↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Myosotis 〜すべてを忘れるために〜  作者: こんにゃくミ(こんにゃイカ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/68

欠けた記憶

挿絵(By みてみん)

――数時間後。


「教会の中で、多数の人が倒れているとの通報です!」


 通報を受け、救急隊と警察が教会へ派遣された。


 扉を開けた救急隊員たちは、目の前の光景に息を呑んだ。


 教会の床には、自衛隊員を含む大勢の人々が倒れていた。


 誰もが意識を失っている。


 外傷は見当たらない。


 しかし、呼びかけに反応する者はほとんどいなかった。


「生存確認! 意識のある人から搬送する!」


 救急隊員たちは、倒れている人々を一人ずつ確認し、担架へ乗せていった。


 しばらくして、最初に正樹が意識を取り戻した。


「ここは……どこだ?」


「教会です。あなたは、ここで倒れていたんですよ」


「俺が……?」


 正樹は周囲を見回した。


「なぜ俺は、ここにいる?」


 救急隊員は、困惑した表情を浮かべた。


「それは、こちらが聞きたいことです。何があったのか、覚えていますか?」


 正樹は、しばらく黙り込んだ。


 やがて、首を横に振る。


「覚えている。私は部下たちを率いて、ここへ来た。だが、その後のことが途切れている」


 同じ頃、祐希も目を覚ました。


「蓮次は……?」


 彼女は、周囲を見回しながら呟いた。


「蓮次……? 誰のことですか?」


 救急隊員が尋ねると、祐希は自分でも分からないというように眉を寄せた。


「分からない……いや、違う。俺は知っている。蓮次は、俺が……」


 言葉の途中で、祐希は口を閉ざした。


 教会の外では、救急車のサイレンが鳴り続けていた。


 千咲、俺、律、狂介、そして残っていた自衛隊員たち、地下で監禁されていた一ノ瀬、千鶴は、次々と病院へ搬送されていく。


 担架の上で、俺は薄れゆく意識の中、隣の担架に乗せられた千咲を見た。


 彼女は目を閉じていた。


 その顔を見ても、俺の胸に何かが込み上げる理由は分かっている。


 俺たちは、互いを守ろうとしていた。


 俺は、かすかに手を伸ばした。


 千咲の指先に触れる。


 彼女も、わずかに指を動かした。


 その温もりを確かめたところで、意識は再び闇へと沈んでいった。


 *


 検査の結果、全員に目立った外傷はなかった。


 しかし、誰一人として、教会で何が起きたのかを完全には説明できなかった。


 みんな、口を揃えて同じことを言った。


「記憶はある。だが、あの光の後から、ところどころが途切れている」


 不老不死の研究。


 そのために起こした行動。


 悟と蓮次、そして五人の少年少女にまつわる過去。


 それらは、誰の中からも完全に消えてはいなかった。


 ただ、記憶の一部だけが、まるで意図的に切り取られたように欠けていた。


 記憶を失ったのか。


 何者かに操られていたのか。


 それとも、あの光が記憶の一部だけを奪ったのか。


祐希の元へ警察官が近づいてきた。


「あなたは、祐希さんですね?」


「……はい」


「風見蓮次さんの死亡について、いくつか確認したいことがあります」


 祐希の顔から、血の気が引いた。


「死亡……?」


「あなたには、蓮次さんを殺害した容疑がかかっています。詳しい事情を聞くため、署まで同行してください」


「俺が……殺した?」


 祐希は、呆然と自分の手を見つめた。


「覚えています。俺が彼を撃ったことも、その理由も……でも、どうしてあんなことをしたのか、まだ整理できていません」


「それでも、任意で事情を聞かせてもらいます」


 警察官は、祐希を連行した。


 その直後、正樹のもとにも別の警察官が近づいた。


「正樹さん。あなたにも、確認したいことがあります」


「私に?」


「あなたの部下が殺害された事件について、あなたに殺人容疑がかかっています」


 正樹は、目を見開いた。


「部下が……殺された?」


「詳しいことは署でお話しします。同行してください」


「待て。私は何も覚えていない」


「その点も含めて、捜査を行います」


「いや、覚えている。私は、部下たちを守るために命令を出した。だが、その命令が結果的に彼らを死なせた」


 正樹もまた、警察官に連行されていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。