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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第1章 ワン公、入学

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放課後、話そっか

桜色の花火騒動から数分後。


――なぜか入学式は続行された。


「続けるんだ……」


レンは呆然としながら、半壊した大講堂を見回した。


天井、ちょっと焦げてる。


椅子も数列吹き飛んでる。


瓦礫の陰に隠れてる新入生までいる。


「まだ警戒してる……」

「目合わせるな……」

「桜色だったぞ……」


完全に誤解されている。


レンは頭を抱えた。


「違うんだってぇ……」


モズは隣でまだ若干引いていた。


「いやでも、あれは普通に怖かったぞワン公」


「俺も怖かったわ!!」


その時。


ズゥゥン……。


大講堂中央に、巨大な魔法陣が展開された。


ざわついていた空気が静まる。


学長――グレイガルドが、ゆっくりと壇上へ現れた。


長い白髭。

重厚なローブ。

鋭い眼光。


威厳の塊。


……ただし。


レンを見るたび若干顔が険しくなる。


「…………」


「そんなに見ないでほしい…」


ボイド先生なんか、

後方でめちゃくちゃソワソワしている。


完全に顔に出てる。


リゼリア教授が隣で小声。


「落ち着いてください」


「……お、落ち着いています……」


透けてる。


全然落ち着いてない。


学長は咳払いを一つ。


「諸君。本日は月詠魔法大学への入学、誠に――」


その瞬間。


バチッ。


天井に残っていた桜色の魔力が爆ぜた。


「ひっ」


ボイド先生が飛び上がる。


レン:

「俺のせい!?」


学長は額を押さえながら続けた。


「……誠に、おめでとう」


空気がギリギリ保たれている。


入学式はその後も、

何事もなかったように進んだ。


いや、全然何事もあった。


だが誰も触れない。


誰も。


レンも触れたくない。


ようやく式が終わり、

新入生たちがぞろぞろと立ち上がり始める。


「疲れた……」


レンがぐったり肩を落とす。


モズは知り合いを見つけたらしい。


「あっ、やっべ!」


「?」


「ちょっと先輩たちに挨拶してくるわ!」


「顔広いなお前……」


「大学ってコネ大事だからな!」


モズはそう言って、

人混みの中へ消えていった。


すぐ誰かに囲まれてる。


コミュ力おばけ。


レンは一人、小さく息を吐いた。


そして。


ちらり、と横を見る。


ノン。


少し離れた場所で、

桜色の髪を揺らしながら立っていた。


目が合う。


ノンは、ふわっと微笑んだ。


その笑顔に、

レンは少しだけ肩の力が抜ける。


「あのさ」


「ん〜?」


「……ありがとな」


ノンはぱちぱち瞬きしたあと、

嬉しそうに笑う。


「どういたしましてぇ」


レンは少し迷う。


聞きたいことがあった。


――バレたのか?


俺が人間だって。


でも。


喉まで出かかった言葉を、

レンは飲み込んだ。


「…………」


ノンはそんなレンを見て、

くすっと笑う。


「何か言いたげだねぇ?」


「っ」


図星。


ノンはマグカップを両手で持ちながら、

少しだけレンへ近づいた。


「ここじゃ話しづらいし〜」


周囲ではまだ、

レンを警戒する視線が飛び交っている。


「あのねぇ」


ノンが小声で言う。


「放課後、お話ししよっか」


レンは少しだけ目を見開いた。


でも。


不思議と怖くなかった。


「……うん」


ノンはふにゃっと笑う。


その時。


遠くからモズの声。


「ワン公ーー!!」


レンが振り向く。


モズは上級生たちに囲まれながら、

ぶんぶん手を振っていた。


「あとで飯行こうぜー!!」


「お、おう!」


モズはまだ知らない。


レンとノンの間に、

小さな秘密が生まれたことを。

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