第一七曲 新たなバンド仲間の加入 横枕守息
あの後、俺と望月、カミヤは一緒に食事を取ることとなった。
「……さっちゃん、そっちの人が作曲の人? でいいの?」
「そう、コイツが前に話してた奴」
「そっか」
「え、ま、待て待て待て待て!! そもそも、なんですげぇ上手いドラムテク持った巨人をお前知り合いなんだよ!? お前の人脈何!? お前、一匹狼キャラだろ!?」
「は? 遊びのロックが嫌いって言ったら、他人が寄ってこなくなっただけ」
それを普通、一匹狼っていうんだぞ? とは、口に出さないでおくことにした。
後で、めちゃくちゃ反論された時に泣きたくなるくらいに罵られそうだからなぁ。
「お前、デカいな」
「ん? ……野球はやってないよ」
「身長の話でしょ」
「ん……ああ、そういう。ごめん。わかんなくて」
「あ、いや、いいけど」
顔を下に向けてしゅん、とする長身野郎に固まる。
――なんだこののほほん兎は!!
脳内で兎耳の幻覚が見える。ぐっと拳を心の中で強く握った。
首に手を当てながら謝る謎の人物に全力で脳内で突っ込んでしまった。
な、なんだこのマイペースさは。
顔面も強面な三白眼だし。金髪で髪染めてるし。
普通に見たら、不良にしか見えないし……!! 怖い!! ボッチの俺には怖い!
母さんの前で音楽活動しているのを誤魔化すためのポーカーフェイスがなかったら、一瞬でコイツはこの場から去っていたかもしれない……!! 盤理よ、見た目だけで選ぶ男になるな。お前、音楽が好きなんだろ?
盤理は息を整え始めるのに、強面の彼は片手で軽く頬を掻く。
「……えっと、駒板盤理君、で合ってる?」
「あ、ああ、そうだけど」
望月の知り合いなのは、接し方がフランクだからカミヤが来てからなんとなくわかってる。
よく見れば、望月の制服とよく似た色とデザインの制服を彼は着ている。
メインカラー青だし、学校の校章が同じだからおそらく猗生原高校の生徒だろう。
少し首元を開けて、着崩しているのがより不良感を高めている。
きっと、たぶん見た目だけなら誰も近寄らないんじゃないか……? いいや、ぎゃ、ギャップ萌え系男子って奴なのか? 少なくとも強面な見た目でこんなにおっとりしてるわけだし。
「挨拶が遅れてごめんね……俺、横枕守息。ドラム担当、です。カミヤって、呼んでください……よろしく」
「ん? お、おお……よ、よろしく」
……なんか、どっちも苗字みたいな名前だな。
というか、枕なんてつく苗字あったんだ。って、ちょっと待て!?
「お前のドラム、すごかったよ。結構難しい方の曲だよな?」
「んっ……難しいほど、楽しいから。いい経験値になるし」
「へ、へぇー? ゲームとか、好きだったりする?」
「……うん、ゲームは基本全般的に好き。君もゲーム好き?」
「お、おお」
……意外と、オタクか? コイツ。
でも、難しい曲に挑むって気持ちは、わからなくはないかも。
最初作曲を始めた頃は、悪戦苦闘してたからなぁ。
母さんにバレないようにするためにノートは基本鞄の中に隠すようにしていたし。
「私の学校のバスケ部から引き抜いた、カミヤはドラムが趣味だって知ってるから誘ったの」
「……と、いう感じです」
「あ、う、うん……そっか」
俺と守息は握手した。な、なんか調子狂うな、守息は。
あっさりバンドメンバーでも三人組ならとても大切なドラム担当が加わるなんて。
ついてるんじゃないのか? これ……!!
ボーカルがギターで、ドラムがいればもう2ピースバンド成立するじゃん!
「じゃあ、望月。このメンバーでバンド結成ってことで問題な、」
「ベース担当がまだいないからダメ、キーボードもいてほしいから絶対ダメ」
きっぱり、と望月は言った。なぜに!?
「え!? 二人でも問題ないんじゃ」
「私はボーカル&ギターがいいけど、アンタの作曲に必要なメンバーを集めた方がいい曲になるならそっちがいい」
「うわぁーマジかー……結局、バンドメンバー探し続行ってことかよぉ……っ」
俺は顔に両手を当てて、床に崩れ落ちた。
「……バン君って、表情、豊かなんだね」
「え? ふ、普通じゃないか?」
「……ううん。俺、言葉上手く言えないから、バン君が羨ましいよ」
「カミヤ……」
「ん……だから、一緒にバンドメンバー、集めよう? 協力すれば、なんとかなるよ」
俺と視線を合わせるためにしゃがみ込んでくしゃっとした柔らかい笑顔を浮かべる守息に、思わず目頭がウルッと来てしまった。
いい奴、なんだな……っ、望月と大違いだ。
「カミヤぁ、お前、いい奴だなぁ……っ」
「ん? え? あ……えっと、ありがと、う?」
強面が可愛らしく感じる……やばい、俺、カミヤが優しすぎてきゅんとしてしまう。
本当だよな、音楽好きだからって厳しい言葉何でもかけりゃいいって奴じゃないよな。
「おう、どっかの誰かと大ちが、っっ、いっだ!!」
「失礼なこと考えてるでしょ、バン」
ものすごい速さで望月にチョップされて、不満を込めて彼女に抗議する。
「んなことないだろ!? なんでだよ!! お気軽感覚でチョップすな!」
「……大丈夫だよ、さっちゃん……バン君は優しいよ?」
「カミヤ……!!」
「カミヤの言葉に調子に乗るな」
「あいだぁ!! なんでいつもチョップしてくんだよお前ぇ!!」
全力で頭をチョップされ、脳震盪起こしてしまったのではないかと頭を抑えた。
「……ドラム、頼んだから。カミヤ」
「ん……二人とも、よろしく」
「お、おう」
俺は慣れない空気感を覚えながらも、新しいバンドメンバーが加入したことに素直に喜ぶことにした。




