↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名前を忘れた私ですが、たぶん異世界で石鹸屋をはじめます。〜いい人しかいないんですが、罠ですか?〜  作者: まの月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/109

100話 大事件

 心臓が止まりそうになった。


 シリルさんは、しばらく私の手を包んだまま動かなかった。それからようやく、ゆっくり顔を上げる。


「あぁ……俺、ここで死んでもいいくらい幸せかも」


「え、ぇえ!? だめですシリルさん!」


 思わず身を乗り出すと、シリルさんはくすっと笑った。


「ははっ」

「ちゃんと生きてください!」

「はい」


 少しだけ目を細める。


「仰せのままに」


 その笑顔に、また胸がどきりとした。


 だめだ。


 今日だけで何回心臓が止まりそうになればいいんだろう。


 しばらくして、シリルさんが辺りを見回した。


「遅くなっちゃいましたね。ホテル、戻りますか?」

「えっと、そうですね」

「俺はずっとここでこうしててもいいですけど」


「……」


 意味を理解した瞬間、カァッと顔が熱くなった。


 またそんなこと言う!


「か、帰ります!」


 慌てて立ち上がろうとした、その瞬間。


「……!」


 あ。


 やば。


 この感覚。


「シリルさん」

「はい」

「大事件です……」


 一瞬でシリルさんの表情が引き締まった。


「どうしました」

「足が……しびれて立てません……」


 数秒。


 しん、とした空気が流れる。


 シリルさんは私の足元を見て、それから私の顔を見た。


 次の瞬間、堪えきれなかったみたいに表情が崩れる。


「……かわい……」

「へ?」


 シリルさんが、はっと目を見開いた。


「……」


 そのまま片手で口元を覆う。


 耳まで真っ赤になっていた。


「ノアさん……俺をいったいどうしたいんですか」

「ぇえ!?」


 そんなつもりじゃないのに!


 むしろこっちが聞きたい。


 シリルさんは小さく咳払いをひとつすると、さっきのことなんてなかったみたいな顔で私へ手を差し出した。


「俺につかまって、ゆっくり足を伸ばしましょうか」

「……はい」


 差し出された手を、ぎゅっと握る。


 さっきまであんなに恥ずかしかったはずなのに、今はその手に触れることが、少しだけ嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。