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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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真魔顕域

 模擬戦前日の夜、王宮の庭園は静かだった。

ちなみに魔法学校に勤めることになったが、魔法学校は近く、夜になると王宮に戻っていた。


 月明かりが花々を淡く照らし、風が葉を優しく揺らす。


 俺とラルフ様はベンチに並んで座り、明日の模擬戦について話していた。


 ラルフ様は青い髪を指で軽く梳きながら、俺の顔を真っ直ぐに見つめた。


「…本当に模擬戦を受けるんですか?シュナ=ハイゼンブルグは私も知っている名前です。『冷酷無比な氷の女王』ですよね。彼女は容赦のない性格で、対戦相手を完膚なきまでに叩き潰すと有名です。そんな相手と…力を隠した上で勝てるのですか?」と質問される。


「…いや、力は隠すつもりはないです。流石に次代の特級魔法師相手に手抜きは無理だろうし、いい機会だと思っています。今の自分の地点を確認するには」

「…そうですか。無理はしないでくださいね」


 彼女の声は心配に満ちていた。

青い瞳が、月光に照らされてわずかに揺れる。

俺は静かに頷いた。


「…怪我だけはしないでくださいね」

「はい。無傷で乗り切れるかは分かりませんが…頑張ります」


 彼女の声は小さく、しかし温かかった。


「なぁーに、イチャイチャしてるわけ?」と、その輪を引き裂くようにエルザ様が現れる。


「別にイチャイチャしてるわけじゃ…」

「話は聞かせてもらったわ。まさか、あの氷の女王と模擬戦だなんて…。まぁ、死なない程度に頑張りなさい」

「…はい」

「なんかラルフの時とテンション違うじゃん」と、頬を膨らませる。


「…いや、そんなことは…」

「もし負けたら罰ゲームだから」

「…頑張ります」



 ◇翌日


 模擬戦当日。

アカデミア・ルミナスの中央闘技場は、すでに満員の観客で埋め尽くされていた。


 円形の巨大な石造り闘技場は、直径百メートルを超える広さで、周囲の観客席は五層に分かれている。


 魔法結界が張られ、観客を守る透明な壁が淡く輝いていた。


 生徒たちは興奮した声で話し合い、教師たちは冷ややかな視線を俺に向けていた。


「国王のコネで入ってきた男爵家の三男が、あのシュナ様と戦うなんて……。こりゃ瞬殺だな」という囁きが、あちこちから聞こえてくる。


 オッズ1000倍くらいか?

闘技場の中央に、俺は静かに立っていた。


 対面に、シュナ=ハイゼンブルグが現れた。


 彼女は無言だった。

長い銀髪を後ろで一つにまとめ、冷たい氷のような青い瞳で俺をただ見つめている。


「お手柔らかにお願いします」

「…」


 言葉は一切発さない。

ただ、静かに立っているだけで、闘技場全体の空気が凍りつくような威圧感を放っていた。


 校長の声が、魔法増幅で響き渡った。


「それではこれから模擬戦を開始する!制限時間は15分。相手を完全に無力化するか、降参を宣言した時点で終了とする。それでは…始め!」


 シュナは即座に動いた。

彼女は右手を軽く振り上げた。


 瞬間、闘技場の地面から無数の巨大な氷の槍が突き上がった。


 鋭い先端が俺を狙い、音を立てて飛んでくる。

空気が凍りつき、視界が白く染まるほどの氷の嵐。


 一本一本が、普通の魔法師なら即死レベルの威力だった。


 俺は力を全開にする。


 風の壁が周囲に展開し、飛来する氷の槍を次々と弾き飛ばす。

衝突の衝撃で、風と氷の破片が爆発的に舞い上がり、観客席から驚きの声が上がった。


 彼女は無言のまま、次の手を打った。


 彼女は左手を横に払う。

闘技場の床全体が一瞬で凍結し、俺の足元から氷の波が襲いかかってきた。


 波は瞬時に鋭い氷の棘に変わり、足を絡め取ろうとする。


 動きを封じ、動きを殺す——冷酷無比な氷の女王の真骨頂だった。


「っち!」と、俺は風の神速で跳躍し、空中から雷撃を放った。


 青白い稲妻がシュナの頭上を直撃するはずだったが、彼女は無言で右手を掲げ、氷のドームを瞬時に展開。


 雷撃がドームに激突し、爆音とともに氷の破片が飛び散った。


 シュナの瞳が、初めてわずかに細められた。

彼女は無言のまま、右手を握りしめた。


 次の瞬間、闘技場全体の空気が急激に冷え込んだ。


 天井から巨大な氷の結晶が無数に降り注ぎ、俺を狙って落下してくる。


 一つ一つの結晶が、砲弾のような速度と質量を持っていた。

地面に落ちた結晶は即座に爆発し、鋭い氷の破片を四方八方に撒き散らす。


 俺は封印をさらに緩め、風の刃を連続で放った。

風刃が氷の結晶を次々と切り裂き、破片を空中で粉砕する。

爆音と衝撃波が闘技場を揺らし、観客席からどよめきが上がった。


「な、なんだよ、この戦い…!!すごすぎんだろ」


 相変わらず彼女は無言だった。

息をあげることもなく、しかし彼女の唇の端が、ほんのわずかに上がった。

初めて見せた、冷たい笑み。


 彼女はゆっくりと右手を前に突き出した。

その瞬間、闘技場の床全体が氷の海と化した。


 波打つ氷の海から、無数の氷の触手が伸び、俺の体を絡め取ろうとする。


 触手の一つ一つが、鋼のような硬度と冷気を帯び、動きを完全に封じ込めようとしていた。


 俺は風の爆風で触手を吹き飛ばし、雷の連撃をシュナ本体に向かって放った。

雷撃が氷の海を貫き、シュナの足元を直撃する。


 シュナは無言で左手を軽く振った。

氷の海が一瞬で壁となり、雷撃を完全に防いだ。


 壁が砕け散る音が、闘技場に響き渡った。


 彼女の瞳が、初めて本気の光を宿した。

無口なまま、しかしその存在感が明らかに変わっていた。


 冷酷無比な氷の女王が、本気で楽しんでいる——そんな気配が、闘技場全体に広がった。


 戦いはまだ続いていた。


 俺は心の中で静かに笑った。

この戦いは、予想以上に面白いものになりそうだ。


 そう思った瞬間、彼女はこう呟いた。


「…真魔顕域」


 その瞬間、空間もろともを氷が覆い、彼女の姿はまるで氷の女王のようになる。


 これは世界でも10名しか使うことができない、奥義。


 どうやら彼女は本気で俺を殺すみたいだ。

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