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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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勝者は?

 シュナの唇が、初めて小さく動いた。


「……真魔顕域」


 その瞬間、闘技場全体の空気が凍りついた。


 彼女の周囲に、青白い光の粒子が爆発的に広がる。


 光は瞬時に氷の結晶に変わり、空間そのものを支配する。


 闘技場の床が一瞬で鏡のような氷面に変わり、天井から無数の氷の棘が逆さに生え、壁面全体が厚い氷の結界で覆われた。


 これは世界でもわずか10名しか扱えないとされる究極の奥義——真魔顕域


 領域内では、彼女の氷魔法の威力と精度が桁違いに跳ね上がり、相手の魔力流動すら凍結させる。


 シュナの銀髪が風もないのにゆっくりと舞い上がり、青い瞳が冷たい光を帯びた。


「…本気も本気ってことね」と、思わず俺の顔も強張る。


 彼女は無言のまま、右手を軽く握りしめた。


 次の瞬間、俺の足元から無数の氷の鎖が飛び出し、両足を絡め取った。


 鎖は鋼のように硬く、触れただけで魔力を吸い取ろうとする冷気を発している。


 さらに上空から巨大な氷の槍が雨のように降り注ぎ、避ける隙を与えない。


「ちっ!チート能力もいい加減にしろ!」と、無数に飛んでくる氷となんとか捌くも、それは防戦一方であり、体も心も折れかける。


 校長に俺を殺すようにでも言われているのか。

俺は即座に決断した。


 もう…やるしかない。


 俺は深く息を吸い、体内に張り巡らせていた魔力を一気に解き放った。


「……真魔顕域」


 低く、しかしはっきりとした声で唱える。


 瞬間、俺の周囲に金色の光の粒子が爆発的に広がった。


 光は風と雷の渦に変わり、闘技場の半分を支配する領域を形成した。


 風が荒れ狂い、雷の光が地面を這い、空間そのものが俺の魔力で塗り替えられる。


 真魔顕域——


 氷の鎖が俺の足に触れた瞬間、風の刃が鎖を粉々に切り裂いた。


 降り注ぐ氷の槍は、雷の壁に激突して次々と蒸発していく。


 衝突の衝撃で、闘技場の結界が激しく揺れ、観客席から悲鳴と興奮の声が上がった。


 シュナの瞳が、初めて大きく見開かれた。


「ようやく驚いてくれたか…」


 しかし、彼女は無言のまま、右手を握りしめた。


 次の瞬間、闘技場全体の空気が急激に冷え込んだ。


 天井から巨大な氷の結晶が無数に降り注ぎ、俺を狙って落下してくる。


 一つ一つの結晶が、砲弾のような速度と質量を持っていた。


 地面に落ちた結晶は即座に爆発し、鋭い氷の破片を四方八方に撒き散らす。


 俺は風の神速で跳躍し、更に空中から雷の連撃を浴びせた。


 青白い稲妻が氷の海を貫き、巨大な爆発を起こす。


 氷の破片が四方八方に飛び散り、観客席の結界が激しく揺れた。


 シュナは無言で左手を振り下ろした。

俺の足元に巨大な氷の柱が突き上がり、体を串刺しにしようとする。


 俺は風の爆風で柱を粉砕し、反撃として風の刃の嵐を放った。


 刃はシュナの氷の壁を切り裂き、彼女のマントをわずかに裂いた。


 初めて、シュナの表情に変化が起きた。

唇の端が、ほんのわずかに上がる。

冷たい、しかしどこか楽しげな笑み。


 その瞬間、闘技場の床全体が氷の海と化した。


 波打つ氷の海から、無数の氷の触手が伸び、俺の体を絡め取ろうとする。


「そんなこともできんのかよ!」


 触手の一つ一つが、鋼のような硬度と冷気を帯び、動きを完全に封じ込めようとしていた。


 俺は風の爆風で触手を吹き飛ばし、雷の連撃をシュナ本体に向かって放った。


 雷撃が氷の海を貫き、シュナの足元を直撃する。


 シュナは無言で左手を軽く振った。

氷の海が一瞬で壁となり、雷撃を完全に防いだ。


 壁が砕け散る音が、闘技場に響き渡った。


 彼女の瞳が、初めて本気の光を宿した。

無口なまま、しかし不器用な笑みを浮かべていた。


 冷酷無比な氷の女王が、本気で楽しんでいる——そんな気配が、闘技場全体に広がった。


 彼女の領域がさらに強化され、氷の海が波打って俺の領域を飲み込しようとする。


 波の先端は鋭い氷の牙となり、触れれば即座に体を凍結させる。


 俺は風の神速で跳躍し、雷を帯びた風の渦を正面からぶつけた。


 二つの究極の力が激突した瞬間、闘技場全体が激しい衝撃波に包まれた。


 氷の竜が風雷の渦に飲み込まれ、粉々に砕け散る。


 破片が爆発的に飛び散り、観客席の結界が激しく揺れた。


 俺は一瞬の隙を見逃さず、風雷の渦をさらに集中させた。


 黄金の軌跡を残しながら、シュナの本体に向かって一直線に突進する。


 そして、風雷の渦は壁を粉砕し、彼女の体を直撃した。


 シュナの体が軽く吹き飛ばされ、銀髪が乱れた。


 そして、彼女の喉元まで迫ったその瞬間、校長の声が響いた。


「模擬戦……終了!」


 その声で俺の手が止まる。


「…っち。最高にいい感じだっなのに」

「…勝者、リグゼ!」


 闘技場に、呆然とした後、大きな拍手とどよめきが起きた。


 シュナはゆっくりと立ち上がり、無言のまま俺を見つめた。


 彼女の青い瞳には、初めて本気の驚きと——わずかな尊敬の色が浮かんでいた。


 俺は息を整えながら、静かに微笑んだ。


 これで、少しは「教師」として認めてもらえただろうか。


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