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第12話 森の中の長身の男

ネオはバンを叱った。


「カイの言葉を、

あまり深く考えすぎるな」


「我々はすでに、

必要な計画をすべて立ててある」


「同志たちさえ合流すれば、

物事は無理なく進むはずだ」


「黒い土は、

組織の者たちが長いあいだ隠してきた

発明品だ」


「それなのに、海の向こうのファイダルから来た者が、

それをもとにさらに発展した武器を作れるなど、

大げさな虚勢か、

嘘に決まっている」


ハキも同調した。


「先生の言うとおり、

新しい武器じゃなくて、

今ある武器をどううまく使うかを考えるべきだろ」


「それに正直、

カイは気に入らない」


「五サークルの魔法使いじゃなかったら、

今からでも一戦交えたいくらいだ」


バンは何も言わずに立っていた。


いつもどおり、

無表情に近い顔だった。


しばらくして。


バンが静かに口を開いた。


「ご心配をおかけして申し訳ありません」


彼は短く頭を下げた。


「少し外の空気を吸って、

頭を冷やしてきます」


バンが出ていくと、

ハキはカイが上がっていった二階のほうを見た。


(あいつ、

いったい何を企んでるんだ?)


◆◆◆


カイはベッドの上に、

仰向けになって転がっていた。


ぎしっ。


ぎしぎしっ。


長さも、

幅も、

何とも中途半端だった。


少し体を動かすだけで、

ベッドが嫌な音を立てる。


(俺はこの世界基準だと、

やっぱり背が高いんだな)


寝転がっていたカイは、

ポケットに手を入れた。


そしてピコを取り出す。


小さな尻尾をつかんでぶんぶん回すと、

ピコが意識を取り戻し、

手足をばたつかせた。


「ぴいっ!

ぴいっ!」


「ピコ」


「お前、火縄銃くらい作れるよな?」


指先にぶら下がったピコが、

慌てて首を横に振った。


「ぴっ。

私は分析はできますけど、

作ることはできませんよ」


ピコが必死に言った。


「創造の力を使うには、

マスターの本体が必要なのでは?」


「それはそうだな」


カイは退屈しのぎのおもちゃのように、

ピコをぐるぐる回し始めた。


「ぴいいいいっ!」


ピコの目が、

ぐるぐる回り始める。


「ピコ」


「俺が本体を封印しておいた場所の座標、

言ってみろ。

ほら」


だが、回されていたピコは

すでに限界だった。


両手両足をぴんと伸ばしたまま、

口から白い泡を吹いている。


カイは眉をひそめた。


「こいつ。

何でこんなに弱いんだ?」


彼はピコを見下ろした。


「ちょっと回しただけで

もう気絶してるじゃないか」


少し考えた。


「じゃあ、どうするか」


(バンと出会った場所は覚えている。

そこまで移動すれば、見つけられるだろう)


カイは体を起こした。


そして指先にマナを集める。


ネオには適当に、

五サークル・マスターだと言っておいた。


だが実際の今の体は、

三サークル・マスター程度にすぎない。


分身体を作るとき、

肉体のほうに比重を置き、

魔法能力は相対的に

あまり残さなかったからだ。


とはいえ、三サークル・マスターでも

短距離の転移には問題ない。


(座標を描いて)


指先にマナが集まる。


(マナを束ねる)


ぱあっ――!


部屋の空気が、

一瞬まばゆく揺れた。


カイの姿は、

部屋の中から消えた。


ベッドだけが、

ぽつんと残された。


つい先ほどまで

彼が寝ていた場所には、

静けさだけが沈んでいた。


そして、その静けさを裂くように。


扉の隙間から、

誰かの瞳がきらりと光った。


少しだけ開いた扉の向こう。


レイチェルが息を殺したまま、

カイが消えた場所を

じっと見つめていた。


◆◆◆


「よっと!」


ハイウェヌの森に到着したカイは、

大きく伸びをした。


「気持ちいいな!

やっぱり森の空気は違う」


(さて。

封印しておいた俺の本体を探すか)


さわさわ。


風が木の葉の間を抜けていく。


カイは気分よく、

森の中を走った。


やがて足を止める。


森の一角が、

真っ黒に焼け焦げていた。


(何だ、あれ?)


少し首をかしげたカイは、

すぐに思い出した。


(ああ、そうだ。

前に俺がうっかり作った

火柱の跡か)


あのときは慌ただしくて、

きちんと見ていなかった。


だが今見ると、

思っていたよりずっとひどく焼けていた。


カイは指で地面をなぞった。


白い灰が、

指先についた。


(大きな山火事にならなかっただけ、

本当に助かったな)


(しばらくは、

焼け跡のまま残るだろうな)


そのときだった。


(あれ?)


カイは誰かと

目が合った。


(俺より手のひら一枚分くらい

低いだけじゃないか?)


この世界の基準で言えば、

とんでもない長身だった。


金髪。


整った顔立ち。


どこか優美な印象。


金髪の男は、

カイを見つけるなり

まっすぐ大股で歩いてきた。


距離が縮まると、

カイのほうから先に挨拶した。


「こんな森の中で

人に会うとは思いませんでした」


カイは軽く頭を下げた。


「初めまして。

俺の名前は――」


だが男は、

カイの言葉を遮った。


「人間か?」


彼はカイを上から下まで眺めた。


「外見はファイダル人に近いな」


そして意外そうに

目を細めた。


「私と目線の高さが合う人間など

見たことがなかったが……

意外だな」


(何だ、この失礼なやつは)


カイの眉がぴくりと動いた。


(初対面の相手に、

挨拶もなしでいきなり上から目線かよ)


気分を害したカイは、

その男を無視して立ち去ろうとした。


だが。


足が動かなかった。


ばちっ!


「うわああっ!」


カイの体が、

そのまま宙へ持ち上げられた。


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