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14. 約束

 龍宮城で数日過ごした僕は元の体に戻ることができた。


 しかし、『もうここへは来れない』と思うとなごりおしい。


「やっぱりこのままここにいては……」


 そう言う僕を止めるかのように、乙姫は首を横に振った。


「あなたがここにいる理由はもう無いはずです。ここにいる時間が長くなれば、向こうで暮らせなくなりますよ」


 そう言われることも分かっていた。


 ウミガメも背中に乗るのを待っている。


「浦島さんは人間の世界でやらないといけないことがあるのじゃ。こうしてる間にも陸の時間はどんどん進んでいる。さぁ、早く背中に乗るんじゃ」


 と言いながら、ウミガメはあきれた顔をしている。きっと僕を見て『人間の考えは理解できん』と思っているに違いない。


「分かりました。乙姫さん、また陸で会いましょう」


「浦島さんとの約束が果たされるのをいつまでも待っています。人間の世界をいつも亀じいが覗いてますよ」


 乙姫は最後に笑顔を見せてくれた。


 僕はウミガメの背中に乗って、龍宮城をあとにした。




 ウミガメは海の中で僕に念を押した。


「陸へ戻ったら、『乙姫様が悪者』という誤解を解くのじゃよ!」


「分かってるよ。僕も乙姫さんのことは悪く言われたくないし、これからは『思いやり』を意識して生きていくつもりです。だからお願い、約束を果たせたその時には、もう一度玉手箱を開けさせてほしい」


「浦島さん、あんたにはもう二度と玉手箱を触らせられん」


「冗談です。もうお爺さんになるのはこりごりだ」


「まったく、人間の考えることは理解できんわい」




 それから数年後、龍宮城でのことを周りの人に話して僕の名前が広まりはしたけど、結局『乙姫さんの誤解を解く』という約束は果たすことができなかった。


 噂話にしては話が複雑過ぎるのかもしれない。


 そうだ、小説にすれば広めることができるかもしれない。


 これを読んでもらえば、『乙姫様が悪者という誤解を解く』というウミガメとの約束も果たされるだろう。

 今もどこかの波打ち際で、甲羅に傷のあるウミガメが人間を観察しているという。

 もし見かけてもそっとしておいて。そして、絶対にいじめたりはしないでほしい。

 ウミガメはきっと期待しているだろう、龍宮城の真実が聞こえてくること、そして『平和な世界』がくることを。

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