不思議だなぁって」


レンの心臓が跳ねる。


ノンは続ける。


「レンくんからねぇ」


「魔力が探知できないの」


沈黙。


終わった。


レンの顔が引きつる。


だがノンは、

責めるような顔をしない。


ただ本当に不思議そうだった。


「最初はねぇ」


「他の人に力の大きさ悟られないように、隠してるのかなぁって思ってたの」


「…………」


「でも入学式見て、確信したぁ」


ノンはふにゃっと笑う。


「ほんとに無いんだねぇ」


レン:

「…………」


否定できない。


ノンは噴水の縁へ腰掛ける。


「だから、とりあえずその場凌げるように、私の魔力ちょっと分けたの〜」


“ちょっと”。


あれで。


レンは頭を抱えたくなる。


「いや待って」


「ん〜?」


「他人に魔力渡すとか普通にできんの?」


「普通はできないよぉ」


さらっと言う。


「まあ、他者の魔力が体内に流れてきた時に拒否反応でその人が消滅しちゃうこともあるしねぇ」


レン:

「は?????」


ノン:

「ん?」


「ん?じゃないが!?」


レン、大混乱。


「え!?!?」


「消滅!?!?」


「俺もしかして大学生活楽しむ前に死んでた可能性あったってこと!?!?」


「そうだねぇ〜」


「軽っっっ!!!」


レン、青ざめる。


「いやいやいやいや危なすぎるだろ!?」


「でも大丈夫な気がしたんだぁ」


「感覚でやるな!!!」


ノンはきょとんとしている。


「ほら、実際なんともないでしょ〜?」


結果論。


怖すぎる。


レンは頭を抱えた。


この子、

絶対感覚で生きてる。


ノンは楽しそうに笑う。


「でもびっくりしたぁ」


「……何が」


「レンくん、すっごく魔力通り良かったの」


ドキッとする言い方やめてほしい。


「普通ねぇ、もっと拒絶するんだけど」


「…………」


「レンくん、するする入ってった」


怖い。


レンは少し黙ったあと、

小さく口を開いた。


「……なんで」


「ん〜?」


「なんでそんな危険なことしてまで、俺に魔力くれたんだよ」


ノンは少しだけ目を丸くした。


それから。


イタズラっぽく笑う。


「……今は内緒かなぁ?」


「えぇ……」


ノンは立ち上がる。


夕風が、

桜色の髪を揺らした。


「まあ」


ノンはくるっと振り返る。


「これから仲良くしてよ」


にこっ。


「ワン公くん」


そう言って、

ノンはふわっと笑いながら去っていった。


レンはその背中を見送りながら、

深く息を吐く。


「……バレてるわけでは、ない……のか?」


いや。


どうなんだ。


でも。


少なくとも。


味方っぽいやつができた。


それだけは、

少し嬉しかった。


「……大学生活、濃すぎるだろ……」


レンは頭を抱えた。

ご覧頂きありがとうございます!


次のお話で第1章完結予定です!

ブックマークを登録してお待ちいただけるとありがたいです。

17:30に投稿します。


「面白い!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の励みになります!

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