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第22話 掛けでお売りしましょう

ドリアンの胸中は複雑だった。


ネオから聞いた話では、

カイは自分たちに投資すると

豪語していたらしい。


だが、カイガンの威力を実際に目の当たりにすると、

ドリアンは疑わしくなった。


果たしてネオの話は、

そのまま信じていいものなのか。


あれほどの品を持つ者が、

何を好き好んで

こちらへ近づいてきたのか。


その考えが、

頭の中を何度も巡っていた。


カイがしばらく目を閉じ、

考え込むと、

座は再び静まり返った。


しばらくして。


カイが目を開けた。


すべての視線が、

彼の口元へ集まる。


カイはゆっくりと言った。


「そこまで高くはありません」


その言葉に、

誰もが少しだけほっと息をつこうとした。


だが、カイの次の言葉が

すぐに続いた。


「銃一丁につき、

ミスリウム一キログラム」


その瞬間。


三人の顔が、

同時に固まった。


カイは平然と言葉を続けた。


「それから弾薬は、

発射用の火薬込みで

一箱あたり……」


彼は少し間を置いた。


「だいたい千発分入っています」


そしてにこりと笑った。


「そちらはミスリウム百グラムで結構です」


(ひいっ)


誰も声には出さなかった。


だが、全員の表情が

そう叫んでいた。


カイはその反応が面白いというように、

ゆったりと笑った。


「これなら、

思ったよりずいぶん安いでしょう」


そして軽く付け加えた。


「はは」


人々の表情は、

さらに呆然とした。


カイの言うとおり、

安いからなのか。


違う。


高すぎた。


想像を超えるほどに。


かつて、ミスリウムは

同じ重さの金の十倍の価値で取引されていた。


だがそれは、

ミスリウム鉱石が

まだある程度採掘されていた時代の話だった。


今は違う。


ミスリウムの生産は、

ほとんど途絶えたも同然だった。


大陸全土を巻き込む戦争が

起きているわけではないため、

需要そのものが爆発的に増えたわけではない。


だが、帝国騎士団が

儀礼用に少量使うミスリウムと

金の交換価値だけを見ても、

少なくとも同じ重さの金の三十倍にはなった。


その基準で計算すれば、

カイが今口にした金額は

途方もないものだった。


たしかに彼らには

ミスリウム鉱山がある。


だがそれも、

秘密裏に開発を進めている段階にすぎない。


どうにか合金武器を作れる程度しか

採掘できていなかった。


しかも本格的に掘り出すには、

まだ時間が必要だった。


到底、

支払える金額ではない。


ついにネオのひげが

ぴくぴくと震えた。


「君」


その声も、

少し震えていた。


「以前、武器の数は心配しなくていい、

我々に必要なだけ渡せると

確かに言っていたはずだ」


ネオはカイを見た。


「それなのに、なぜ

このような……」


するとカイは、

にこりと笑って答えた。


「ええ。

言いましたね」


彼は平然と尋ねた。


「俺、何か間違ったことを言いましたか?」


カイはわざと

ゆっくりと言った。


「あのとき俺は確かに、

少し値は張ると

前もって申し上げました」


カイは、

「少し」という言葉に

特に力を込めた。


そしてまた、

さらにゆったりとした声で続けた。


「金さえ出していただけるなら、

二千丁でも何丁でも

いくらでも用意しますから、ご安心ください」


カイの態度は穏やかだった。


だがその穏やかさこそが、

初めてネオの顔を赤くさせた。


ネオが何かを叫ぼうとした瞬間。


カイが手のひらを上げて、

それを制した。


興奮はここまで。


ここからは、

釣り針にかかった魚を

引き上げる番だった。


カイは口元を上げた。


「もちろん、

今すぐ武器代を払えとは言いません」


部屋の中が、

静かになった。


カイは平然と続けた。


「俺は皆さんに投資すると言いましたからね。

掛けでお売りしましょう」


彼は笑って尋ねた。


「どうです?」


「ごほっ……

げほっ!」


胸の内が焼けるように熱かったのか、

茶をがぶがぶ飲んでいたファレンスカが、

その言葉を聞いて驚き、

茶でむせてしまった。


彼はしばらく

げほげほと咳き込み、

なかなか止まらなかった。


「な……」


ネオは呆然とした顔で

カイを見た。


「掛け?」


あれほど貴重な品を。


しかも、成功するか失敗するかもわからない

自分たちに。


掛けで売るというのか。


部屋の中が、

しばらく静まり返った。


ファレンスカ長老が、

ようやく口を開いた。


「本当に……」


その声には、

まだ驚きが残っていた。


「本当に掛けでよいというのか?」


彼は信じられないというように

もう一度尋ねた。


「我々が成功したら、

そのとき受け取るという意味か?」


生まれてからこれほど驚いたことがあっただろうか。


そんな顔だった。


カイはそんなファレンスカを見て、

むしろさらに楽しそうに笑った。


「はい。

そういうことです」


その答えを聞くやいなや、

ファレンスカが身を乗り出した。


そしてカイの両手を

がしっと握った。


「ありがたい!」


ファレンスカの顔には、

感激が浮かんでいた。


「君はまさに

民主主義の恩人だ!」


彼はカイの手を握ったまま、

力強く上下に振った。


「我々の思想が大陸へ広がるとき、

君の名もまた栄光とともに語られるだろう」


ファレンスカは大きく笑った。


「ほっほっほ!」


死にかけたところから

ようやく息を吹き返した人間のように、

ファレンスカはカイの手を握ったまま

振り続けた。


カイは表面上は笑っていた。


だが内心は微妙だった。


もともと、他人に体を触れられるのは

あまり好きではない。


それでも顔には出さなかった。


相手の機嫌を損ねない程度に、

そっと手を引き抜いた。


そしてすぐに言葉を続けた。


「はは。

それなら俺としてもありがたいです」


カイは自然に

話題を変えた。


「ただし」


その一言に、

ネオとドリアンの表情が

同時に固まった。


カイは笑みを浮かべたまま

続けた。


「掛けにする代わりに、

いくつか条件があります」


「条件?」


ネオが低く聞き返した。

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