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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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勝利と落ちこぼれの少年

 シュナの体が軽く吹き飛ばされ、銀髪が乱れた瞬間、校長の声が魔法増幅で響き渡った。


「模擬戦……終了!勝者、リグゼ!」


 闘技場に、呆然とした沈黙が落ちた後、大きな拍手とどよめきが爆発的に起きた。


 生徒たちは立ち上がり、教師たちも驚きの声を上げ、観客席全体がざわめいた。


 「まさか…シュナ様が…」という驚きの声があちこちから聞こえ、誰もが信じられないという表情を浮かべていた。


 シュナはゆっくりと立ち上がり、無言のまま俺を見上げていた。


 彼女の青い瞳には、初めて本気の驚きと——わずかな尊敬の色が浮かんでいた。


 銀髪が少し乱れ、制服のマントがわずかに裂けている。


「いやぁ…流石は次世代の特級魔法師。紙一重で勝てました」というと、彼女は明らかに不機嫌な表情を浮かべる。


「…あなたは明らかに手を抜いていた。本気なら私を…いつでも倒せた」

「…いやいや…それはないですよ」

「…これからいろいろと指導をお願いいたします。先生」


 どうやら、彼女は先生と認めてくれたようだ。


「あぁ、これからよろしくね」


 すると、彼女は立ち上がり、俺の横を通り抜けてさっていった、


 しかし、その背中が去る瞬間、彼女の唇の端がほんのわずかに上がったのが見えた。


 けど…マジで紙一重であった。

余力は確かにあったが、それでもこれが模擬戦でなければ彼女も殺すつもりで向かってきていたはず。


 そうなれば、この結果にはならなかっただろう。


「校長室で話せるかな?」



 ◇


 模擬戦終了後、校長室に呼ばれた。


 校長は、机の向こうで静かに俺を見つめていた。


 白髪を後ろでまとめ、深い青いローブをまとった彼の目は、鋭く、しかしどこか満足げだった。


「…凄まじしい試合であった。少なくても模擬戦としては私が見た中でも最高の試合だった。しかし…何故これまで君の名前が耳に入らなかったか、不思議で仕方ない。それに我が校に落ちたというのも、手を抜いていた…抜かなければならない理由でもあったのかい?」

「まぁ…事情はありましたね」

「…そうか。君の実力は本物だった。君を臨時教師ではなく、正式な特待教師として迎えたい。もちろん、報酬も待遇も、最高ランクを約束する」


 もったいない提案であった。

しかし、俺は静かに首を振った。


「申し訳ありません。私はあくまでラルフ様の護衛ですから。教師は臨時でやるだけですし。今のところは正式な教師になるつもりはありませんし、資格もとってないですから、正式な教師には…」

「そんなものは私の方でどうとでもなる」

「…すみません」


 校長はわずかに目を細めたが、すぐに頷いた。


「…そうか。国王の命令で臨時教師として派遣された以上、無理にとは言わない。ただし、条件は守ってもらう。担当科目は『実践魔術』。

各学年のサポート教師として、授業の補助と実戦指導を任せる。特に、落ちこぼれや才能の原石を見つけ、伸ばす役割も期待しているよ」

「わかりました。優秀な生徒が集まっていると聞き及んでありますから」


 校長は軽く頷き、書類に目を通した。


「では、明日から始めてくれ」

「…ちなみに目ぼしい生徒とかいるんですか?シュナさんのような」

「そりゃ、うちには優秀な生徒がたくさんいる…」と、何かを言いかけて口をつぐんだ。


「…何かあるんですか?」

「いや、1人…才能がピカイチの少年がいるのだが…。まぁ、いずれ出会うことになるだろうから…」と、そうして校長は話を切り上げた。


「…分かりました。では、明日からよろしくお願いします」


 そうして、魔法学校で教師として過ごす日々が本格的に始まることとなった。


 表向きはサポート教師。

裏では、戦争に備えた戦力育成の役割も担うことになる。


 それから数日後、俺は「落ちこぼれ」と呼ばれる少年と運命的な出会いを果たすのであった。



 ◇


 王宮に戻った夜、俺はラルフ様に今日の出来事を報告した。


 彼女はベンチに座り、青い髪を月明かりに輝かせながら、静かに聞いてくれた。


「…流石ですね。話はすでに聞いています。あの次代の特級魔法師相手に圧勝するなんて…」

「それは誤報ですね。流石に圧勝ではないです。惜勝ですよ。たまたま勝っただけです」

「謙遜ですね」

「…いや、本当に。自分は圧倒的に実践が少ないですから。いい試合であったことは認めますが」

「正式な教師の話いただいたんですよね?良いんですか?いい話だと思いますけど」

「自分はあくまでラルフ様の護衛ですから。恩義を返すまでは護衛としてそばにいさせてください」


 すると、ラルフ様は少し微笑んだ。


「…ありがとうございます。あなたがそう言ってくれると、安心します」


 彼女の青い瞳は、優しく、しかしどこか寂しげだった。


 王宮の夜は、静かに更けていった。



 ◇


 これは魔法学園のとある賭博場にて。


「聞いたか!あの模擬戦…。まさか、あのシュナ様が負けるなんて…」

「うぉー!!俺なんてシュナ様に勝つことに全財産かけちゃったんだぞ!」

「いやいや、そもそも相手の男にかけた奴なんているのか?賭けが成立してないんじゃ…」

「それがいたんだよ!1人!あいつにかけて大勝ちしたやつが!」


 少年は大博打に勝ったお金を握りしめて、その賭博場を後にしようとした。


 しかし、そんな大勝ちを許すわけもなく…。


「おい、金は置いていけよ。『落ちこぼれくん』」

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