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第23話 親切すぎる契約条件

「注意事項だと思っていただければ」


カイは軽く笑った。


「それほど難しいことではありません。

むしろ皆さんにとっても

有利なはずです」


彼は指を一本立てた。


「条件は簡単です」


「一つ目。

銃は絶対に分解しないこと」


その言葉に、

ファレンスカの目が

ほんのわずかに揺れた。


だがカイは、

気づかないふりをして話を続けた。


「それなりに値の張る品ですから、

皆さんも大事に扱ってくださるでしょう」


カイは笑った。


「そこは信じています」


だが。


「戦闘で使う道具を

あまり怖がりすぎると、

かえって手になじみません」


彼は軽く手のひらを広げた。


「ただ負担になるだけです」


カイは自然な流れで続けた。


「ですから皆さんが

できるだけ気軽に使えるよう、

修理はラモンが一手に引き受けます」


彼はラモンの名を

はっきりと口にした。


「銃に異常が出たら、

マイスター・ラモンが

きちんと手を入れますから、

心配せずに思いきり使ってください」


表向きは、

親切な言葉だった。


だが、意味は明白だった。


銃には触るな。


修理はラモンだけが行う。


そしてカイは、

その意味をさらに明確にした。


「もちろん、そんなことはないでしょうが」


彼は笑顔のまま

言葉を続けた。


「もし万が一、

銃を分解した場合は……」


少し間を置いてから、

カイは言った。


「その銃の修理については、

こちらでは責任を負いません」


そして、さらに一言付け加えた。


「また、すべての売掛金も

即時回収します」


部屋の空気が、

少し固まった。


カイはわざと明るく笑った。


「ああ、あまり気を悪くしないでください」


彼は軽く手を振った。


「念のために入れておく条項です。

契約をきちんと守る意思を、

少し確かめておきたいだけですから」


そして付け加えた。


「ははは」


ネオとドリアンは、

互いに様子をうかがった。


修理を任せられるのはありがたい。


だが、もしかして

修理費という名目でまた取られるのではないか。


そんな計算が、

二人の顔にはそのまま浮かんでいた。


一方、ファレンスカは違った。


表面上は、

何でもないふりをしていた。


だが内心では、

歯ぎしりしていた。


(くそ。

この抜け目のない男め)


銃を分解できなければ、

製作法を知る道も塞がれる。


しかもラモンが、

訓練と修理をすべて引き受ける。


表向きは、

親切なサービスのように見える。


だが実際には、

分解そのものを

最初から封じるという意味だった。


そのときカイが、

ネオとドリアンのほうを見て

さらに一言付け加えた。


「修理費は銃の代金に含まれているものとして、

特別に追加ではいただきません」


「本当ですか?」


ドリアンが尋ねた。


彼はすでにカイを、

魔法使いではなく

悪徳商人として見始めていた。


それなのに珍しく

気前のよさそうな言葉が出てきたので、

疑わずにはいられなかった。


カイはゆったりとうなずいた。


「もちろんです」


そして自然に言葉を続けた。


「ラモンが直接使い方を教える費用も、

別にはいただきません」


彼は指を二本立てた。


「もちろん、二十人程度までですが」


カイは笑って言った。


「その二十人がみっちり覚えて、

残りの人たちに教えればいいでしょう」


そして余裕のある声で付け加えた。


「ですから、そんなに不安そうな顔は

しないでください」


ネオとドリアンは、

本当なのかという顔で

カイを見た。


一方ファレンスカは、

表に出さないよう努めながらも、

内心ではうめいていた。


あの値段をつけておきながら、

修理費と訓練費を別に取らないのは

親切ではない。


それだけの値をつけるなら、

むしろ当然含まれていてしかるべきものだ。


それにもかかわらず、

まるで自分が大きく譲歩しているように

見せている。


カイはまた、

指を一本立てた。


「二つ目の条件も難しくありません」


彼は軽く肩をすくめた。


「少し面倒ではありますが」


待っていたように、

ファレンスカが尋ねた。


「二つ目の条件とは何かね?」


「あの火縄銃は、

非常に危険な品です」


カイは落ち着いて言った。


「敵の手に渡ってもいけませんし、

管理を誤ってもいけません」


彼はネオとドリアンを順に見た。


「ですから毎晩、

決まった時間に、

バンやハキのような責任者に

銃の数を確認させてください」


その言葉に、

ネオが軽く眉を上げた。


カイはそこで止まらなかった。


「そして最終確認は、

ラモンが直接行います」


彼はラモンの名を出して、

もう一度釘を刺した。


「異常のある銃がないかも、

一緒に確認することになります」


数量確認。


状態確認。


最終確認はラモン。


言葉だけを聞けば、

もっともらしかった。


だから誰も、

正面から反論しにくい。


カイが尋ねた。


「どうです?」


彼は微笑んだ。


「少し面倒ではありますが、

皆さんにとっても必要なことではありませんか?」


そして付け加える。


「銃にはすべて通し番号が刻まれていますから、

確認自体は簡単なはずです」


カイは三人を見た。


「できますよね?」


今回はネオが

先にうなずいた。


「そうするべきだろう」


彼は真剣な顔で言った。


「あれほど貴重な品がひとつでもなくなったり、

敵の手に渡ったりしてはならん」


ネオはすぐに付け加えた。


「今後は秘密の保持も

より徹底しなければならんな」


そしてカイへ向かってうなずいた。


「それは心配しなくていい。

品が引き渡され次第、

すぐに手配しよう」


ファレンスカも、

表向きは仕方ないというように

うなずいた。


だが内心は、

まったく違っていた。


(この小僧、

覚えていろよ)


数丁だけ抜き取り、

こっそり分解してみるつもりだった。


だが毎日の数量確認に

ラモンの最終確認までつくなら、

それすら簡単ではない。


カイはそんな内心に気づかないふりをして、

三本目の指を立てた。


「最後の条件です」


彼は軽く言った。


「あれは雨に濡らしてはいけません。

水気も厳禁です」


ドリアンが首をかしげた。


「それは、なぜですか?」


だがファレンスカは、

すぐに理解したようにうなずいた。


「それはそうだろうな」


彼は低く言った。


「あの品も黒い土を

もとにしているのだから」


その言葉を聞いて、

ネオとドリアンも

組織から黒い土を受け取ったときに聞いた

注意事項を思い出した。


ドリアンが尋ねた。


「では、それは……?」


カイは人差し指を

ひらひらと振りながら言った。


「知っているでしょう」


彼は銃のほうを示した。


「黒い土は水を吸うと使い物にならなくなる」


そして続けた。


「銃も同じです。

水に濡れるとよくありません」


カイは指で、

弾薬箱のほうを示した。


「ですから雨に当てないよう、

管理は徹底してください」


彼はいたずらっぽく笑った。


「高い弾まで使えなくなったら

困りますからね」


そしてすぐに、

品質保証の話も付け加えた。


「銃はラモンが見ますが、

それでも結局は消耗品です」


カイは平然と言った。


「ラモンが判断して、

修理できないほどの状態なら、

新しい品を購入していただくことになります」


その言葉に、

ネオの表情が一瞬変わった。


だがカイは、

何事もないように続けた。


「弾薬も同じです」


彼は指で、

卓を軽く叩いた。


「使い物にならなくなれば、

新しく買っていただくことになります」


そして結論づけた。


「いずれにせよ、専門家であるラモンの判断が

いちばん正確でしょう」


カイは言うべきことを言い終えたというように

軽く手を振った。


「はは」


彼は軽く笑って言った。


「では、契約書を作りましょうか」


三人の視線が、

同時に動いた。


カイは自然に続けた。


「代表として署名するのは、

ファレンスカ様で」


そして指で、

ネオとドリアンを示した。


「ネオ様とドリアンが

証人として連署すればいいでしょう」


カイは席を立ち、

本棚のほうへ歩いていった。


そしてその上に置かれていた

紙とペンを手に取った。


ネオはそれを見て、

一度まばたきした。


(あそこに、あんなものがあったか?)


だが尋ねる間もなく、

カイは席へ戻ってきた。


そして帝国公用語で、

契約書を書き始めた。


実はそれも、

レイチェルが準備しておいたものだった。


早朝に頼んでおいたことの中に、

ネオの部屋から紙とペンをこっそり持ち出し、

本棚の上に置いておくことも

含まれていたのだ。


しばらくして。


カイは契約書を二枚差し出した。


「ここに署名すれば、

すべてうまく進むはずです」


ファレンスカは書類を見下ろした。


少しためらうように見えた。


だが結局、

決意したようにペンを取った。


さらさら。


さらさら。


ファレンスカが、

二枚ともに署名した。


続いて証人として、

ネオとドリアンが連署した。


ちょうど署名が終わったとき、

扉が開き、バンが入ってきた。


カイはそれを見ると、

満足そうに微笑んだ。


そして席を立ち、

ファレンスカと握手した。


「俺も今回初めて

カイガンを実戦に出すわけですから」


彼は笑って言った。


「実戦でどんな結果が出るのか、

かなり気になります」


カイは契約書を見た。


「では、物品契約は成立ということで」


彼はすぐに

次の予定を決めた。


「射撃訓練は、

今日の午後からすぐ始めましょう」


そして付け加えた。


「必要な準備はラモンがします」


カイは軽く笑った。


「訓練のときはかなり厳しい教官ですから、

習う人たちには

あらかじめ覚悟しておくよう伝えてください」


彼は少し疲れたように

肩を回した。


「では、俺はそろそろ戻って

少し休ませてもらいます」


そして、あくびをするように言った。


「朝から早く動きすぎて、

疲れましたから」


カイは契約書を一枚手に取った。


「こちらを一枚持っていてください。

俺が一枚持っていきます」


彼らしくもなく

朝から動き回ったせいで、

実際に疲れていた。


今必要なのは、

気持ちのいい昼寝だった。


ちょうど入ってきたばかりのバンは、

まだ状況がつかめない顔をしていた。


カイはそんなバンに向かって言った。


「バン」


そして軽く手を振った。


「銃を運ぶの、お疲れ。

契約はうまくまとまった」


カイは契約書を懐に入れた。


「それじゃあ俺は、二階へ上がって

休ませてもらう」


それだけ言い残し、

カイはとぼとぼと

階段を上がっていった。


バンはしばらく、

その言葉の意味を理解できなかった。


だが、ネオから送られた視線を追って、

卓の上の書類を見た。


彼は素早く席につき、

契約書に目を通した。


そして目を見開いた。


「驚きました」


バンは契約書を

もう一度確認した。


「成功するかどうかもわからない我々に?」


そして信じられないというように言った。


「カイ様が、このような条件を

提示したのですか?」


バンの問いに、

ネオが答えた。


「そうだ」


彼はひげをなでた。


「我々にとって、

かなり良い条件ではないか?」


ネオは心から

そう思っている顔だった。


「これほど貴重な武器を

我々に掛けで売るというのだ」


彼は一度言葉を止めた。


「もちろん成功すれば、

莫大な利益を持っていくだろうが……」


ネオは首を横に振った。


「それでも、あれほど徹底した商人が

このような決断を下すとは……」


あまりにも高い値を提示されたせいで、

ネオはカイを

魔法使いではなく

血も涙もない商人だと思っていた。


だが彼の考えでは、

今回の契約は非常に好条件だった。


「おそらく我々の大業が成功すると、

それだけ確信したのだろう」


ネオは満足そうに笑った。


「やはり商人の勘は鋭いな。

ほっほっほ」


カイが上へ行ってから

ずっと不機嫌な顔をしていたファレンスカが、

何かを言おうとした。


だが今回は、

バンが先に口を開いた。


バンはファレンスカの機嫌を読んだように、

ネオへ低い声で言った。


「ネオ様」


その表情は、

まったく明るくなかった。


「少し早まって

契約してしまったのかもしれません」


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