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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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会合

 ロエナと別れてから、シュナと2人で廊下を歩いていた。


 ついさっきまで感じていた気配が、嘘みたいに消えていた。


 姿を消すのが上手い…というのが更に容疑者への確率を上げた。


「…さて、どうしたもんかな」


 小さく声を落として言うと、隣にいたシュナがこちらを見る


「…魔力の跡をつけましたよね?」と言われた。


 流石はシュナ、気づいていたか。


 先ほどの会話のタイミングで目に見えない程度小さな魔力を飛ばしていた。


 自らの魔力をGPS代わりにしていたのだ。


 それから、一定の距離をとってから、自分の魔力を感知する。


 そうして、少し時間が経過したのちに、目を閉じてその場所に互いに足音を殺し、呼吸すら抑えるようにして、廊下を進む。


『自分の魔力を付着させてそれを追うなんて、随分と器用な真似ができるじゃねーかw』とか楽しそうに笑うラプラス。


 うるさいと、一喝しつつ目を閉じながらたどり着いたのはとある一つの教室であった。


 確か元オカルト研究会だかの部室で今は使われていない。


 扉を耳をつけて音を聞こうとしたが、無音だけが広がっていた。


 声が聞こえない?


『……クックック。こりゃ相手の方が上手みたいだ』


 まさか…。


 そうして、扉を開けるとそこには何もない部室が広がっていた。


「……は?」


 思わず声が漏れる。


「……消えた?」


 壁に手を当てながら、魔力の痕跡を探る。

だが、感じ取れるものは何もない。

異様なほどに、綺麗だった。


「……いいえ」


 隣でシュナが静かに言う。


「……これは“消えた”のではなく……撒かれたということなのでしょう」


『最初からお前がつけた痕跡にすら気づいてたとは…相当やるな』と、ラプラスが、面白そうに笑う。


 確かに…色々と考えを改めないといけないかもな。



 ◇翌日


 実践訓練場に集められていた。


 しかも、授業ではなく放課後、校長のマイを受けてここにきていたのだが…。

いつものざわめきとは少し違う、張り詰めた空気が漂っていた。


 理由は単純だ。

普段なら揃うことのない面子が、一箇所に集まっているからだ。


「あー、誰かと思えば例の教師やんけ。よろしゅーなー」と、だいぶ舐めた感じ目で見ていた。


 緑髪のギャルな少女が舌を出しながら、こちらを見ている。

彼女のそばにはいろんな魔装具が置いてあった。


「えっと…セリス・ヴァルディアさん…ですよね?……よろしくお願いします」


 軽く名乗ったその瞬間、一瞬で目の前までやってきて、手を差し出す。


 ——速い


 多分、今までの俺であればその動きに慣れるまで時間がかかったかもしれないが、どんなに早くても今の俺には未来が見えるのだ。


 そのまま、すっと手を差し出すと、動きについてきたことに驚いた顔をするセリス。


「今の、見えてたん?えーぐぅ。噂以上じゃん」と、楽しそうに笑う。


 すると、その様子を見ていた大柄な男が、一歩前に出る。


「グラン・ディルクだ!よろしくな!」と、テンション高くそう言われた。


 赤髪リーゼントで筋肉隆々なその見た目。

違う意味でバケモノだなとおもっていると、地面を踏み込んだ足が、石畳を軋ませる。

そのまま一直線に拳が飛んできた。


「お手合わせ願う!!」


 余計な動きはない。

ただ、純粋に“速くて重い”。


 だが——


「……いいな」と、さっと真正面から受けることはせず、わずかに角度をずらす。

拳の軌道に沿うように腕を添え、力を流す。


 そのまま、体勢を崩させる。

グランの体がわずかに傾いた。


「おう!今のをかわすか!ここにいる資格はあるようだな!」と、楽しそうに笑う。


「そりゃどうも」


 その目が、明らかに楽しそうに細められる。


 ——その時だった。


『来るぞ』


 ラプラスの声が、ほんの少しだけ低くなる。

同時に、空気の“質”が変わった。


 さっきまでの訓練場の空気とは違う。

何かが、外側から侵食してくるような感覚。


 視線を向ける。

セリスのすぐ横。

何もなかったはずの空間が、ゆっくりと歪み始める。


 水面に石を落としたように、波紋が広がる。

その中心から——


「……ふふ」


 聞き覚えのある声が、静かに響いた。

歪みの中から、すっと一歩踏み出してくる。


 ロエナだった。

まるで最初からそこにいたかのように、自然な動作で地面に降り立つ。


「やっぱり、ここにいましたか」


 穏やかな口調。

だが、その瞳は——明らかに“違う”。


 温度がない。

いや、それどころか、底の方に何か別のものが蠢いているように思えた。


「……ロエナ」


 シュナの声が低くなる。

わずかに前へ出るその動きには、明確な警戒が滲んでいた。


「あらあら、私抜きで会合を開こうとするなんて、先輩そういうのはよくないと思いますよ」と、全てわかっているかのように微笑みながら、小さく首を傾げる。


「…そういうつもりではなかったけれど。まぁ、いいわ。それじゃあ、話し合いましょう。先日の学内に侵入してきたものについての話を」


 こうして、俺と五傑の話し合いが始まるのであった。

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