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第一六曲 望月とバンドメンバー集め作戦の相談 パート2

「……何をやってるの、バン」

「何が悪かったのか、俺もわからないのにんなこと言わないでくれよっ」


 あの後、音楽室に戻れなくなって望月に連絡を入れてBLACKCATにやってきた。

 冷めた目で俺を見る望月の意図が読めない。そんなに俺ヤバいことしたかぁ!?

 何が悪かったんだろう……? 俺、何も変なこと言ってないはずなのに。


「音楽一本でやって来た人間からすれば、中途半端な生き方をしている人間は大抵腹が立つ物でしょ」

「お前はそうなのか?」

「当然、他の分野の人間も言えること」

「……そういうことかー……うわーっ……やっちまったぁ」


 テーブルの上で頭を抱える盤理。

 そっか、野上にとって禁句を口にしてしまったようなものだったのかあれは。


「中途半端な人間ほど、表面上だけしか好かれないものでしょ。心の奥底を晒そうとしない奴に、深く理解しようとする他人はいない」

「ひっど!! お前、よくそんなこと言えるな!?」

「事実を言ってるだけ、処世術なんて人生経験をたくさん積んでから言いなよ。処世術にすらなってないでしょ、だから今アンタ後悔してるわけだし」

「っぐ……!!」


 望月はアイスコーヒーを口にしながら、言葉で切り捨てごめん、と侍の如く冷たい言葉を浴びせてくる。腹に彼女の言葉が刺さり、胃痛を覚える。

 ……俺、夏のバンドの大会までこんなやりとり続くのか? 嫌だぁ……っ。


「野上奏攻略は諦めた方がいいかもね」

「んなこと言うなよぉ!! ……あーっ、いい人選のはずなんだって、アイツの音、俺の作りたい曲にぴったりなんだよっ」

「……本当?」

「ん? ああ、望月がこの前歌ってくれたアレンジの曲は覚えてるから、もし野上のピアノが組み合わさればもっと綺麗な曲になると思う」


 食い気味で言う望月に疑問を覚えたが、俺は素で答える。

 ……理想的な、ピアノの音色だったんだよな。

 楽器の関係は合っても、あの響きは俺の好みだった。


「……あれはバンに向けて歌った曲、バンだけの曲なんだから他の誰かに聞かせなくていい」

「それはダメだ」

「どうして? 私はその曲はバン以外のために歌う理由がない」

「違うって……そんなことをして、有名バンドになるつもりか?」

「私は、バンのために歌った歌を誰かのために歌いたくない」

「歌う時は、それでいいさ。こだわりは大事だけど俺はあの曲、いい曲だって思っちまった。作詞だってしてなかったのに、あんな胸に刺さる曲を世の中に出さない方が間違ってる」

「……っ、そう」


 視線を逸らしてコーヒーを飲む望月は無表情だ。

 けど、声がどことなく気恥ずかしそうに小さかったのは、気のせいだろうか。

 まあ、バンド仲間を探すためにも、こういう意見交換はしておくべきだよな。

 たぶん、俺が作曲担当になるわけなんだし。


「って、曲も並行していかないとな……バンドメンバー集めることも大事だけど、それもしておかないと曲を期限ギリギリに作るわけにはいかないし」

「なんで?」

「お前、学生バンドでやるってことでいいんだよな?」

「うん」


 ズロロー、とコーヒーがストローで吸われる音に脱力感を覚える。


「うんて……まずはライブハウスとかで、ファンを集めるのも大事って書いてあったぞ?」

「それは知り合いの所でやろうと思ってる。だけどメンバーが集まらない限りはできない」

「俺は補欠扱い、なんだよな?」

「ギターはできるんでしょ」

「は? ……俺もバンドメンバーなのか?」

「最初から、バンドメンバーだと思ってたけど」


 目を見開いて、思わず口を大きく開けてしまう。

 ……てっきりあれ、冗談なのかと思ってたのに。何普通にケロッと答えてんだコイツは。

 何を思ったのか、望月アイスコーヒーを手で抱え始める。


「何、コーヒーはあげないから」

「いや、あーんじゃないわ!! そもそもあーんがドリンクってどうよ!? 普通スプーンとかフォークの奴だろそれ!!」

「流行らせる? ドリンクあーん」

「いや、ないだろフツー……聞いたこともないわ」


 キラキラした目で、ドリンクを見せつつアホなことを言い出す望月に呆れた。

 ……まだ夏まで余裕があるが残り数か月しか期間がないんだ、何か考えておかないと。


「まだバンド仲間を人間を勧誘してるばっかりなんだから、粘り強く行こう。この程度で諦めてバラされたいの?」

「っ、わかってるよ……!!」


 望月の言葉を胸に改めて、俺は他のバンドメンバーを一旦探すことに注視することにした。

 キーボード担当は野上固定だけど、他のメンバーも集めないとっ。

 よし、やってやるぞ!!


「……ここにいたの、さっちゃん」

「ん、やっときた。待ってたよ。カミヤ」

「は? ……誰?」


 目の前にいるのは2mはある巨人だった。

 刈り上げた金髪に三白眼の男だ。年上? にしては、言動の雰囲気が大人しいと言うか。ガキっぽいっていうか……なんだ? ふわふわしてる感じが。

 でもどこからどう見ても年上なんじゃ……てかカミヤ、って言ってたな。

 望月の知り合い、か? 望月は席を立ちあがると、猫本さんに声をかける。


「ニャー子、ドラムお願い」

「んー? いいよぉ、ちょっと待ってなー」


 猫本さんは受付から出て、二階に上がっていく。

 確か、望月と最初に出会った時も望月は猫本さんに頼んでたけど。

 ……なんでドラムを?


「カミヤ、演奏。この曲でやって」

「……ん? どれ?」


 望月はカミヤって奴にスマホの画面を見せている。


「もしかして、そのカミヤって」

「今はカミヤのドラム聞いて。話はその後」


 猫本さんがドラムの準備を終え、カミヤが椅子に座って鞄から彼専用のドラムスティックを取り出す。ドラムの音の確認をしている。

 ……高身長の奴がドラムするとか、すっごくカッコいいんだよな。


「ニャー子、ベースお願い」

「にゃーかい、いつでもいいよぉん」


 猫本さんは赤いエレキギターベースを取り出す。年季が入ってる気がしてすごい感じだ。

 なんとなくだけど、FenderTRAD60sPBASS、当たりか? ……それとも、違う奴?

 ギターの種類は噛んでるけど、あまりベースやったことないから詳しくは知らないんだよなあ。

 

「カミヤ、いける?」

「……うん、リードギターはさっちゃんにお願いしてもいいよね?」

「当然」


 二人が互いに確認を取りながら、望月はスマホを確認していた。

 俺は望月に声をかける。


「何の曲やるんだ?」

「……RA〇のおしゃかしゃ〇。やるよカミヤ」

「ん……いつでもいいよ」

「アタシにはなしー?」

「ニャー子もね」

「あいよぉ」

 

 カミヤはタイミングを計るために三回ほど、ドラムスティックを叩く。

 望月と猫本のギターとベースで最初のパートを引き始める。

 最初の退廃的なリズムに原曲にも負けていない興奮感を誘う。

 カミヤのドラムが強く叩かれると、歌声が歌って始まるシーンになる。


「……」


 ん……? 望月は歌わないのか? あ、そっか。カミヤのドラムの演奏を聴きたいんだ。

 なら、インストでやんないとか。うんうん。

 流れる手さばきでドラムを叩き始める。

 望月の知り合いっぽいからもしかしたらと思ったが……彼のドラムは凄まじかった。

 メインはベースとギターのはずなのに、カミヤの細やかなドラムの響きが胸に刺さる。

 望月もそうだ。彼女のギターはいつもよりか細い所が目立つところもあるがやはり力強い。

 逆に、引き込まれて行ってしまう。魅了されてしまう。

 ベースの猫本さんの演奏もかゆいところに届く感じがして、さらに曲の深みが出ている。

 三人の演奏力の高さに飲み込まれてしまう自分がいる。

 演奏が終わり、カミヤは深いため息を吐く。

 望月は余裕そうに、俺に振り返る。


「……バン、どう? カミヤの演奏」

「……すごいよ、二人とも」


 望月のギターに引っ張られることなく、原曲と相違ないほどのドラムテクを披露したカミヤ。

 自分の個性を声だけじゃなく見せつける望月のギターセンスもいい。

 まるで、互いに息の合う親友のような演奏だった。

 ……もしかしたら、そうなのかな。

 カミヤのことをじっと見る。

 俺は、コイツのドラムで曲を作りたい。

 気が付けば、そう強く感じてしまっている自分がいた。

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