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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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レオンの過去

 レオン=ヴァルハラは、魔法学校の裏庭のベンチに座りながら、遠くの空をぼんやりと見上げていた。


 風が木々の葉を優しく揺らし、午後の陽光が地面に淡い影を落としている。


 僕の横には、リグゼ先生が静かに座っていた。


 先生は先ほどから何も言わず、ただ僕が話すのを待っていた。


 小さく息を吐いた。


 それから頭の中に、昔の記憶がゆっくりと蘇ってくる。



 ◇


 とある貴族家に生まれた。

家は中堅貴族で、領地も比較的小さく、貴族とは言え、派手な生活とは無縁だった。


 しかし、生まれてすぐに僕の中に「もう1人の何か」がいることを知った。


 それは、少女の姿をした存在だった。

彼女は僕の心の中にいて、いつでも話ができる存在であり、彼女は自らを「ラプラスの悪魔」と名乗った。


 黒髪ツインテールでオレンジの瞳。

口調は生意気な感じで、面倒くさがりな性格をしていたが、最初にできた友達だった。


 生まれてからずっとそこにいて、それが当たり前だった。


『よぉ、小僧。元気にしてっかー?』

「うん!げんきだよ!らぷらすちゃんは?」

『私には元気とかそういうのねーんだよ』

「そーなんだ!」

『お前の親父は私と全然話してくれなかったからなー』

「おやじ?」

『父親だよ、パパって言えばわかるか?あいつは頑固でなかなか話してくれなかったからなー』


 小さい時はまだ心の中で話すということができなかった。


 だから、少女の声が聞こえるたび、つい声に出して返事をしてしまった。

そのことで、同い年の子供などとは仲良くなれず、仲良くしようとしても「レオンくんきもい!」とか言われ、馬鹿にされたりいじめられてしまった。


 さらにラプラスの影響で膨大な魔法が自分の中に内包されており、自分には制御できなかったため、それにより周りにも悪い影響を与えてしまったことで、まわりから距離を置かれるようになっていた。


 そのせいで家から出ることはなく、部屋に引きこもって唯一の友達であるラプラスとだけ話していた。


 ちなみに父と母もあまり自分に関心がなかった。

特に父に関しては自分の見ているようで見ていないような目で見つめていた。


 今思えば、生まれながらに自分の中にいたラプラスが息子の中にいると思うと、怖くて気持ち悪くて仕方なかったのだろう。


 多分、僕を産んだものただラプラスを息子に譲りたかっただけだからこそ、愛情なんて微塵もなかったのだろう。


 幼いころはそれでもラプラスの存在が心の支えになっていた。

しかし、歳を重ねるごとに自分が人とは違うことを理解し始めた。


 それは全てラプラスのせいであった。

それが故に彼女を拒絶しようとするものの、『お前は私のおかげで生かされてるんだぜ?こっちはいつでも力を暴走させて器のお前を壊すことができるんだ。主従関係を勘違いしないで欲しいんだが』と言われた。


 それからは自分の力を制御するためにいろんな文献を見たり、様々な実験を行うもの結局ラプラスを制御することができなかった。


 そうして、13歳となり見事にアカデミア・ルミナスに入学してからも、状況は変わらなかった。


 魔力の総量は学年でもトップであるものの、制御はできないことと、ヴァルハラ家というのが闇の魔術により、自らに悪魔を宿し、それを代々受け継いでいることは知られており、ずっと白い目で見られていた。


 さらに力の制御はいまだに出来ず、基本は本来の平均以下の魔力しか使うことができなかったため、魔力総量はとんでもないが、扱えないし更に頭も良くなかったことで、「落ちこぼれ」と呼ばれるようになった。


 結局、学校に入っても僕はひとりぼっちだった。

その頃にはラプラスとも話をすることなくなり、完全に1人になっていた。


 それでも向こうからは話しかけられることはあり、いつも1人の自分を馬鹿にする言葉を吐かれていた。


『残念だが、お前も私も誰かに認められることも誰かに求められることもない。生まれながらにそう決まってたんだ。わかるか?なぁ?死んじゃえよ。そうすりゃ楽だぜ?』と、唆してくる。


 死んだ場合、おそらくこの体の主導権はラプラスにわたり、ようやく彼女は自由な身になれる。

だからこそ、幼いころは寄り添って洗脳しようとしたが失敗したため、今は僕を殺すことに必死になっていたのだ。


「…嫌だ。自殺なんて…しない」

『そんな勇気もねーもんな』


 そんな日々が続いていた。

そして、あの模擬戦の日。


 シュナ様が負けたという噂が学校中に広がった。

その勝者が、国王直々に派遣された臨時教師だということであり、年もあまり変わらないことを知った。


 更に彼は男爵家の中でも落ちこぼれ扱いされていたことを知り、少しだけ興味を持っていた。


 けど、自分を見たら…きっと距離を置かれるだろうとそう思い込んでいた。


 そして、同級生にお金を取られて、まともに生活すらできなくなっていたため、賭博場にてラプラスに代償を支払う代わりに力を使い、見事に博打に勝利し、大金を得てその場を後にしようとした時…不良たちに囲まれていた僕を助けてくれたのが先生だったのだ。



 ◇


 全てを聴き終わった先生は小さく呟いた。


「…なるほど。辛い話をさせてしまったね」

「…いえ…僕は…大丈夫です」

「そっか。それじゃあ…特訓しよっか」

「…特訓?」

「そう。力の制御の仕方、教えてあげようと思って」

「…そんなこと…無理ですよ」

「いや、俺とレオンくんならできる。それじゃあ、ラプラスと話をしたいんだけど…いいかな?」


 僕は驚いて先生を見上げた。


「…本当に…やるつもりですか?」

「あぁ。君にとある魔法をかけて君の中に入る。対話ができればいいけど、おそらくはそうはならないだろうね」

「もし…先生が負けたら…」

「大丈夫。結構強いからね」

「でも…でも…」と、初めて現れた自分の話を聞いてくれる理解者を失うことがただ怖かった。


「いつかは決断しないといけないんだよ。君にとって大切な人ができた時、その力で傷つけてしまうかもしれない。そうならないために力の制御の仕方は知っておかないといけない。いけないんだ」

「…」


 そう言われて、言い返す言葉が見つからなかった。


「…それに制御ができれば君は特級魔法師に近い魔力を使うことができる。そうなれば周りの目も変わると思うよ」

「…」


 結局、すぐには答えが出せなくて、数日の時間をもらうことにした。


 それから数日間、何度も考えた。

断ろうと思ったし、お願いしますと言おうとも思った。

けど、その決断ができないまま、数日が経過した。


 それでも…それでも、なんとか結論を出したのであった。


「先生…よろしくお願いします」

「そう言ってくれると思ったよ」


 それからとある部屋に案内されて、先生がラプラスと対峙することとなったのであった、


「それじゃあ…行ってくるね」

「…ご無事で」


 そうして、とある魔法を発動させたのち、先生は人形のようにその場でばたっと倒れるのであった。



 ◇


「くくくくく…こんなガキ1人のために命を張る馬鹿がいるとはね」と、ラプラスの悪魔は笑う。


「…話し合いをする気はあるか?」

「ねーな。殺し合いならいいぜ」


 こうして、バトルが始まるのであった。

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