第一〇曲 最初のバンドメンバー候補
そうして、俺の望月のバンドメンバーを探す日々が始まった。
しかし、現実はそんな甘いものじゃないのは現実のセオリーだ。
「…………くっそ!!」
盤理は頭を抱えて放課後の教室にいた。
自分の席で頭を掻いて、望月の無茶な要望は最終手段にとっておく、と後日話し合った。
俺の幼少期の憧れていた人物からの頼みではあるんだ、なるべくは期待には応えたい。
しかし、そのメンバーって言っても……望月のように人を惹きつける才能がない俺には、他の人に声をかけて回るという行為が、単純に難しい。
高校まで友人を作ってこなかった俺だぞ!? そんな俺が他の同級生や先輩に簡単に声かけられるようなメンタル持ってねえよ!! 馬鹿じゃねえの!? 俺、ボッチなんだぜ!?
イマジナリーフレンドにでも泣きつきたくなる衝動に駆られる盤理は必死に頭に施行を巡らせる。。
いや、ボッチだから逆に望月の歌が響いたんだろうけど!! だとしても、アイツが求めてるメンバーのタイプは……!!
盤理は手に持ったスマホで一応メモしてきた望月の要望メモである。
1、バンドしたい人、2、ロックバンドが好きな人、の二項目だけ。
……こんな安直というか、どういう人格や趣味をしているかまでの指定してこないあたりはまあ妥協しているのだろうなぁ、とは思う。あの、ストイックっぽい感じにしては必死ってことなんだろう。
だとしても……どう相手を探せばいいか。
「どうしたの? バンリ君」
「安海……」
ギャル系女子、安海が現れた!! と、どこぞのゲームの映像が頭に過る。
とりあえず、今日もスルーして……って、言うわけにはいかないか。
「なあ、安海。バンドしたい奴知らないか?」
「え? バンド?」
「そう、ロックバンドとか、好きな奴とか」
よし!! 安海となら多少は為したことはあるから、自然に聞けている気がする!!
安海はうーんと首を捻りながら、顎に手を当てて考え込む。
「安海さん、先生呼んでますよ」
「あ、野上君」
野上、と呼ばれた眼鏡をかけたいかにも生真面目そうな雰囲気を纏うこの人物には覚えがある。
確か、風の噂ではピアノコンクールで連続優勝してる有名人だ。
名前は……なんだったっけ。
「なあ、安海、そっちの人って?」
「ああ、野上奏君、バンリ君なら名前覚えてるかと思ってたけどなぁ」
「……クラシックは難しいから挫折しただけだよ」
盤理は苦々しげに呟いた。
やっぱり、望月の歌でロックがカッコいいって思ってしまったのもあるけど、クラシックの楽器で納得できる音で弾こうと思ったら、やっぱり高い楽器の方が音がよかったりすることが多いってのもある。
まぁ、その常識はロッカーにも通じる常識だ。作曲アプリでいい音を探すのに苦労した日々を思い出す。いい楽器の音を探す時、色々な種類の楽器の音源の値段を調べたら目が飛び出そうになる感覚を覚えたのも懐かしい。やっぱ高い楽器の方がいい音が出るのも事実だしな。
ちょっと言い訳っぽいけど、望月の歌を乗せるのに音を妥協なんて絶対したくなかったのがある……初心者が、何言ってんだ! って話かもだが。
「クラシック、していたんですか?」
「ん? いや、ヒーリングソング的な感じで、聞いていたことがあるって言うか」
「……そうですか」
冷めた目で視線を逸らしてくる後輩に少しバンリは戸惑う。
けどそっか、キラキラネームの子だったっけ。野上って。
奏でなんでソナタって名付けているのかは、なんとなく不思議な気がするけど。
「……それじゃ、僕はこれで失礼します」
「あ、ありがとうね野上君! それじゃ、またねバンリ君」
安海と野上はそうして教室を去って行った。
俺は、ふとあることを思いついた。
「……よし、アイツにしよう」
野上を望月の番であるキーボード担当になってもらおう。
そう、強く盤理は固く決意するのだった。




