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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第1章 ワン公、入学

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桜色の入学式?

ついに、入学式が始まる――。


新入生たちが次々と移動を始めていた。


だが。


歩いてない。


「……え?」


レンは足を止めた。


空。


みんな空飛んでる。


箒。

魔法陣。

羽。

謎の浮遊生物。


自由。


もしかしてワンチャン飛べたりする?

…なんとなく両手をパタパタさせてみる。

鳥みたいに。


「…いやいやいやいや」


自分で自分にツッコむ。

飛べるわけない。


そんなレンの横。


モズは慣れた様子で、

制服の袖をまくった。


「んじゃ行くか〜」


パチン、と指を鳴らす。


次の瞬間。


ふわっ。


細身の箒が現れた。


黒を基調にしたスタイリッシュなデザイン。


先端に銀色の装飾。


いかにも“乗り慣れてます”感。


レン:

「うわっ!?」


モズ:

「ん?」


「いや普通に出てきたが!?」


「普通だろ?」


普通じゃない。


モズは当然のように箒へ跨った。


そして不思議そうにレンを見る。


「……ワン公、箒出さねぇの?」


終わった。


レン、硬直。


当然持ってない。


そもそも魔法使えない。


「え、えーと……」


どうする。


どうする。


レンは必死に脳を回転させた。


「……デザイン悩んでて」


「ん?」


「まだ買ってない」


沈黙。


レン:

(終わった)


だが。


モズは普通に頷いた。


「あー、なるほど」


通った。


「えっ」


「わかるわ。箒って結構センス出るしな」


「そ、そうそう」


「ワン公絶対こだわるタイプだもんな〜」


助かった。


なぜか助かった。


モズはニッと笑う。


「んじゃ後ろ乗れよ」


「えっ、いいの?」


「落ちんなよ?」


レンは恐る恐る箒の後ろへ跨った。


意外と安定してる。


というか。


「……これ、自転車みたいだな」


次の瞬間。


ふわっ。


体が浮いた。


「うおっ!?」


地面が離れる。


風が吹く。


校舎が小さくなる。


レンの目が、一気に輝いた。


「うわっ……!!」


空。


飛んでる。


本当に。


「すっげぇぇぇ!!」


レン、完全に子供。


モズは後ろをちらっと見て笑う。


「お前ほんと変わったやつだな」


「だ、だって飛んでるぞ!?空!!」


「いや魔法大学だし」


「うわぁぁ……!!」


レンは目を輝かせながら景色を見回した。


空中橋。

浮遊庭園。

遠くの巨大塔。


全部ファンタジー。


「やばい……大学生活ってすげぇ……」


感動ポイントそこなんだ。


モズは少しだけ目を細めた。


最初は、

“危険人物”だと思ってた。


でも。


今後ろで騒いでるのは、

ただ空飛んで喜んでる男子高校生みたいなやつ。


「……やっぱ変だわ」


「何が!?」


「全部」


そんな話をしているうちに、

巨大な建物が見えてきた。


月詠魔法大学・中央大講堂。


城みたいだった。


いや、もはや神殿。


空中に浮かぶ巨大階段。


無数の光。


レン、ぽかん。


「……入学式ってレベルじゃねぇ」


モズ:

「まあ月詠だし」


スケール感が終わってる。


大講堂へ降り立つと、

すでに新入生たちが集まっていた。


その中心では、

小さな魔法演出が始まっている。


火花。

氷結晶。

光球。


みんな、

軽く魔法を披露している。


モズが言う。


「新入生歓迎の恒例行事」


「えっ」


「簡単な魔法出すだけだって」


終わった。


レンの顔から血の気が引く。


「無理だが?」


「ん?」


「いや……」


その時。


隣から、そっと袖を引かれた。


振り向く。


ノン。


ふわふわの桜色の髪が、

風に揺れている。


ノンは周囲に聞こえないよう、

そっとレンへ顔を寄せた。


「……困ってる〜?」


耳元で、小さな声。


近い。


レンの肩が跳ねる。


「っ!?」


ノンは眠そうに笑っている。


でもその目だけ、

ちゃんとレンを見ていた。


「だいじょぶだよぉ」


周囲に気づかれないよう、

ノンがそっとレンの手へ触れる。


「ちょっとだけ貸してあげるねぇ」


次の瞬間。


淡い桜色の光。


ノンの魔力が、

静かにレンの中へ流れ込む。


ドクン。


レンの心臓が跳ねた。


「っ……!?」


熱い。


温かい。


全身に、

何かが巡っていく。


ノンが耳元で囁く。


「そのまま出してみてぇ」


「だ、出すってどうやって!?」


「ん〜、ぽんって感じ〜」


説明が雑。


レンは混乱しながら、

とりあえず手を前へ出した。


その瞬間。


レンの瞳が、

淡い桜色に染まる。


ノンが少しだけ目を丸くした。


「……きれい」


そして。


ボッ。


小さな火花。


……のはずだった。


次の瞬間。


ドォォォォォン!!!!!!


巨大な桜色の花火が、

大講堂の天井いっぱいに炸裂した。


「「「!!???」」」


講堂全体が揺れる。


光。


桜吹雪みたいな魔力残光。


新入生、絶叫。


上級生、騒然。


モズ:

「はぁぁぁぁ!?」


レン:

「えぇぇぇぇぇ!!??」


ノン:

「わぁ〜」


完全に他人事。


花火は止まらない。


バババババン!!!


空中で桜色の爆発が連続する。


もはや祝砲。


レン:

「止め方分からん!!!」


モズ:

「ワン公ぉおおお!?お前何したんだよ!?」


レン:

「俺が聞きたいんだが!!!」


入学早々の大事件だった。

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