↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された元パティシエ令嬢、追放先で【デパート】を開業!守銭奴商人と規格外護衛を雇ったら、三カ国の軍と胃袋を支配してました  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/72

ポポロ村防衛戦! 雷神の月兎と、場外ホームランを打つ『最強のフランスパン』。

ポポロ村防衛戦! 雷神の月兎と、場外ホームランを打つ『最強のフランスパン』。

 ルチアナ様が試食販売員として謎の覚醒を遂げ、デパートがかつてないほどの売上を記録していた日の午後。

 のどかなポポロ村に、突如としてけたたましい魔導サイレンの音が鳴り響いた。

「緊急事態です! ポポロ山の向こうから、はぐれ飛竜ワイバーンの群れがこちらへ向かってきています!」

 自警団のリーダーであるマンミアさん(ケンタウロス種)が、蹄の音を高く鳴らしながら広場へ駆け込んできた。

 飛竜ワイバーンといえば、通常は騎士団が束になってワイバーン専用の対空魔砲で迎撃するような、厄介極まりない空の魔獣である。それが群れで襲来したとなれば、普通の辺境の村なら一瞬で火の海だ。

「ワイバーンやと!? アカン、あいつら空から火ぃ吹いてくるで! デパートの屋上に干してある高級布団が燃えたら大損害や!」

 ニャングルが頭を抱えて叫ぶ。

「落ち着いてください! 自警団の魔導対空砲と、防衛フィールドを展開すれば――」

 私が冷静に指示を出そうとした、その時だった。

「皆さん、ご安心ください!」

 デパートの前に、颯爽と駆けつけてきた人影があった。

 ラフなパーカーにショートパンツ、そして足元にはタローマン特注の『鋼鉄先芯入り安全靴』を履いた新村長、キャルルさんである。

「この村は、新村長であるこのキャルル・ムーンハートが絶対に守り抜いてみせます! ……そしてっ!」

 キャルルさんは、チラリとデパートのテラス席を見上げた。

 そこには、相変わらず無気力な三白眼で、焼きたての『カッチカチのフランスパン』を片手に空を眺めているジークの姿があった。

「(私の村長としての初陣、そして村を守る凛々しい姿を、愛しのジークさんにアピールする絶好のチャンス……っ! ここで私が無双すれば、ジークさんは私の虜間違いなしですっ♡)」

 鼻息を荒くし、ピンと兎耳を立てたキャルルさんは、クラウチングスタートの姿勢を取った。

「行きますっ!」

 ドンッ!!

 大気が爆発したかのような轟音。

 キャルルさんの姿が、瞬時に私たちの視界から掻き消えた。

 月兎族の並外れた脚力。彼女の100メートル走のタイムは5秒台。時速にして約72キロという、車並みのスピードで一気にポポロ村の外縁部へと跳躍したのだ。

「ギャァァァァァッ!」

 上空から村へ向かって降下してきていたワイバーンの群れが、突然現れたウサギの少女に気づき、口から灼熱の炎を吐き出そうとする。

「遅いですっ!」

 キャルルさんは空中で見えない足場(空気)を蹴り、変幻自在に軌道を変えながら、ワイバーンの死角へと回り込んだ。

「月影流・乱れ鐘打ちっ!」

 ダダダダダダダンッ!!

 空中で放たれた連続回し蹴りが、特注の安全靴の硬度と相まって、ワイバーンたちの強靭な鱗と骨を容易く粉砕していく。

 悲鳴を上げる間もなく、数匹のワイバーンが空からボトボトと墜落していった。

「す、すごい……! 空を飛ぶ魔獣を、生身の蹴りだけで……!」

「なんちゅうバネや……あれが月兎族の最上位種の力か」

 私とニャングルは、テラス席からポカンと口を開けてその光景を見上げていた。

「グルァァァァァァッ!!」

 仲間を倒され激昂したワイバーンのリーダー格(一回り大きい個体)が、キャルルさんに向かって一直線に急降下し、極太の雷撃を放ってきた。

 空中にいるキャルルさんには、回避する場所がない。

「危ないっ!」

 私が叫んだ瞬間。

「舐めないでください。私、ジークさんの前でカッコ悪いところは見せられませんからっ!」

 キャルルさんは空中で身を捻り、安全靴の踵をカチリと鳴らした。

 瞬間、靴底に仕込まれた『雷竜石』のリミッターが解除され、彼女の全身を紫電の雷光と極大の闘気が包み込む。

「はぁぁぁぁっ!! 超電光流星脚(スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク)ぉぉぉっ!!」

 空中を一回転したキャルルさんが、音速(マッハ1)を超えるスピードで、雷撃を纏った飛び蹴りを放った。

 ――ドゴォォォォォォォォォォォォンッ!!!

 着弾の瞬間、約一千メガジュール(打撃質量換算277トン)という、巨大戦艦の主砲すら凌駕する破壊エネルギーが炸裂した。

 ワイバーンのリーダーは、断末魔の悲鳴を上げる間もなく、雷光と共に文字通り『蒸発』し、空には見事な丸い爆発の雲だけが残された。

「……あ、あはは。もう笑うしかないわね」

 私は引きつった笑いを浮かべた。あの可愛らしいウサギの女の子が、まさか戦術兵器クラスの破壊力を持っているとは。これなら村の防衛は全く問題ないだろう。

 ――しかし。

 キャルルさんがリーダーを粉砕した爆発の余波に弾き飛ばされた一匹のワイバーンが、パニック状態に陥り、狂ったように一直線に村の中心……すなわち『デパート・コトネ』のテラス席へと向かって急降下してきていたのだ。

「ギャァァァァァァッ!」

「ひぃぃぃっ!? こっち来よったで!」

「コトネはん、伏せて!」

 マンミアさんがクロスボウを構えるが、パニック状態の魔獣のスピードが速すぎる。

 ワイバーンの鋭い爪が、テラス席の屋根を切り裂こうとした、その時。

「……メシ食ってんのに、ほこりを立てるな」

 いつの間にか、私の前にスッと立ち塞がった広い背中があった。

 ジークだ。

 彼は右手に、食べかけの『カッチカチのフランスパン』をだらりと下げていた。

「ジークさん!」

 ジークは、飛来するワイバーンに向けて、無気力な三白眼をわずかに細めた。

 そして、右手に持ったフランスパンに、目も眩むような『黄金の闘気』を一気に流し込んだのだ。

 ビキィィィィンッ!!

 ただのパンが、闘気コーティングによってオリハルコンすら超える絶対硬度の『鈍器』へと変貌する。

「プレイボールだ」

 ジークは、フランスパンを両手で野球のバットのように構え、腰を深く落とした。

 そして、襲いかかってきたワイバーンの顎を正確に見切り――。

「カッ飛ばすぜ」

 フルスイング。

 バギィィィィィィィィィィンッ!!!!

 打撃音とは思えない、まるで隕石が衝突したかのような轟音がテラスに響き渡った。

 黄金のフランスパンによって顎を完璧に打ち抜かれたワイバーンは、「ゲボァッ!?」という奇妙な悲鳴を上げながら、打球角度45度の完璧な放物線を描いて、ポポロ山の遥か彼方の空へと消えていった。

 見事な、完璧すぎる『場外ホームラン』である。

「「「…………」」」

 テラス席に、奇妙な静寂が落ちた。

「ふぅ。まぁ、こんなもんだろ」

 ジークは闘気を解除すると、武器として使ったばかりのフランスパンの先端を、無造作にムシャッと噛みちぎった。

「……うん。ちょっとワイバーンの鱗の風味が移っちまったが、香ばしくて悪くねぇな」

「だから! 食べ物で魔獣を討伐して、そのまま食べないでくださいっていつも言ってるじゃないですか!!」

 私は全力でツッコミを入れた。

 空飛ぶ魚で手裏剣を作ったり、冷凍本マグロで一刀両断したり、今度はフランスパンでホームランである。この人の戦闘スタイル(物理ギャグ)は、いつ見てもツッコミが追いつかない。

「ハァ……ハァ……っ! ジ、ジークさんっ!」

 そこへ、上空のワイバーンを殲滅し終えたキャルルさんが、息を切らしてテラス席へと飛び込んできた。

 彼女の視線の先には、片手でフランスパンを齧りながら、無傷で私を守り抜いたジークの姿がある。

「ジ、ジークさん……今、フランスパンで、あの巨大なワイバーンを……?」

「ん? あぁ、ちょっと素振りをしただけだ」

「す、素振りで、ホームラン……っ!」

 キャルルさんの兎耳が、ブルブルブルッ!と激しく震えた。

 彼女の脳内では、ジークのその気怠げな態度と圧倒的な力が、百万倍の美化フィルターを通して再生されているに違いない。

(あぁっ……! なんて野性的で、頼もしくて、規格外の殿方なの……っ! パン一本で竜をぶっ飛ばすなんて、私の流星脚よりもずっと、ずっと強い……っ♡)

 キャルルさんの両手で顔を覆い、モジモジと身をよじる。

 そして、顔は耳の先まで真っ赤に茹で上がり。

「あぁんっ♡ もう、私、ジークさんのフランスパンになりたぁぁいっ♡ ……ガクッ」

 ブシュゥゥゥゥッ!!

 本日二度目となる、盛大な鼻血の間欠泉を噴出させ、キャルルさんはまたしても白目を剥いてテラスの床にぶっ倒れた。

「ちょっ!? 村長ぉぉぉぉっ!! またオーバーヒートして気絶してるじゃないですか!」

「ワイバーンの素材はワイが回収してくるで! 飛竜の鱗と牙、これでまた金貨がガッポリや!」

「あーあ、社長。パンの破片が落ちちまったぞ」

 気絶するヤンデレ村長、算盤を弾いて素材回収に走る守銭奴、そして自分のパンの心配しかしていない最強の護衛。

 

「……はぁ。本当に、ツッコミの過労死で倒れそうだわ」

 私は深いため息をつきながら、倒れた村長に毛布をかけてあげた。

 平和なはずのポポロ村の防衛戦は、こうしてフランスパンの素振りと、恋する月兎の鼻血と共に、無事に(?)幕を閉じたのであった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第6話、ポポロ村防衛戦(プロット補完回)でした!

新村長キャルルの『超電光流星脚(打撃質量277トン)』によるド派手なワイバーン殲滅! 可愛らしい見た目からの規格外の武闘派っぷりです。

そして、撃ち漏らした一匹に対する、ジークの『カッチカチのフランスパン・ホームラン』!

「プレイボールだ」「カッ飛ばすぜ」からの、そのままパンをモシャリ(笑)。相変わらずの物理ギャグ無双が炸裂しました。

ジークの圧倒的なワイルドさに、キャルルさんは本日二度目の鼻血&気絶オーバーヒート。ヤンデレ気質な彼女の愛は留まるところを知りません!

次回、第7話!(プロット補完回その4)

舞台は再びルチアナ様へ。

ニャングルの容赦ない資産売却と、地道なアルバイトの末、駄女神の心境に変化が……?

「私、自分の力でお金を返してるんだ……」

コトネの作った節約料理を食べながら涙するルチアナ様。読者の皆様も「おっ、更生したか?」と油断する(?)感動の節約生活編をお楽しみに!

【読者の皆様へのお願い】

「フランスパン最強伝説w」「キャルルすぐ鼻血出すww」「コトネのツッコミお疲れ様!」と思っていただけましたら、

ぜひ画面下部の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にタップして、場外ホームラン(応援)をかっ飛ばしてください!

皆様の評価ポイントが、作者の何よりの執筆エネルギーになります!

【ブックマーク登録】も、引き続きよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。