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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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学園五傑

 校長室を出た後、石畳の廊下を歩きながら、俺は小さく息を吐く。


「……すり抜け、か」


 結界を破ったわけじゃない。

ほとんどを“通過”した…。


 あの校長が貼った結界をあっさりと。


『俺と同じ悪魔の仕業だろうな。だとしても、あの結界なら外からじゃー無理だな』


 ラプラスが淡々と言う。


『少なくとも、あの規模の結界ならな。構造を知らなきゃ通れねぇ』

「……だよな」


 つまり——


「内部に協力者がいる」


 その結論は、驚くほどあっさりと出た。

隣を歩くシュナが、わずかに視線を向ける。


「……同意見です」


 やっぱり、そうだよな…。


「結界は高度な“鍵”のようなものです。構造、位相、流れ……それらを知る者が内部にいなければ、すり抜けは不可能です」

「教師か、生徒か……あるいは——」

『もっと上かもな』


 ラプラスの言葉に、ほんのわずかだけ思考が止まる。


 だとしても、ただの内部犯ってことはない。

つまり、相当腕利きの裏切り者ということだ。


「まずは犯人を大まかに絞ろう」


 俺が足を止めると、シュナも同時に止まった。


「……この学園で、“そのレベルのことができる奴”ってどれくらいいる?」


 問いかけると、シュナは一瞬だけ考え——


「……3人です」

「3人?」

「はい。生徒だけなら3人です」


 その瞳が、わずかに鋭くなる。


「この学園において、実力的に突出している者。いわゆる——“上位五傑”」

「……その中に、お前も入ってるんだろ」

「……はい」


 即答だった。


「当然、私が1位です」と、胸を張ってそう言った。

「だろうな」


 あの戦闘力を見りゃ分かるしな。


「でも…3人って?五傑じゃないのか?」

「…リオンですよ」と言われて納得した。

「魔力量と適応力が異常です。まだ制御が甘いですが、潜在能力だけなら……最も危険です」


『まぁ、私はもう居ないからただの抜け殻だけどなー。魔力量だけじゃー五傑は保てないだろうからな』


「…なるほどな。他は?」

「4位はセリス・ヴァルディア。2年で錬金術が得意で魔法で作った自分専用の魔法具を使っていて、学園最速のスピードと耐久性がありますし、事前準備や対策込みなら私でも苦戦する相手ではありますね」


 シュナがここまで評価するってことは本当にすごい奴なんだろうな。


「3位はグラン・ディルク。4年生で純粋な肉体強化が得意で近接戦闘では無類の強さを誇ります。魔力量もかなりのもので向こうが本気で耐久戦を挑んできたら私でも負けるかもしれせん」


「…すごいな。この学園は人材に溢れてるな。じゃあ2位は?」


 ほんのわずか、間があった。


「ロエナ・クローネ」


 その名前が出た瞬間——

空気が、変わった気がした。


「……ロエナ?」


 と、聞き返す。

聞いたことがない名前だな。


「はい…。1年生ですが現在は消息不明で——」


 その時だった。

廊下の奥から、足音が響く。

コツ、コツ、と規則正しい音。


 夜の静寂の中で、それはやけに鮮明に聞こえた。


 シュナの額に冷や汗が浮かぶ。

そして、が小さく呟く。


 恐る恐る振り返ると、そこにいたのは——


 長い銀髪を揺らし、ゆっくりとこちらへ歩いてくる少女。


 整った顔立ち。

冷たい瞳。

そして、纏う空気が明らかに“普通じゃない”。


「……久しぶりですね、シュナ先輩。私のいない間も1位の座を守っていただき感謝です」


 …これは…レオンの同じような…中に何かを飼っているような…そんな感覚。


「それと——」


 すると、その視線が、俺に向く。


「あなたが例の教師ですか?噂はかねがね。シュナ先輩を倒した…聞きましたよ?いずれ手合わせをいただきたいですね」と、目が黄色くなりこちらを値踏みするような目を向ける。


 なるほど。

こいつが——


「ロエナ・クローネ…」

「……ええ」


 わずかに口元が歪む。


「先ほどの戦いも拝見しました」


 中庭の件を言ってるんだろう。


「見てたのか?」

「はい、僭越ながら見守らせていただきました。まさか…あの結界が破られるなんて思わなかったですが」


 一歩、近づく。

その瞬間——

魔力が、わずかにぶつかる。

意図的だな、これ。


 これはある種の探り合い。

お互いの魔力をぶつけ合って、力量を確かめているのだ。


「…ふふ、本物ですね」

「…本物?」

「いえ、こちらの話です」


『いいねぇ、分かりやすいじゃねぇか』


「……師匠」


 隣から、シュナの声が聞こえて、俺の彼女の距離感に嫉妬してか、ものすごい目で睨んでくる。


「…こういう人がタイプなんですか?」

「いや、違うから」


 ロエナはくすりと笑う。


「へぇ。シュナさんに随分懐かれてるんですね」

「…まぁ…」

「私は弟子だから」と間髪入れずに即答する。


 その一言で、空気がほんのわずかに軋んだ。


「……ふーん」


 彼女の目がまだ細くなる。


「面白い関係ですね」


 そのまま、くるりと背を向ける。


「まあ、そのうち——試させてもらいますね。学内対抗戦の時にでも」


 そう言い残して、去っていくのでたった。

静寂が戻る。


「……ありゃ…バケモノだな」

「はい…。何を隠そう彼女はまだ…1年生なんですよね」


 …まじかよ。

1年であのレベルとか…本物のバケモノじゃねーか。


 しかし…第一容疑者に間違いないな。

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