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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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ラルフ様の日常

 王宮の朝は早い。

朝陽が差し込む中、目を覚ました。


 目を開けると隣にラルフ様の姿はなく、俺が起きるより早く起きて、すでに着替えて本を読んでいた。


 俺が起きたのを確認すると、鏡を見ながら青い髪を優雅に梳かしていた。

ドレスはシンプルだが、王女らしい気品が漂う。


 俺は急いで起きて、慌てて準備を始める。


 流石に疲労が溜まっていたのだろう。

かなりぐっすりと眠ってしまっていた。


「す、すみません…ぐっすり寝過ぎました」

「お疲れでしたでしょうし、起こすのも悪いと思ってそのままにしていたのは私の方ですから。それに可愛い寝顔でしたよ?」と、またしても朝から揶揄われる。


 俺の中での仕事はラルフ様の護衛役であり、客人として招かれているわけではない。

こんなところを他の人に見られたら…と、明後日準備をする。


 そうして、用意された執事の服に袖を通したところで、部屋のドアをノックされる。


 分身はまだあそこに居るが…人は居ないようだし、誰かが来た形跡もないな…よし…。と、分身を解除する。


 すると、昨日俺をあのボロ部屋に案内したメイドさんがそこに立っていた。


 俺は執事らしくビシッと立った。

すると、メイドさんがこちらを睨みつけながら呟く。


「…来ていたのですね。もし、この段階でここに居ないようなら、護衛としての仕事が果たせないと判断し、即座にこの屋敷を追い出しますので」

「も、もちろんです」

「…その髪はセットですか?」


 横にある鏡を見るとめちゃくちゃ寝癖がついていた。

 

「あっ…これは…」

「さっさと直してください。そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はこの屋敷でラルフ様の専属メイドであり、メイド長のルビル=アルシアと申します。あなたが男爵家の息子であることは知っておりますが、この城の中では私の部下となること肝に銘じてください」と言われた。


 黒髪ロングヘアで黒い目、目つきはかなり悪く、こちらに嫌悪感をバシバシ飛ばしてくる。


 おっかねー人が上司になったーと思いながら、なんとか笑みを浮かべる。


「よ、よろしくお願いします…」


 すると、ラルフ様が割って入ってくる。


「そのあなたも私のメイドですから、そのことはお忘れずに」と、にっこりと笑顔を浮かべながらそう言った。


 女社会こえー。


「では、リグゼ様」というと、「執事に様は不要です」と、さらに割り込むルビルさん。


「そうね…リグゼ、今日は城下町へ散策に行きましょう…じゃなくて、行くわ。私のの日常を見せておくわね。護衛のあなたにも、街の様子を知っておいてもらわないといけないから」

「わかりました。では、危険がないよう警戒します」

「では、そういうことですので。部屋の掃除をお願いするわ、ルビル」

「…かしこまりました」


 そうして、二人で王宮を出るのだった。



 ◇


 城下町には馬車ではなく、歩きで行くことに。

ラルフ様は時折、俺の腕を取って歩く。

護衛とはいえ、思わずドキドキしてしまう。


 城下町は活気にあふれていた。

石畳の通りを歩く商人たち、市場の賑わい、魔法の灯りが街を彩る。

ラルフ様が歩くと、すぐに人々が気づく。


「ラルフ様! おはようございます!」


 パン屋の店主が手を振り、ラルフ様は笑顔で応える。


「今日は良い天気ですね。いつものパンを一つください」


 彼女は財布を取り出し、パンを買う。

店主は恐縮しながら、「王女様に買っていただくなんて光栄です」と頭を下げる。


「ここのパンはすごく美味しいんですよ?」と、その買ったパンを席に座って2人で食べる。


 確かにめちゃくちゃ美味しかった。


「確かに…これはなかなかにうまいですね」

「ですよね。ここはおすすめです」と話していると、店主が「そっちのあんちゃんは何者ですか?」と、聞かれる。


「この方は私の新しい護衛の方になります」

「ほぉー、護衛ですか。この前の一件もありますし、あんちゃんには頑張ってもらわないと…」と、パンをサービスされる。


「ありがとうございます」

「いいってことよ!」


 そんな会話をしていると、子供たちが駆け寄ってきた。


「ラルフ様だ!遊んでー!」と、やってくる。


 ラルフ様はしゃがみ込み、子供たちの頭を撫でる。


「あー、ミクくんにユリアくん。はい、これパンあげるー」

「ありがとうございます!」と、無邪気に笑う。


 そして、ジーと俺を見つめる。


「あっ、今日は護衛のお兄さんがいるの。みんな、この人がリグゼ様。私の大切な護衛さんだから、よろしくね」


 子供たちは俺を見て、目を輝かせる。


「ラルフ様を守ってくださいね!!」


 俺は苦笑しながら、頷く。

ラルフ様は国民から本当に愛されている。

彼女の自由気ままな性格が、民の生活に溶け込んでいるんだろう。


 それからまた歩いていると、次に、花屋の前で止まる。

老婆がラルフ様に花を差し出す。


「王女様、いつも街を明るくしてくださってありがとうございます。この花をどうぞ」


 ラルフ様は受け取り、「こちらこそありがとうございます」とお礼をする。


 そう言いながら、悪戯っぽくウィンクしてくる。


「今度はリグゼ様も花をくださいね?」と言われた。


 城下町を歩いてて分かった。

彼女は王女なのに、街のアイドルみたいな存在だであることを。


 散策を続け、市場の中心部へ。

果物屋や服屋を回り、ラルフ様はあちこちで声をかけられる。


 すると、ふとある気配に気づいた。

ラルフ様の後ろに、怪しい影。

小柄な少年が、こそこそと近づいていることに。


 刺客?

子供を使って油断させるつもりなのか。


 すると、その子供は一気に距離を詰めてくると、ラルフ様に手を伸ばす。


 目的は…財布?

てことはスリか。


 俺は素早く動き、少年の腕を掴んだ。


「ぐっ! 離せよ!」


 少年は抵抗するが、ガッチリ掴んでいるため離れない。

すると、ラルフ様が振り向き、驚いた顔をする。


「リグゼ様? あ、この子……」


 少年は10歳前後くらい。

ボロボロの服を着て、顔も煤で汚れている。


 てっきり刺客かと思ったが、ただのスリの少年のようだった。


「ラルフ様の財布を狙ってました。どうしますか?」


 ラルフ様は少年を見て、ため息をつく。


「またあなたね……前に注意したのに」


 どうやら知り合い? 少年は観念したように頭を下げた。


「…ごめんなさい…」


 ラルフ様は優しく微笑み、財布から小銭を出して少年に渡す。


「これでパンを買いなさい。でも、次は働いて稼ぐのよ?」

「…うん」


 まったく…甘いな。

きっとこの子は次も同じ事をするだろう。

まぁ、ラルフ様の優しさが、国民に愛される理由なんだろうが。


 その後、ラルフ様は俺の腕に寄りかかり、耳元で囁く。


「リグゼ様、かっこよかったですよ……。あとでご褒美にキスしてあげますね//」


 彼女の青い瞳が悪戯っぽく輝く。


「…楽しみにしておきます」

「…はい」と、ラルフ様はくすくす笑い、キス寸前まで顔を近づけてから離れるのであった。


 それから一日中散策をしてから王宮に戻るのであった。



 ◇


 王宮に戻った夕方、俺はラルフ様に城の中を案内してもらっていた。


 その道中、王がラルフ様を呼び、俺は不要と言われてしまったため、1人で城の中を散策していた。


 すると、後ろから声がした。


「リグゼ様、でしたわね?」


 振り向くと、そこに長女のエルザが立っていた。


 金髪を優雅に揺らし、赤いドレスが彼女のスタイルを強調する。

冷たい赤い瞳が、俺を値踏みするように見つめる。


「少しお話してもいいかしら?」


 彼女の微笑みは妖艶で、甘い香りが漂う。

色仕掛け…か?

俺は警戒を強め、丁寧に答える。


「エルザ様、何かご用件でしょうか?」


 エルザは近づき、俺の肩に軽く触れる。


「ふふ、緊張しないで。この前の戦いをみてあなたに興味を持ったの。私の部屋で話をしましょう?」


 その言葉に、背筋が寒くなる。

陰謀の影が、すぐそこに迫っていた。

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