↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名前を忘れた私ですが、たぶん異世界で石鹸屋をはじめます。〜いい人しかいないんですが、罠ですか?〜  作者: まの月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
70/103

70話 新しい出会い?

「またせたな!」


 トムさんが料理を運んできてくれた。テーブルに置かれた煮込み料理から、湯気と一緒にお肉のいい香りが広がる。


「やりましたよ! シリルさん! 肉ですよ、肉!」

「ふふっ。本当ですね」


 この前、好きなパンを聞かれて「肉が入ってると嬉しいです」と言っていたのを思い出して、つい言ってしまった。


「シリルさん。改めまして、この度はほんとーに、ほんとーにお世話になりました! これだけじゃお礼にもならないかもですが、食べてください! ……と言っても、私も同じもの食べますが。あはは」

「はい。では、いただきますね」

「いただきます」


 手を合わせる。


 ちゃんと向かい合って食べるのは、これが初めて。


 ……


 所作、きれい。


 宿で見る冒険者さんたちの食べ方と全然違う。


 パンをちぎる仕草も、スプーンを持つ手も、なんだか見惚れてしまう。


「ノアさん」

「はい?」

「明日もお仕事ですか?」

「明日は臨時休業にしようと思ってます。被害に遭われた方に、直接お話をしに行く予定なんです。あと親方にも……あっ、ライネルさんにもお礼を言いに行かないと」


 シリルさんは少し考える。


「兄はしばらく用事が立て込んでるので、明日は難しいかもしれません」

「そっかぁ……。でも、ライネルさんには直接お礼を言いたいので、また都合のいい時に伺います」

「分かりました。ひとまず僕の方から、ノアさんからお礼があったと伝えておきます」

「お願いします」


 ライネルさんにも、本当に助けてもらった。


 ちゃんと自分の口からお礼は言いたい。


 煮込みをひと口食べる。


 ……おいしい。


 やっぱりトムさんの料理、大好き。


「ところで、ノアさん」

「ん?」

「明後日はお店、開けるんですよね。迎えに行きましょうか」

「えっ?」


 思わず声が出る。


 ……なじぇ?


「事件も解決しましたので、大丈夫だと思います!」

「そうですか? 少し心配ですね」


 思わず笑ってしまう。


「シリルさん。なんだか私の護衛というより、過保護になっちゃいましたね」


 シリルさんがきょとんとした。


 そのまま固まる。


 それから口元を手で覆い、少しだけ頬が赤くなった。


「……す、すいません。護衛の域を出てましたね」

「えっ。あっ……すいません」


 なんで私まで謝ってるんだろう。


 二人ともなんだか気まずくなってしまって、黙って食事を続ける。


 ……


 なんだこの空気。


 嫌じゃないけど。


 ちょっと恥ずかしい。


「……いや、でも」


 シリルさんが咳払いをひとつする。


「お店を手伝っていて思ったんですけど、ノアさん、従業員は雇わないんですか? アラボン以外で」

「あっ」


 危なかった。


 今まさに『アラボンがいます』って答えるところだった。


「そうなんですよ。今まで何とか一人でやってたんですが……今回シリルさんが手伝ってくださって、楽を覚えてしまいました。どうしてくれるんですか?」


 少しだけ膨れて見せる。


 シリルさんは一瞬目を丸くして――


「……ふっ」


 小さく吹き出した。


 笑った。


 シリルさんが。


 なんだかそれだけで嬉しくなる。


 シリルさんは少し考えるように口を開いた。


「もし従業員を探すなら、一人心当たりがあります。うちへ通いで来てくれているメイドの妹なんですが、よく働きますし、物覚えもいいですよ。たしか18歳くらいだったと思います」


 思わず姿勢を正す。


「以前、短期で働いてもらったこともあるので、人柄も分かっています。実はまた仕事を探していると連絡が来たんですが、うちはもう長く働いてくれる人が決まってしまっていて、お断りすることになったんです」


 そんな偶然があったんだ。


「ただ……少し言葉遣いが悪いというか、活発というか。そのあたりだけ、ちょっと心配ですけど」


 シリルさんは少し困ったように笑った。


「一度、会ってみませんか?」

「ぜひ、会ってみたいです」

「分かりました。本人にも聞いてみますね」


 どんな子なんだろう。


 言葉遣いが悪くて、活発。


 ガキ大将系女子が思い浮かんでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。