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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった  作者: 田中 又雄


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三女の秘密

 月明かりが森の木々を淡く照らす中、俺は凍りついた。


 目の前の美少女——いや、大国クラム王国の第三王女、ラルフ=クラムが、フードを外してその美しい顔を露わにした瞬間だった。


 青いロングヘアが風に揺れ、青い瞳が涙で輝いている。


 舞踏会で一度見ただけだが、間違いない。

あの華やかなドレス姿とは打って変わって、茶色いフード付きのローブを纏った彼女は、まるで逃亡者のように見えた。


 だが、問題はそこじゃない。

俺の顔を見られた。


 真夜中の森で、しかも一瞬だけ光球に照らされた程度なら、誤魔化せるはずだ。


 咄嗟に魔力を巡らせ、顔の輪郭を微妙に変え、声色も低く抑えた。


「……大丈夫ですか?」


 俺は慎重に声をかけ、彼女の様子を窺った。彼女は地面に座ったまま、ゆっくりと顔を上げた。


 そして、クスッと小さく笑った。


「ふふ……変装は無意味ですよ?私、目はいいので」


 彼女は自分の目を指さした。

次の瞬間、その青い瞳が赤く変わった。


 魔眼——魔法を見抜く特殊な能力。

クラム王家の血統に伝わるものだと、噂で聞いたことがある。


 なるほど、変装は無意味か。

彼女の視線が、俺の魔力を直接「見透かして」いるのがわかった。


「はぁ……参ったな……」


 ため息をつき、変装を解いた。

顔が元の形に戻り、声も自然なトーンに戻る。


「ありがとうございます、リグゼ様。それよりなぜ変装などされたのですか?それに彼らを倒したその力…。やはり実力を隠されていたのですね」


 彼女の言葉に、俺は警戒を強めた。

舞踏会の一件もバレていたのか。


 …仕方ない、とりあえず話を聞くしかないな。

そうして、森の木陰に座り、周囲に結界を張って音を遮断してから、話をすることにした。


「それで、王女殿下。なぜこんなところで一人で? それに、なぜあの男たちに追われていたんですか?」


 俺の質問に、ラルフ様は少し俯き、深呼吸をした。


 月光が彼女の青い髪を幻想的に輝かせ、大きな胸がローブの下で軽く上下する。

17歳、同じ年頃だが、流石は王女…だ。

オーラが違う。


「まず、なぜここにいたのか…ですが…2日ほど前、私は自国の城下町で、警備付きで散策をしていたんです。私は民の生活を覗くのが趣味でして…。でも、白昼堂々、突然誘拐されてしまいました。あの5人組に」


 彼女の声は震えていたが、徐々に落ち着きを取り戻した。


 犯人は、最近各地で事件を起こしている有名な盗賊グループ「ルワード」の幹部たちだという。


 強盗、誘拐、暗殺——何でもこなす凶悪集団。

なるほど、だから無駄に強かったわけだ。

俺は内心で舌を巻いた。


「それから、2日間かけてここまで連れてこられました。馬車で移動し、途中で休憩している隙に、魔法で目眩ましをして逃げたんです。でも、すぐに追いつかれて……。あなたが助けてくれなければ、きっと捕まって…犯されて殺されてました。捕まった時点である程度覚悟は決まってましたが…いざそうなるとやはり怖いものですね」と、震える手を押さえる。


 狙われた理由はシンプルだ。

王女だから。

しかも、クラム王国の三女で、唯一婚約者がいない。

買い手——つまり、人身売買の相手がたくさんいるらしい。

政治的な結婚や、闇の取引に利用される価値が高いということだ。


 俺は頷きながら、頭の中で情報を整理した。ルワードの連中を倒したのは正解だったが、大きな問題が2つ残っている。


「…なぜ、王国はあなたの救助に向かってないのですか?公にしないまでも全力で探しているはずでは?それともあの盗賊たちは痕跡も目撃者も全て殺しているのですか?」

「…私が三女だからです。既に長女の旦那が次期王となることは確定していますし、次女も優秀な上に既に他大国の婚約者がいて、パイフもできた…。我が国としては既に私は用済みの存在であり、それは交渉材料にはなり得ない…だからこそ動かないと思うんです」


 …なんだよ、それ。


「昔から私はお父様に嫌われてましたので」

「…そっか。そういう意味では俺と似てるかもしれませんね」

「はい、ですので前から気になっていました」

「…そうなんですね。それともう一つ…何でここに連れてこられたのか…」


 ここはブルーム男爵領。

つまり、我が家の領地だ。

クラム王国から2日かけてわざわざここを通るなんて、偶然じゃない。


 目的地がここ近辺か、それとも……買い手がこの領地に関係する者か。


 いよいよきな臭くなってきた。

まさか、うちの家——父上が絡んでいるなんてことはないよな?


 いや、考えたくないが、試すしかない。


「王女殿下。一つ、芝居を打ってもらいたいんです」


 俺は提案した。

ラルフ様は少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。

信頼してくれているようだ。


 俺は分身魔法を発動させて、5人に分身した。

そうして、彼らから衣服を剥ぎ取り、死体は魔法で灰に変え、跡形もなく消した。


 そして、ラルフ様は再びフードを被らせる。

俺は彼女の腕を軽く掴み、縄で縛ったように見せかける。

完璧だ。


 こうして、俺たちは我が城に向かった。

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