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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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王女様の生活

 俺は割り当てられた部屋——というか、物置小屋のようなボロボロの空間を、ため息をつきながら掃除していた。


 埃が積もった棚、蜘蛛の巣が張った天井、ベッドは古びてカビ臭い。


 ま、こういうことになるのはなんとなく予想通りだったけどな。

招かれざる客だもんな。


 そうして、箒で床を払っていると、突然ドアがノックされた。

誰だ?と思っていると、そこに立っていたのはパジャマ姿のラルフ様だった。


 青い髪を緩く結び、薄い生地の寝間着が彼女の豊かな体型を柔らかく包んでいる。


 足元はスリッパで、頰が少し赤らんでいるように見える。


「リグゼ様……あの、やっぱりあなたをこんなところには置いておけません……。その……私の部屋に行きましょう」


 彼女の言葉に、俺は目を丸くした。

王女の部屋に?

それはまずいだろ。


「え、でも……護衛とはいえ、部屋に男を連れ込むのは……」

「大丈夫です。誰も知らないようにしますから」


 ラルフ様の青い瞳が、真剣に俺を見つめる。拒否しにくい雰囲気だ。

仕方ない……。


「わかりました。でも、念のため、分身を一体ここに置いておきます。あと、透明化魔法も使って、誰にも気づかれないように」


 俺は分身魔法を発動させ、偽の自分をベッドに寝かせた。


 さらに、透明化の魔法を二人にかけ、王宮の廊下を抜けて彼女の部屋へ向かった。


 そうして入ったラルフ様の部屋は、豪華だった。


 絨毯が敷かれ、大きなベッド、天井から吊るされたシャンデリア。

窓からは王都の夜景が見渡せ、優雅な香りが漂う。


「ここなら、ゆっくり休めますよ。……部屋にお風呂もありますので、良かったらどうぞ」


 確かに連日の移動でかなり体が汚れていた。

道中で軽く水浴びをした程度だったし、ゆっくり浸かりたい気持ちもある。


 というか、部屋の中にお風呂までついてるとは……王女の生活レベル、恐るべし。


「では、お言葉に甘えます」


 俺はバスルームに入る。

それから、とりあえずと思って頭を洗っていると、泡だらけの状態で、突然扉が開く音がした。


 チラッと横を見ると、タオルを体に巻いたラルフ様が入ってきていた。

白い肌が露わで、青い髪が湿気で少し湿っている。


「ちょっ!?//」


 俺は慌ててあそこを隠す。

しかし、ラルフ様は頰を赤らめながら、俺の股間の場所をガン見してくる。


「お、お背中……流します……//」

「あの、大丈夫っす! ベッドで待っててください!」

「べべべベッドですか!?// そそそそ、そうですよね……// わ、分かりました……//」


 口から出た言葉が、なんか含みがあるような言い方になってしまった。

後悔する俺を残して、ラルフ様は慌てて出て行った。


 ……はぁ。

ゆっくり浸かりながら、今後のことを考える。ラルフ様の護衛として、この王宮で生き抜く…か。

これまでとは比べ物にならないほどのハードモードな人生だな。


 そんなことを考えながら、子供のように湯船に顔まで浸かり、ブクブクさせた。


 それから風呂を上がると、ベッドの上でラルフ様がソワソワしている。


「あーえっと……誤解させてしまったらすみません。そういうことはしないですよ?」と、ひとまず俺は謝った。


 俺の言葉に、ラルフ様は目を丸くする。


「……つ、つまり…き、キッスは……しないということでしょうか?」

「……え?キッス?」

「はい……// 子供はその……キッスしたら……コウノトリさんが運んできてくれるんですよね……?//」


 うわー、ピュア〜。

大国の性の教育はどうなってんだよ……。

いや、ここは異世界……もしかして、本当にコウノトリが運んで……いやいや、俺普通にシコったら精子出てたし。


「えっとー、違いますね」

「え!? で、でも……絵本だとそうだって……」

「あれはおとぎ話ですから……」

「じゃ、じゃあ……! どうするんですか!?」と、顔を近づけてくる。


 それから、子供ができる仕組みについて、なるべくオブラートに包んで解説する。


 だけど、ラルフ様は「?」という表情を浮かべる。


「えっとー、わかった。その俺のこれとラルフ様のそれをがっちゃんこするんです//」


 照れながらスーパーストレートに言い放ってみた。


 すると、ラルフ様は少し悪い笑みを浮かべてから、「知ってますよ?セックスですよね?ちょっとからかってみたくて……」とそんなことを言ってきた。


「…勘弁してくださいよ…//」

「それでしないんですか?セックス」と、揶揄うような、煽るような顔をしてきた。


 なので、そのままベッドに押し倒して、両手を押さえる。


「…!!//」と、目を閉じるラルフ様。


「…冗談ですよ?」と、俺がパッと手を離すと「…意地悪ですね…//」と、髪をいじりながらそんなことを言ってくるのだった。


 


 ◇


 王宮の食堂。

夜の帳が下りた頃、国王ヘンリック=クラムと、長女エルザ、次女ミリアの三人が、食事を囲んでいた。


 テーブルにはローストビーフや新鮮な野菜のサラダ、ワインが並び、燭台の炎が部屋を柔らかく照らす。


 重厚な雰囲気の部屋で、三人は静かにフォークを動かしていたが、話題は自然と軍事の話から始まった。


「父上、周辺国の小国制圧についてですが……そろそろ本腰を入れるべきですわ。クラム王国の軍事力が優位な今、躊躇する理由はありません。他国が協力しあって対抗される前に属国にするべきかと」


 エルザが、金髪を優雅に払いながら言った。冷たく赤い瞳が、国王を見つめる。


 国王は髭を撫で、頷いた。


「うむ。確かに大国戦争が近づいているのは間違いない。それまでにまずは周辺の小国を併合し、資源と兵力を増強せねばならん。まずはヴァルドの騎士団を動員し、まずは東の小国、ベルド領から攻め落とす。魔法師団も投入し、迅速に決着をつけろ」


 ミリアは赤髪を弄びながら、ワインを一口飲んでから、言葉を挟む。


「ベルド領のマナ鉱山は魅力的ですよね。制圧すれば、魔法兵器の生産が倍増するでしょうし、抵抗勢力は根絶やしにできる。それと平民の反乱を防ぐため、事前の工作も忘れずに」


 国王は満足げに笑った。


「そうだな、今回の戦争はお前らに任せることにする。ヴァルドも自由に使っていい。これからのためにお前らも実践を積むといい」


 それから、作戦のタイムラインや兵力配分を議論した。

ローストビーフが冷めていく中、部屋に緊張感が漂う。


 食事が終わりかけた頃、国王が話題を変えた。


「さて……ラルフとあの護衛の処分についてだが。あの三男坊、リグゼとかいう男。ヴァルドと互角に渡り合ったというが色々と匂うからな。小細工はあのラルフには通用せんし、さてどうしたものか…」


 すると、エルザがフォークを置き、ニヤッと笑った。


「あの男は、私が色仕掛けで堕としますわ。心を掴んで、こちら側に引き込めば、ラルフの弱点にもなる。父上、ご心配なく」


 ミリアがくすりと笑い、国王は頷いた。

部屋に陰謀の影が濃くなる中、夜は更けていった。

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