73話 女子トーク
「でもさ」
リラがにやっと笑う。
「シリルさんにはびっくりしたよ! だって扉開けたら、お揃いみたいな服着て、あのシリルさんが立ってるんだもん!」
「そうだよね。びっくりするよね。店頭に立つかもしれないと思って、自分からあの服で来てくださったんだって」
「えぇ……そこまで考えてたの?」
「配慮がすごいよね」
「うん……」
リラは少し考えるように頷いたあと、またくすっと笑った。
「結構仲良くなっちゃったりしたんじゃない?」
私は少し考えた。
毎日送り迎えしてもらって、一緒に歩いて、一緒にお店に立って、長い時間を過ごした。
優しくて、よく気が付いて、一緒にいて安心できる人だった。
……たまに、どきっとしたこともあった。
「好きになっちゃった?」
「それはない! ないない!」
思わず即答すると、リラが吹き出した。
「あははっ。そんな全力で否定しなくても。シリルさんって、かなーりモテるんだよ?」
「それは知ってる」
街を歩けば目を引くし、あの人柄だ。人気があるのも分かる。
「でも……冒険者はないかなぁ」
「え? なんで?」
「危ない仕事をしてる人を待てる自信ないもん」
冒険者が危険な仕事だということは分かっている。シリルさんだって、少し前まで護衛の仕事で街を離れていた。
もし好きな人がそんな仕事をしていたら、毎回笑って送り出せるんだろうか。
……たぶん無理だ。
「そっか」
リラは静かに頷いた。
少し間が空いたと思ったら、またにやっと笑う。
「じゃあ、どんな人が理想なの? 石鹸以外で」
「えぇ……」
「いいから教えてよ!」
急すぎる。
私は腕を組んだ。
理想。
そんなこと、考えたことなかったな。
◇
そこから先は、完全に女子トークだった。
理想の人の話に、新しく従業員を探そうと思っている話。パン屋さんの新作や、街で見つけたかわいい雑貨の話まで、気づけば話題はどんどん変わっていった。
笑って、また別の話をして、また笑う。
気づけばパンケーキのお皿はすっかり空っぽだった。
やっぱり、リラと話してると楽しい。
私はすっかり温くなった紅茶を飲み干した。




