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仙人天  作者: 天内君保
第一章「第二波」
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光明波動と想念波動

奏の光子量について陣さんと怪しい男は驚いていたようだが、奏は気にする素振りもなくその場を離れ一人孤立した場所へポツンと腰を落とす。

紫苑はその姿を目で追い不思議そうな顔をした。


「なんか感じ悪……」


と、小声で言う紫苑。

仙はというと、銀髪の若い矢真口猛という少年を見つめていた。

猛の姿は明らかに10代半ばほどでこんな若い子が戦場に来るのかと驚いているのだろう。


「猛くんって歳はいくつなんだ?」


「14です」


仙の問いかけに素直にそう答えると紫苑も驚いた様子で。


「こんな若い子を、戦場に行かせるの?」


「いいえ、我々は無理矢理にそんなことはいたしません。」


「でも──


「僕には、やらなきゃいけないことがあるんです。だからここへ来ました。

どうか分かってください。強くなりたいんです……!」


紫苑の言葉の途中で猛はそう言い、必死に頭を下げる。

少しその場が静まり返ったが


「その歳で自分から危ない場所に突っ込んでくのはいただけないよ。

言えない事情があるなら仕方ないけど、どうしてもって言うならお姉さんが後で聞いてやるから!」


猛の肩をポンと叩き。

仙は初めて紫苑の優しい一面を見た気がした。




「そろそろ時間ですかね」


怪しい男は、時間を確認すると陣さんへと近づく。

時間は11-30。

どうやら締切の時間みたいだ。


怪しい男は人が集まっている真ん前へ行くと、マイクを取り、


「えー…っと、ちょっと皆さん集まってもらえますか? 時間なのでね」


「え、時間て?なになに」


周りの人は辺りをキョロキョロしだし言われた通り一纏まりになる。


「あっ!」


と、マイクを通した大きい声に周りは驚いて何かと思っていると。

その男は白い手袋を両手にはめだした。


「ふぅーっ…」


またもマイクを通した耳障りな音に辺りは困惑し陣さんも見ていられない様子だ。


「絶対怪しいよねあの人…… 何か薬でもやってんのかな?」


遠慮のない紫苑の言葉に仙は笑いをグッと堪えた様子。


「あの男アウトプットとか言ったな」


後ろから声をかけたのは奏だ。


「そういえばアウトプット能力が何とかって言ってたな……何か知ってるのか?」


「いいや、詳しくは分からないが奴の掌 見た目からでも普通の人間の手ではないな」


そう言われて掌へ目線をやると何となく掌が真っ黒になっているように見えた。


「すみません… ゴホン

では、気を取り直して」


そして怪しい男は話だした。


怪しい男の名は奇士(あやし)というらしい。

それから陣さんと呼ばれていた男の名は剣陣(つるぎじん)。騎士団の隊長を務めている。

奇子の言葉は被災者に対しての哀悼の言葉と

国の現状、龍騎士団は住み処や生活は保証するが、実戦となった場合は命の保証は出来ない、迷うようであれば此処に残るべきでない、と述べた。

すると辺りがざわつき始めた。


「迷うくらいなら残るな、だって

今更感があるけど、そんな軽い気持ちで来てるような人なんているのかな」


紫苑はそう言うと辺りを見回し

なんと、中にはポケットに手をつっこみながら、だらだらと会場を出ていく者がいた。


「……あきれた」


「いいんじゃないのか?あんな奴が戦ってたんじゃ、逆にあぶねえよ」


「それもそうだよね」


勿論、矢真口猛と奏は全く動じてない様子だ。


「知ってる?大天災って家や物には何の影響もないんだよ

影響があったのは人間だけ、私達のようにユーベルメンシュになった人もいれば、ただ消えちゃった人もいるんだって」


「そういや、誰かがそんなこと言ってたな。

でも、消えたってのが非現実的過ぎて俺には想像がつかないんだよな」


「私も最初はよく分かんなかったけどね。

本当に消滅したみたいに消えちゃうんだって、大天災の光は強烈な光だったから直接消えた場面を見た人はいないし、神隠しだーって騒いでる人もいる」


それから、人が住んでいたはずの民家も人がいないというのが増えている。

住民が消えたのであれば、その民家の持主はいなくなるわけだが、民家の処分や行方不明の人民を探す形をどうするかで国は問題が山積みだ。


「へえ……どうなるのかな、ほんとに」


すると奇士が再びマイクを持った。


「えーと、そろそろいいのかな。思ったより大分人が減ってしまいましたね」


奇士(アヤシ)の発した言葉の所為でパッと見30人くらい居た人が20人くらいになってしまった。

奇士は陣さんの方を向いたりして怒られるのをビビってるのか、多少オドオドしてる。


「……さっきの話の続きですが――


「呼んだか」

と、突如として小さな扉から老婆が現れ、のろのろと奇士の方へ歩いて行く。


「えっ、白根さん。は早いですね」


「なんじゃ。早く来たら迷惑なのかいな?失礼しちゃうわい」


「いやいやいや!そういうわけじゃなく」


辺りは"白根さん"と呼ばれた老婆の登場でまたまたざわつき始める。


「し、紹介しますね皆さん。こちらのお方は、白根毘籃様というお方で、光明波動の使い手であり僕の師でもあります」


剣陣は深々と頭を下げると、入隊希望の人達も真似たように深々と頭を下げた。


「よしよし。ところで奇子、思ったより人が集まってるようだが、こやつらは全員ユーベルメンシュということでよろしいのかな?」


「はい、確認しましたので間違いはありません。」


奇士はそう言うと、光子量の計測の際に何やら記入していた用紙を白根に渡した。


「ふむふむ」


普通こういうことは希望者の目の前では行わないような気もするが、わざとなのか天然なのか……。

とにかく、他の者達はその光景を固唾を飲んで見守っている。

そして白根は老眼なのか、時たま紙を離して見たり、目を細めたりしてる。


「1000を越える者は4人か」


おそらく光子量の数値のことを言っているのだろう。

「えー名前を呼ぶぞい。

まず、奏。矢真口猛。井山仙。軽灘紫苑

以上、名前を呼ばれた者はこちらへ来なさい」


仙達以外のみんなは誰がその人なのか探すようにキョロキョロし始める。


「え、私達呼ばれたみたいだよ」


呼ばれた4人はみんなで顔を見合わせる。


「呼ばれた方は前に出てきてくださーい」


一番後ろにいた4人は奇士、剣陣、白根毘藍がいる場へ歩いてく。


「ついてきなさい」


「はい」と、奏以外のみんなして返事をする。


「奇士もついてくるんじゃよ」


「えっ、僕もですか?え……後の皆さん方は?」


「前にも言ったように、この者以外で見込みとやる気のある者だけ残して、部隊の配属とかは陣に任せる」


「はい分かりました。じ、じゃあ陣さん。すみませんが宜しくお願いします」


奇士は陣に頭を下げると、陣は片手を挙げた。


白根についていくと会場の隅に小さなドアがあり、そこを開けた。


「わぁすごい!こんなふうになってるんだ」


そこを出ると地面は50mほどで切れていて、後は一面海の世界だった。

地面は芝生がはえているが、あまり伸びてないところを見るとしっかり手入れをしているのか。


「ここからずーっと向こう側に小島がポツンとあるのが分かるか?あそこらへんじゃな」


白根が指を指した方角を見るとなんとなく緑色の小島らしき物が見える。


「あぁ、わかった」


「んー。なんとなくだけど、あれかなってのは分かるよ」


矢真口猛は背伸びをしたりして頑張ってる。


「あ!やっと見えました。あれですね」


「うむ。あそこがわしの住み処だ」


奏は何も言わないがたぶん分かっているのだろう。

分かっていることを祈る。

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