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第18話 即座に排除する

「遅れて申し訳ありません」


バンが姿を現した。


彼は部屋の空気がよくないことを感じ取り、

一瞬足を止めた。


だが、カイは気にしなかった。


「これで全員そろいましたし、

商品の話をしましょう」


ファレンスカがすぐに尋ねた。


「いつごろ届くのかね?」


「もうあります」


「もう?」


ファレンスカの眉が、

ごくわずかに上がった。


カイは平然と答えた。


「前にバンとハキに会った森にあります。

明日、直接お見せしましょう」


そして体を向け、

バンに話しかけた。


「明日、荷物を運ぶ人手を。

そうだな、六十人くらい用意できるか?」


バンはすぐにうなずいた。


「はい。

そのようにします」


人手が確保されると、

カイはネオとファレンスカに向かって言った。


「直接見て、評価して、

それから今後の戦略を立てればいいでしょう」


彼は淡々と言葉を続けた。


「俺としても、皆さんには必ず成功して、

この地に基盤を築いてもらわないと、

今後の取引がずっとやりにくくなりますからね」


カイは落ち着いた声で言った。


だが内心では笑っていた。


(腰を抜かさせてやる)


カイの口元が、

かすかに上がった。


(くくく)


その間に、バンは

ファレンスカと視線を交わしていた。


ファレンスカがカイの武器に興味を持ったのは、

すべてバンのおかげだった。


(事前にファレンスカ長老へ

メモを送り、

武器の重要性をまとめておいてよかった)


だがバンはまさか、

師であるネオがカイの機嫌を損ねるとは

予想していなかった。


バンは慎重に尋ねた。


「ところで……

その品は、いったいいつ森へ運ばれたのですか?」


カイは手を振り、

何でもないことのように答えた。


「まあ、大した話じゃない」


彼は平然と言った。


「もともと見張りを一人つけて

森に置いていたんだが、

お前たちが先に俺を見つけたから、

そちらを確認する暇がなかっただけだ」


(何か少しおかしいな)


バンはそう思った。


だが、あえて深く追及はしなかった。


代わりに、ほかの者たちを代表して

カイに謝罪した。


「もしカイ様が持ってきてくださった武器について、

ほかの者たちがその価値をすぐに理解できなくても、

どうかご容赦ください」


バンは丁寧に頭を下げた。


「これまで誰も経験したことのない新兵器だからこそ、

そうなっているのです」


カイは肩をすくめた。


「俺は構わない」


彼は冷たく言った。


「生き残れるかどうかがかかっているのは、

お前たちのほうだからな」


カイが、自分は彼らの革命とは関係ないという態度を取ると、

ファレンスカをはじめとした者たちの目が

わずかに鋭くなった。


だがカイは、

すでに彼らが餌に食いついたという顔で

余裕を見せながら席を立った。


「では、俺は先に上がらせてもらう」


カイは軽く頭を下げた。


そして大股で

二階へ上がっていった。


扉が閉まり、

カイが完全に二階へ消えると。


部屋の空気が

一瞬で変わった。


少し前まで

穏やかな笑みを浮かべていたファレンスカの顔が、

冷たく固まる。


そしてその口から、

冷たい声がこぼれた。


「ネオ准長老」


その一言に、

ネオの肩がびくりと動いた。


ファレンスカは目を細めて尋ねた。


「あの者は、自分をはっきりと

五サークル・マスターだと言ったのか?」


蛇のように冷たく鋭い気配に、

ネオは思わず身をすくませた。


ファレンスカは視線を移し、

ハキにも言った。


「ハキ。

そこに立っていないで、

こちらへ来て座れ」


その言葉に押されるように、

ハキは素早く席についた。


空気は完全に冷えきっていた。


ネオは頭を下げたまま、

慎重に口を開いた。


「はい、ファレンスカ様。

確かに五サークル・マスターだと言いました」


彼は苦しげに続けた。


「それに、私が三サークル・ランナーであることも言い当てました。

ですから、少なくとも私より上だと判断したのですが……」


ネオが言葉を濁すと、

ファレンスカは馬鹿馬鹿しいという顔で吐き捨てた。


「若くしてあそこまで至ったこと自体は大したものだ」


だが。


「あれは魔法使いというより、商人だ。

あまりに大きく出すぎている」


ネオの顔がこわばった。


「それは、どういう意味でしょうか?」


ファレンスカは、

決定的な事実をつかんだかのように

低く言った。


「なかなかうまく気配を隠していたので、

最初は見抜きにくかったが」


彼は指先で、

卓を軽く叩いた。


「あの者の実力は、

五サークル・マスターではない」


「何ですって?」


ハキが驚いた声で

低く叫んだ。


ファレンスカはそんなハキを一度見てから、

淡々と言葉を続けた。


「魔法使いが、自分のサークルを偽った」


その声が冷たくなる。


「商人の立場からすれば、

誇張と言えるのかもしれない」


だが。


「それでも……」


ファレンスカは言葉を濁した。


部屋の中が

急速に静まり返った。


魔法使いが自分のサークルを偽ること。


それは、きわめて無礼な行為だった。


少なくとも、この大陸では

そうだった。


ファイダルではどうか知らないが、

この地では決して軽く流せることではない。


その沈黙を破り、

ハキが勢いづいたように言った。


「やはり嘘つきだったんですね」


ハキは拳まで握りしめ、

声を強めた。


「ファレンスカ様。

私は最初から、あいつが気に入りませんでした」


今すぐ二階へ駆け上がって、

カイの胸ぐらをつかみそうな勢いだった。


そんなハキを、

ネオがすぐに制した。


「黙っていろ、ハキ」


ネオはハキを座らせると、

再びファレンスカを見た。


「ファレンスカ様。

いったい、どういうことでしょうか……」


彼は信じがたいという顔をしていた。


「確かに私は、見抜けませんでした」


ネオには、

自分の魔法の腕に誇りがあった。


だから自分の判断が誤っていたという事実を、

簡単には受け入れられなかった。


だがすぐに、

別の可能性に思い至った。


「あっ!」


ネオの目が大きくなった。


「では五サークルではなく……

三サークル・エキスパート、

あるいはマスターということでしょうか?」


もしファレンスカが正確に見抜いたのなら、

カイというファイダルの魔法使いは、

少なくともファレンスカより一段下と見るべきだった。


ファレンスカは、

組織で最高位の魔法使いだった。


魔法研究部門の最高責任者。


組織内部では、

冷炎の魔法使いと呼ばれる人物。


黒魔法に手を出し、

人体実験まで行ったという噂もあったが、

秘密組織である以上、

そうした話は結局うやむやに葬られた。


そしてファレンスカは、

四サークル・マスターだった。


一方、

ネオ准長老は三サークル・ランナー。


その差は明らかだった。


ファレンスカは冷たく結論を下した。


「私が見たかぎりでは、

三サークル・マスターだ」


彼は指で、

卓を軽く叩いた。


「もちろん、あの年で

そこまで至っているなら大したものではある」


だが。


「私はあの者の振る舞いも、

言葉遣いも、

何もかも気に入らん」


ファレンスカの目が、

冷たく沈んだ。


「怪しすぎる」


少し前まで

カイに親しげに接していた人物とは思えないほど、

その口調は冷酷だった。


そのとき、バンが口を開いた。


「ですが今の我々には、

あの者の武器が必要です」


バンはファレンスカをまっすぐ見た。


「ファレンスカ長老も、

私が送ったメモをお読みになったはずです」


ネオがバンを振り返った。


「バン。

お前はまた余計なことを……」


「ネオ先生。

申し訳ありません」


バンはすぐに頭を下げた。


だが、引き下がらなかった。


「そして、ファレンスカ長老」


その声が、

低く硬くなる。


「今の我々に必要なのは時間です」


そして。


「その時間を稼いでくれる

戦力です」


バンは拳を軽く握った。


「今この瞬間にも、

帝国の刃はこちらへ向いています」


その声には、

焦りがにじんでいた。


「一分一秒が惜しいのです」


だが。


「あの者の話が事実なら、

一週間で敵と戦える

強力な武器を持った兵を作れます」


ファレンスカが冷たく言った。


「しかし、それはあくまで

あのカイというファイダル人の言葉だけを聞いて

下した判断だ」


「今の我々に、

正攻法で訓練を施す時間はありません」


バンはすぐに答えた。


「今の農奴たちに武器をまともに扱わせるには、

少なくとも三か月はかかります」


そして目を伏せた。


「それに、黒い土」


その言葉に、

ファレンスカの目がわずかに動いた。


バンは続けた。


「あの神秘的で強力な物質を応用した武器だというのなら……」


彼は息を呑んだ。


「それがあれば、

一気に戦況をひっくり返せます」


バンの声には

興奮が混じっていた。


「今でも信じられません」


そして正直に付け加えた。


「本当に可能であるなら、

私自身もその製作技術を学びたいほどです」


彼は苦く笑った。


「もちろん、簡単ではないでしょうが」


バンの言葉が終わると、

ファレンスカ長老もゆっくりとうなずいた。


「そうだな、バン」


その声は落ち着いていた。


「お前の言うことはよくわかった」


そして付け加えた。


「私も同じ考えだ」


ほかの者たちとは違い、

ファレンスカはバンと同じく

状況を素早く読む人物だった。


ほんの数言の会話だけでも、

カイが差し出すという新兵器が

どれほど大きな効果を生むか、

おぼろげながら見抜いていたのだ。


彼は低くつぶやいた。


「正直なところ、私も

突然あのような夢のような武器が手に入るとは

思っていなかった」


そしてゆっくりと言葉を続けた。


「黒い土を応用した武器か……」


ファレンスカは、

組織最高機密である

黒い土の開発に

長い時間を費やしてきた人物だった。


誰よりもよく知っているからこそ、

誰よりも信じがたかった。


だからこそ、

カイという男の言葉に耳を傾けたのだ。


「私も、それを

さまざまな方向へ応用しようと試みてきた」


ファレンスカの目が細くなる。


「それなのにカイという者の組織は、

すでに兵器化まで終えているという」


彼は感嘆するようにつぶやいた。


「ファイダルの技術力は、

実に驚くべきものだ」


しばらく感嘆していた彼が、

ふいに声を強めた。


「だが」


その瞬間、

座にいた者たちが緊張した。


特にバンは、

肩までこわばらせた。


ファレンスカ長老は

冷たく言葉を続けた。


「あれほどの品を

一介の商会が作ったというのは、

到底納得できん」


その目が鋭くなる。


「あるいは、ファイダルの君主が仕掛けた

陰謀かもしれん」


疑わしい点を口にした彼は、

しばらく考え込むように

目を伏せた。


「あの新兵器が本当に役に立つなら、

どんな手を使ってでも

その技術を身につける必要がある」


そして低い声で、

最後の可能性を口にした。


「そしてもし、

カイが本当にファイダルの君主に仕える魔法使いではないのなら……」


ネオ准長老が、

疑問を浮かべた顔で聞き返した。


「ないのなら?」


ファレンスカの次の言葉に、

バンの顔が青ざめた。


「即座に排除する」


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