無視出来ません
「前回の探索者試験……彼女は惜しくも失敗していたな。パーティーを組む事は悪くないが、ああいう奴等には先がない。君が彼女と組んでくれた事にも感謝する」
「ラビの事も覚えているんですか!? それに……応援してくれてるんですね」
顎髭はラビの事も覚えているようだ。しかも、獣人を毛嫌いしておらず、心配している節もあるぞ。前回の試験の出来事を把握しているのか?
「……そういうわけじゃない。彼女の邪魔をして、落ちた奴も今回の試験を受けるからな。ソイツの仲間は別のメンバーを見つけて、低級のダンジョン攻略をしている。つまり、見限られたわけだ。彼女が参加する事を知れば」
「……邪魔をしてしますよね」
サマナでもそう思うわけだ。確実に邪魔をしてくるだろうな。戦闘じゃなく、罠を仕掛けてくる。でなければ、探索者試験を失格扱いになる。
それが知れただけでもありがたい。こっちも迂闊に手を出せないわけだがな。
その前に受付が……顎髭は他の候補者の情報をサマナに教えていいのかよ。嫌っていたとしてもだぞ。
「協力する者もいれば、邪魔をする奴もいる。その対策をするのも探索者試験の一環だ。情報を渡すのもそれに該当するからな。それに……お前達だけじゃなく、奴等も気付いたようだぞ」
顎髭の視線はサマナからラビがいる場所へ……出入口へと向けられる。サマナも自然と視線を追って、振り返る。
俺様の目には二人組の奴等がラビに突っ掛かるのが分かる。
ラビも無視すると言ってたが、そうする事も無理な状況だな。顎髭が奴等と言ったのも、丁度ギルドに入ってきたからだな。
しかも、新たに仲間を増やしたわけだ。
ここはラビを無視して、仲間だとバレないようにする手もある。あっちはラビがソロだと勘違いしたところを罠に嵌めるのも手ではあるが、サマナならラビを助けに行くはず……
「おい……どうしたんだ?」
「えっ!! あっ……そうですね」
近くに顎髭がいる。声が聴こえる可能性を考えて、最小限の言葉にしたが、サマナには伝わるはず。
とはいえだ。サマナは前回の探索者試験でラビを邪魔した相手を許せなかったはず。
そいつらがラビに突っ掛かってるんだ。俺様が言うまでもなく、助けに行くと思ったぞ。
「あ、あの!! や、止めてください」
サマナは帽子を深く被り、恐る恐るラビ達に近寄り、声を掛ける。
「サマナ!? 無視してくれても良かったのに」
「何だ!? 人間のくせに獣人の肩を持つのかよ」
二人組はラビからサマナに視線を移動させた。
悪ガキ二人。サマナやラビと年齢が近そうだ。顎髭のような迫力は感じられない。
一人は邪魔してきた事に腹を立てた顔を向けているのだが、もう一人はサマナの姿を見て、驚いた顔をしている。
「サマナ? もしかして……ボッチじゃないか?」




