逃げますよ
「おい!! 今近寄るのは危険だぞ」
「でも!! そうしないと助けられないかもしれません」
サマナは我を忘れて、動けなくなったラビを助けるために走る。
黄色のパイソンは動けなくなったラビを餌にするために動く様子はないようだ。
「えっ!! こっちのパイソンは動いていますよ。それなのに」
毒パイソンは脱皮のため、まだ蠢いているのをキララは見ている。脱皮後、麻痺パイソンになったわけじゃない。
「パイソンの総数は二匹。さっきのは威嚇は仲間を呼ぶためだったのか」
戦況的には最悪だ。脱皮が終われば、パイソン二匹を相手にしなければならなくなるぞ。
逃げるにしても、ラビは麻痺。サマナも置いて行こうとしないだろう。トムもあの場から動けないだろう。
キララとチェリオの二人で何とかするのも無理だ。逆に二人だけが逃げてもおかしくない状況だ。
「キララ!! ラビさんをサマナさんと一緒に運んでくれ。僕が奴の気を引くから。そっちの奴は自力でどうにかしろ」
チェリオはサマナを、俺様達を見捨てるつもりはないようだ。トムに関しては仕方ない。逃げる隙を与えてやるだけで十分のはずだ。
「だったら、サマナはもう一度【アクアミスト】を使え。対象は黄色のパイソンに……」
「チェリオ!! こっちのパイソンに紫色の肌が見えてきました。だけど……」
キララからの最悪の報告。一匹が動かなくなった状態なら、逃げる隙があったものの、その僅かな望みも無くなったのか……
探索者試験で死ぬ事はない。試験官はそう言っていた。助けに入る事になるのだろうが、どのタイミングかによる。
下手すれば、チェリオとキララも巻き込まれる可能性もある。
死ぬよりマシだが、それでも何とか出来ないものか。
いや……強力な魔法を無理矢理使わせれば……駄目だ。サマナがその後動かなくなったら、探索者試験は不合格になる。結果は同じだ。
「逃げるみたいです」
「逃げる!! 一体誰が……」
トムじゃない。脱皮を終えたパイソンが頭と尻尾の位置が逆になり、黄色のパイソンの元へ移動し始めている。
それもサマナやラビに目を向けていない。その代わり、黄色のパイソンがチェリオを見張るように見ている。逃げようとするパイソンに攻擊させないかのようだ。
「……番か? 脱皮直後は弱くなり、それを助けに来た? なら、攻擊は止めるべきです」
チェリオはサマナ達に聞こえるぐらいの声を発した。
狩人としての知識なら、俺様よりもチェリオを信じた方が良い。




